東京都多摩東部の自宅近くの仏教寺院の崩れかけた土塁に、「アカンサス」(Acanthus)が2m前後の茎を垂直に伸ばしていました。(下写真)
成長途上の「アカンサス」
茎丈の下方から上方にかけて付く薄紫色の萼と白い花穂は、どこから観ても西洋の教会に相応しい容貌のように思える植物なのですが・・・日本では少々不釣り合いな仏教寺院で見かける事が多いような気がするのは如何してなのでしょうか。(下写真)
薄紫の萼と白い花穂を付けた「アカンサス」
アカンサスの国際植物分類名は、Acanthaceae科、学名:Acanthus L.、英名:Bear's Breechとして通用していますが・・・日本の植物学会では「キツネノゴマ科・ハアザミ属」、和名:「葉薊」(ハアザミ)と翻訳されていました。(下写真)
和名:「ハアザミ」(葉薊)と呼ばれるようになったのは、葉の形状がキク科アザミ属(Cirsuim)の「アザミ」(薊)の葉に似ていたからだそうですが、両者は全く異なる別種の植物でした。
「アカンサス」の日本名は「ハアザミ」(葉薊)
僕の連れ合いは、古代ギリシア文化の装飾をデザイン化したウィリアム・モリスの西洋アザミのモチーフが大好きで、我家の各部屋のカーテン柄として使っています。(下写真)
ウィリアム・モリスのデザインによる西洋アザミ
「アカンサス」の白い花弁を陽射しから守るように被さっている紫色の萼と白花の付け根辺りに、ギリシャ語でアカンサスと呼ばれる緑色の鋭い棘状の苞葉が存在しますが、此れがアカンサスの植物名の由来になっているようですね。(下写真)
薄紫の萼と白い花穂を付けた「アカンサス」
上掲の花写真は、神奈川県湘南在住時代に鎌倉の宝戒寺で撮影した「アカンサス」ですが、濃紫色の萼と白花の付け根の辺りに見える緑色の尖った棘(Acanthus)を識別いただけるでしょうか?
個人的好みとしては、些か判り難い棘を意味する「Acanthus」の地中海沿岸地域の呼称よりも、葉の特徴から「ハアザミ」(葉薊)とした江戸時代の和名の方に肩入れしたくなります。