リュドヴィックは基本的に傍若無人だ。
人の都合なんて一切気にしていない。
自分が喋りたい気分のときは部屋に突撃して来るし、どう断ってもセッションを強要し茶を飲みに来いとしつこい。
押しに弱い日本人。結局根負けし、いつも気が済むまで付き合ってやっていた。
そんなリュドヴィックが、物凄くしおらしく部屋を訪ねてくることが時々あった。
コンコンっと小さく部屋のドアを叩く。
「2ユーロ貸して。」
「.....。」
友人間でお金の貸し借りは厳禁だ。しかし2ユーロ。いったい何を買うつもりなんだ。バゲットか?というより2ユーロすらない状況で何を食べて生きているんだ?
一瞬にしていろいろな考えを巡らせたが、ノーと言えないジャパニーズなわたし。まぁ、2ユーロならいいか、と貸してやった。
しずしずと受け取り、必ず返すからと言うリュドヴィック。もちろん返ってくるなんて思っていない。
思っていなかったが、後日2ユーロはキチンと返ってきた。
その後も時折リュドヴィックはしおらしくやって来てコンコンっと小さくドアを叩き、金を借りに来た。
だいたい小銭を借りていくのだが、小銭を持ってないと言うと、
「じゃあ5か10ユーロでいいよ!」
なんて言ってくる。コノヤロー(1ユーロ100円ちょっと。5ユーロからはお札になる)
毎回、今度こそは返ってこないかもな、と思って貸していたが、数週間後になろうと数カ月後になろうと、必ずお金は返ってきた。
パリには電車や駅のホームで「お金を恵んでください」というスピーチをして回っている人がたくさんいる。断っている人がもちろん多いが、アフリカンな人たちは渡してあげる人が多い印象がある。
お金のことであろうと、助け合うのが彼らの価値観の中では普通のことなのかもしれない。
とはいえ、やっぱり友人間でのお金のやり取りはご法度だ。貸して返ってくるなんて思わない方がいい。
リュドヴィックのおかげで自分が押しに弱いと知っているわたし。もしもの時に毅然とした態度を取れるのか、今からちょっと心配している...
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