二日前の拙ブログで、秋の七草の一つ「女郎花」(オミナエシ)の花を投稿しましましたが、本日の花もまた秋の七草の一つとして知られる「萩」(ハギ)の花です。
我家の近くを走る西武鉄道の沿線に、直立状に伸びながら草丈3m前後の茂みを作っていました。(下写真)
山萩の花 撮影:2022年9月7日
僕の撮った上掲写真は、垂れることなく、空に向かって伸びているので「山萩」(ヤマハギ)だろうと思うのですが・・・
公園や個人庭園で人気が高いのは、枝が垂れ下がって見映えのする「宮城野萩」や「飛鳥野萩」(下写真)のようですね。
「飛鳥野萩」 撮影:2022年9月8日
「宮城野萩」は未だ目にしたことがないのですが、「飛鳥野萩」は昨日の外出先で見掛けました。(上下写真)
「飛鳥野萩」は、茎高が低くて横向きに伸びて垂れる個人庭園向きの植物でした。
「飛鳥野萩」 撮影:2022年9月8日
西武鉄道沿線に咲いていた蝶々に似た「山萩」の花の開花期間は随分と長いらしいのですが・・・
いつも大きな茂みのなかに小花が埋没しているために、いつの間にか咲いて、知らぬ間に姿を消してしまう、そんな感じすらする目立たない花のように思います。
古の日本人は、そんな「山萩の花」の散る姿を「花が零れる」と表現したらしいですね。美しい日本語だと思います。
山萩の花 撮影:2022年9月7日
奈良時代に編纂された萬葉集には、「ハギの花」を詠み込んだ歌が141首も収録されているそうです。
萬葉歌人の大伴家持は僕の好きな歌人の一人ですが、その中でも聖武天皇を敬って詠んだ長歌「賀陸奥国出金詔書歌」(巻十八)、そして聖武天皇の離宮で咲いているであろう「秋萩」に思いを巡らして詠んだ下欄の萬葉歌(巻8-1605)が記憶に残っています。
山萩の花 撮影:2022年9月7日
萬葉歌(巻8-1605) 詠人:大伴家持
原文:高圓之 野邊乃秋芽子 此日之 暁露尓 開兼可聞 詠人:大伴家持
読み:高円の野辺の秋萩このころの暁露に咲きにけむかも
意味:高円山の野辺の秋萩はここ数日の露を受けて咲いたであろうか。
咲き始めの山萩の花 撮影:2022年9月7日
上掲の大伴家持の萬葉歌の原文では、「秋萩」のことを万葉仮名の「秋芽子」で表現されていますが、植物学者の牧野富太郎氏によると、日本漢字の「萩」は、中国からの輸入漢字ではなく、日本で作られた漢字(草冠+秋)だそうです。
因みに、古代中国の「萩」とは、日本の「萩」とは全く別物の「蒿」(学名:Artemisia capillaris)と呼ばれる「河原蓬」(カワラヨモギ)の類を意味するそうです。
日本語の「ハギ」の誕生の由来としては、古株から新芽が次々に芽吹くことから「生え芽」(はえぎ)と呼ばれていたのが転訛して「ハギ」となったする説があるようですね。
参考:ヤマハギの植物分類名
科:Fabaceae マメ科
亜科:Faboideae マメ亜科
族:Desmodieae
属:Lespedeza ハギ
種:L.bicolor
学名:Lespedeza bicolor Turcz.(1840)
和名: ヤマハギ (山萩)
別名:エゾヤマハギ
英名:Bush clover