箱根湿生花園で水生植物の「水葵」(ミズアオイ)を初めて観ました。
「水葵」を手元のスマホでググると・・・古代日本では、「ナギ」(菜葱)、「コナギ」(小菜葱)、「ミズナギ」(水菜葱)と呼ばれていたようですが・・・江戸時代になってから、葉の形状が徳川の「葵」の紋章に似ているとして、「水葵」(ミズアオイ)と呼ばれるようになったする記述がありましたが・・・すみません、僕の目には、徳川の葵紋よりも細長い葉に見えるのですが・・・
自宅に戻って更に調べると・・・「ナギ」(菜葱)、「コナギ」(小菜葱)、「ミズナギ」(水菜葱)と呼ばれていた古の時代とは、1360年-1260年前の飛鳥時代から奈良時代にかけての「万葉集の時代」でした。そして、万葉集(4500首)の中に、僅かに四句だけですが、「水菜葱」、「菜葱」、「小菜葱」の水生植物を詠んだ句がある事を知りました。
東歌 巻14-3576・・・(女性を弄ぶ男の勝手な心情)
苗代の 子水葱が花を衣に摺り馴るるまにまに何かかなしけ
苗代に生えている水葱の花を、着物に摺りつけ、着馴れるにつれて どうしてこうも可愛いくてならないのであろうか
撮影:箱根湿生花園
巻14-3415 作者未詳・・・(女性への恋心)
上毛野 伊香保の沼に植子葱 かく恋ひむとや種求めけむ
上毛の伊香保の沼に、私が植えた水葱なのに、その美しさに心を悩ましている。こんなにも心をいためることになろうとは
撮影:箱根湿生花園
大伴宿禰駿河麿 巻三(四〇七)・・・(求愛の歌)
春霞 春日の里の植子葱 苗なりといひし枝はさしにけむ
春日の里に植えた水葱はまだ苗だということであったが、今は枝ものびて食べられるようになったでしょうね
撮影:箱根湿生花園
詠み人:長忌寸意吉麻呂 巻16-3829
醤酢に 蒜樢き合とて鯛願ふ 我にな見えぞ水葱の羹
意味:ひしおすにノビルを和えた物と鯛を食べたい私に、水葱の吸い物なんか見せつけてくれるな!
「コナギ」(小菜葱)の花序は、葉よりも低い位置に付き、花の数も少ない。「ナギ」(菜葱)の花序は、葉よりも高い位置に付いて、花の数も多いとする説がありました。そうだとすれば・・・箱根湿生花園で僕が撮った写真は、期せずして「水葱」と「小菜葱」だったことになるのですが・・・どうでしょうか?
参考:ミズアオイの植物分類名
科名:ミズアオイ科 Pontederiaceae
属名:ミズアオイ属 Monochoria
種:ミズアオイ M. korsakowii |
学名:Pontederia cordata L.
和名:ミズバアオイ
英名:Pontederia、Pontederia cordata、Pickerel weed
中国名:梭鱼草
産地:北米東部からカリブ海地域、池沼の浅瀬
性状:耐寒性多年草 (日本ミズバアオイは一年草)
草丈:60~100cm、花穂長:15cm 開花期:6~10月
花色:紫色の一日花