都下の西武鉄道沿線の雑草の生い茂るスペースに、直径1cm程度の紅色の小花を茎頂に集散花序に付けた野花が群生していました。(下写真)

 

スマホの花アプリで花名を検索すると、花から受けるイメージとは違って、「虫取り撫子」、「蠅取り撫子」、「虫取り花」、正答確率75%と表示されました。

 

虫取り撫子 撮影:今日

 

南欧州地方では、「虫取り撫子」の茎の粘着部に絡まれてのたうち回る虫の姿が、ギリシャ神話の酒好きの神の「シレーノス」が酔っ払ってバタバタしている姿と似ていることから、「シレーネ」(Silene)の花名で呼ばれているそうです。

 

虫取り撫子  WEBより拝借

 

枝分かれした茎頂に咲く紅小花の花弁は5枚、写真では不明瞭ですが3本の雌蕊と10本の雄蕊があります。

 

花弁と同色の咢は、ストローのような口を持つ昆虫が容易に受粉してくれるように筒状になっていました。


虫取り撫子 撮影:今日


とは言っても、「虫取り撫子」は、「ウツボカズラ」のように捕まえた虫を自分の消化液で溶かして栄養にする食中植物とは違うそうです。(下写真)

 

ウツボカズラ 撮影:2013年9月

 

「虫取り撫子」は、受粉を邪魔する蟻(アリ)やアブラ虫が地上から這いあがって来て花弁や密を食べてしまうのを防ぐために、咢下の茎の上部分にバリケード役目を果たす虫取り用のベタベタした粘膜を持っていますが・・・

 

「ウツボカズラ」のように飛来する虫や這い上がって来る虫を捕食して溶かして食べる能力は、全く持ち合わせていないそうです。

 

虫取り撫子 撮影:今日


老妻によると、随分昔に山梨県の丘陵地帯を訪れた時、「虫取り撫子」の花や葉を水で擦り合わせると泡仕立てシャンプーのように泡立つことから、「セッケンバナ」(石鹸花)と呼ばれることがあるとの説明を聴いたことがあるそうです。

 

ギリシャ神話のシレーノスが発泡酒の依存症(アル中)になって泡だらけになって酔っぱらっていたことから、南欧州では「シレーネ」(Silene)の花名で呼ばれるようになった・・・という神話と直結する話ではありませんが・・・

 

日本でも「泡立つから“石鹸花”」と呼ぶ地域もあったことを知って、その地域名を調べてみたのですが・・・

 

出て来たのは、石鹸を彫刻して造る石鹸花(ソープフラワー)の情報ばかりでありました。

 

 

参考:虫取り撫子の植物分類名

科:Caryophyllaceae ナデシコ科

属:Silene シレーネ属

種:S. armeria

学名:Silene armeria

英名:Sweet William Catchfly