千両・万両・十両・一両の赤実の付いた植物を正月の縁起物として飾る風習があるらしいことは、前々から知っていましたが・・・
約30年に亘る海外在住から日本へ本帰国した身なので、日本の正月期間中に縁起物の赤実を目にしたことがありませんでした。
ところが今年の正月三が日の散歩道で、期せずして「千両」・「万両」・「十両」との出逢いが実現しました!!
千両の赤実 2022年正月 東京都下
正月の飾りで見掛けたことのある「千両」(仙蓼)は、鋸歯のある対生葉の上方に赤実が付いているので直ぐに察しが付きました。(上写真)
赤実が珊瑚色に似ていることから、「草珊瑚」の別名で呼ばれることもあるそうですね。
千両の黄実 2022年正月 東京都下
「千両」の近くに、同じように葉の上に黄実を付けた株がありました。(上写真)
老妻によると、これもまた千両らしいのですが・・・葉の上に付いた赤実と黄実は、小鳥もきっと食べ易いでしょうね。
千両の植物分類名=科:Sarcandra glabra、属:Sarcandra、学名:Sarcandra glabra1930,
万両の赤実 2022年正月 東京都下
「千両」の株から離れた所に、対生する鋸歯葉の下に赤実を付けてぶら下がる「万両」(別名:花橘)がありました。(上写真)
「万両」の名称の由来は、「千両」よりも多くの実が付いていて重いことから、格上の「万両」の名前が付けられたとか。
「万両」の植物分類(下欄)を検索すると、「万両」と「千両」は全く別種の植物でした。
万両の植物分類名
科:Primulaceae、属:Ardisia学名:Ardisia crenata 
十両の赤実 2022年正月 東京都下
低い茎丈に狭楕円形の鋸歯葉を付けた葉陰に美しい赤実を付けた「十両」(別名:山橘)がありました。
葉上に赤実を付ける「千両」や「万両」と違って、低茎の葉下に付く赤実なので、地上歩行の習性がある小鳥が好む餌だそうです。
落語の「寿限無」に出てくる縁起名の「やぶらこうじのぶらこうじ」は、「十両」の別名とされる「藪柑子」(ヤブコウジ)のことらしいですね。
植分類名を比較すると、「十両」と「万両」は、科名と属名が同じ遠い縁戚の植物であることが分かりました。
十両(藪柑子)の植物分類名
科:Primulaceae、属:Ardisia、学名:Ardisia japonica 1866
一両の赤実 WEBより拝借
近くに「一両」(別名:蟻通し)があるのではないかと探し求めたのですが・・・残念ながら見つかりませんでした。
「一両」の名称の由来は、「千両」、「万両」、「十両」と較べて実の数が2個前後と極少であることから来ているようですが、別名の「蟻通し」の由来は、葉脇から葉よりも長い多数の鋭い棘が出ているために、「蟻をも刺し貫く」とか、「通り抜けられるのは蟻だけ」から来ているとの2説が紹介されていました。
因みにお隣の中国での漢字表記名は「虎刺」です。日本の「蟻」とは真逆の「虎」とは! 何事も巨大さを好むお国柄らしいですね。
僕の育った西日本を貫く中国山脈の盆地の正月では、「千両」、「万両」、「十両」、「一両」を並べて揃えて縁起良しとする風習があったことを・・・朧気ながらも思い出しました。
一両の植物分類名
科:Rubiaceae、属:Damnacanthus、学名:Damnacanthus indicus