2019年7月15日 曇天

  13日と14日、所要のために東京に出掛けていました。 14日は個人的雑用でしたが、13日は、1990年から1992年にかけてバンコクでタイ語の家庭教師をして貰ったMs.Sさんとの27年ぶりの顔合わせでした。

 

  1992年末頃以降、彼女は関東の某国立大の後期博士課程を経えた後に、中部地方の某国立大学に奉職して現在に至っているのですが・・・今回、東京で開催された学界の発表者として上京された機会を利用して、27年ぶりの旧交をあたためることが出来ました。 

 

 

  本日の植物は、東京に出かけた時に見かけた『コエビソウ』(小海老草)です。 友人から『コエビソウ』の花期は10月~11月頃だと教わっていたのですが・・・枝先に連なる朱色の苞が重なる独特の姿は、どう見ても『コエビソウ』(小海老草)に見えます。 どうも花期の長い植物のようですね。(上下写真)


 

  花茎の先端から唇と舌のように見える薄紫の花弁をペロッと出しています。花弁の内側には紫色の大きな花模様が見えます。しかし、コエビソウ(小海老草)の主役は、この唇のような花弁ではなく、次第に色変化する美しい苞葉です。(上写真)

 

  

    先端が尖った楕円形の葉は、同じ節から向かい合うようにして付く対生葉です。葉の表面には、写真では見難いかもしれませんが、全面にうっすらと薄毛が生えていて、陽光によって白っぽく見えたりします。葉によっては、白い斑が入る種類もあると聴きますが、僕は未だ見たことがありません。(上写真)

 

  『コエビソウ』(小海老草)の花名の由来は、長さ10cm前後の魚鱗のように見える苞葉の赤褐色が小海老の尻尾に似ている事から来ているようですが・・・実は苞葉の色柄は黄色から始まり、やがて橙色から海老色に近い赤褐色へと変化して行きます。  色変化する苞葉を初めて見た時、『風変わりな花弁だな』と勘違いしていた頃が懐かしいです。

 

 

  数日前のブログ記事で、病死する直前まで芭蕉が編纂に着手していた俳諧誌・猿蓑に触れましたが、その中に、芭蕉が堅田という場所で詠んだ句に、『小海老』(コエビ)が読み込まれていた事を思い出しました。

 

俳諧誌・猿蓑

海士の屋は 小海老にまじる いとど哉   芭蕉                                     

読み:あまのやは こえびにまじる いとどかな

意味:海士の貧家に入ると、獲りたての小海老の籠の中にコウロギも一緒になって飛び跳ねていた。

 

㊟いとど=コウロギ=竈馬(カマドウマ)=羽のないコウロギ

 

  折角捜し当てた句でしたが・・・此の句の『小海老』(コエビ)は、正真正銘の海の小海老を詠んだ句であり、植物の小海老草とは全く無関係でした。 日本の植物の多くは、万葉時代や平安時代の歌集に詠み込まれているのですが・・・調べてみて吃驚・・・花木の『コエビソウ』(小海老草)が日本に伝来したのは、なんと!昭和期に入ってからのことでした。  

 

  新参植物の『コエビソウ』(小海老草)が、江戸期の俳諧誌・猿蓑に読み込まれているわけがありません。骨折り損の草臥れ儲けとなりました。 

 

参考:コエビソウの植物生態分類 

科名:キツネノマゴ科

属名:ジャスティシア属(キツネノマゴ属、コエビソウ属) 

学名:Justicia brandegeeana Wassh. et L.B.Sm. (=Beloperone guttata) 

和名:コエビソウ(小海老草)  

別名:ベロペロネ Beloperone、False Hop 、Shrimp Bush

原産地:メキシコ 

樹高:50~150cm