ブログに投稿する植物の写真の在庫が無くなったので、カメラ片手に隣町へと新規開拓に出かけたのですが、目ぼしい植物も見当たらないので戻ろうとすると、交配品種らしき『カンナ』が目に留まりました。(下写真)

 

 『カンナ』の漢字表記である『蘭蕉』は、明治時代に刊行された『日本類語大辞典』によれば、中国渡来の漢語ではなく、日本漢字の当て字のようです。 江戸時代初期に、オランダから『カンナ』が日本に渡来した当時の呼称と漢字名は、『ダンドク』(壇特)だったと記録されているそうです。 

 

散歩の途中で見たカンナ

 

  タイ国のバンコクに在住していた時に、マンションの屋上庭園の管理をする庭師さんから聴いた下記の内容をブログ記事として投稿したことを思い出しました。

 

  『カンナ』の彩りがインドらしい“かんばせ”だったので、原産地はインドと思ったのですが、庭師さん曰く、タイを含む熱帯アジアとのことでした。 そして、『カンナ』の花のように見えるのは、雄しべが変化したものであって、本来の花は小さくて目立たない・・・と言う事を、その時に教わりました。

 

散歩の途中で見たカンナ

 

  『カンナの花』のタイ語名が 『トン・プッタラクサー』 ต้นพุทธรักษา であることも、その時に教わりました。

タイ語花名の“ต้นพุทธรักษา”は、『仏陀を護る花』を意味する合成名刺です。ここで言う仏陀とは、釈迦牟尼のことです。 

 

  幾多の如来仏や菩薩像などを信仰する日本の大乗仏教と違って、タイの上座部仏教で祀られる仏陀(如来仏)の90%以上は、釈迦如来仏(釈迦牟尼)だと言っても過言ではありません。

  

 散歩の途中で見たカンナ

 

  その頃に読んでいた『カンナと仏陀に纏わる伝説』を思い出しました。昔のブログで書いたことがありますので、今回は簡略化してご紹介したいと思います。


『釈迦牟尼の名声に嫉妬した悪魔がいました』
『悪魔は、崖下で修行をしていた仏陀の頭上に岩石を落としました』
『岩石は仏陀の頭上をかすめて、膝元近くで砕けて飛散しました』
『岩石の破片が仏陀の足指に当たって血が流れました』
『仏陀の血が崖下の大地に染み込み、赤いカンナが開花しました』 

 

  その当時の僕は、足指を怪我しただけで赤一色のカンナを想像することができず、黄色に赤い斑点のカンナを脳裏に浮かべたことを覚えています。

 

タイ国ナコンパトム仏教公園のカンナ

 

  山口県宇部市の自宅を米軍のB29爆撃機の焼夷弾攻撃で焼け出された幼児の僕は、母親の実家の広島県佐伯郡に疎開していた時に原爆投下(ピカドン)に遭遇しました。衝撃で落下した天井板や欄間、吹き飛んだ襖の下敷きになった幼児の僕は、一人で泣き喚いていたそうです。

 

  中心地から離れていたので被爆は避けられたのですが、佐伯郡と広島市の間を流れる太田川の東側に出掛けていて犠牲になった親族や行方不明になって10年後に育児園で見つかった僕と同年齢の従妹もいました。

 

  広島の原爆を題材にした浄瑠璃に 『広島に咲いた希望の花・カンナ』(義太夫奏者・野澤松也師匠) という作品があります。原爆が投下された広島の地には、今後100年に亘って草木も生えないといわれたそうですが、3ケ月後に『カンナの花』が咲いたと云う事実を書きあげた作品です。 広島では、現在も世界平和を願ってカンナを植えているそうです。 

 

  タイ国から帰国して2年目となる来年こそ、広島の爆心地を訪れて祈りを捧たいと思っています。  

 

 

参考:カンナの植物生態分類
科名:カンナ科 Cannaceae

属名:カンナ属  CANNA 

学名:Canna  indeica hybrid

英名:Canna、Canna lily

和名:カンナ(蘭蕉)

別名:ハナカンナ(花カンナ)、ダンドク、カンナ・リリー(Canna lily) 

古名:ダンドク(壇特) 
原産地: 中南米、熱帯アジア 
草丈:50~250cm 開花期:7月中旬~10月上旬 花径:10cm 葉色:緑・銅色・斑入り  花色:赤 ・白 ・桃 ・黄 ・薄黄・橙・黄色と赤色の斑模様模様・複色