33℃を越える真夏のバンコクから成田に到着した3月28日は、気温5℃の雨降る寒い朝でした。東京都下の留守宅の雨戸を開けても、楽しみにしていた桜花繚乱の光景は何処にもなく、落葉した欅(ケヤキ)の太幹と小枝が墨絵のように寒々と群立しているだけ。桜の咲く時期の一時帰国は27年ぶりなのですが、あまりの落差に失望すること頻りです。
 
一時帰国直後に留守宅から見えたニレ科の落葉高木の欅(ケヤキ)   
Photo:Sony Tablet
 
  春から夏にかけては、心地よい緑陰を作ってくれる欅(けやき)ですが、落葉した群立する欅(ケヤキ)は、尚一層の寒さを醸し出します。 欅(ケヤキ)の名前は、室町時代以降に広まった呼称らしく、万葉集の時代には、『槻』(ツキ)と呼ばれていたようですね。
 
  『見来ても見てましものを 山背の高の槻群散りにけるかも』  万葉集
 
  バンコクから戻って来たばかりの僕には、あまりにも寒い日々の連続でしたが、4月に入ると気温が二桁台に急上昇し、冬眠していた留守宅近くのソメイヨシノが一斉に開花。27年ぶりに見る桜の世界に魅せられました。
 
留守宅から徒歩2分の武蔵野緑地跡に咲くソメイヨシノ  Photo:Sony Tablet
  
自宅近くの老人ホームに咲く八重のソメイヨシノ   Photo:Sony Tablet
 
西武線東村山駅近辺のさくら通りの約80本のソメイヨシノ  Photo:Sony Tablet
 
  4月12日から4月23日まで、東京都下を離れて、広島(瀬戸田、呉)、愛媛(松山、三机、西条、川之江、宇和島)、長崎(長崎、平戸、小串)、鹿児島(知覧、万世、枕崎、鹿屋)の太平洋戦争の戦跡旅行をしたのですが・・・それに先立って、途中下車した京都で大阪在住の長兄と落ち合い、平安神宮、龍安寺、そして御所周辺に案内してもらいました。
 
京都・平安神宮の八重の枝垂桜(しだれ桜)    Photo:Sony Tablet
 
京都・平安神宮の八重の枝垂桜(しだれ桜)   Photo:Sony Tablet
 
  平安神宮の八重の枝垂桜(しだれ桜)を詠んだ西行の和歌がありました。    
  『願はくは 花の下にて 春死なん そのぎさらぎの もち月の頃』 西行
 

京都・龍安寺の石庭に残るソメイヨシノ   Photo:Sony Tablet
 
  龍安寺の石庭に沿って咲いていた早咲きの枝垂桜は、散り落ちていました。 
  『あまたある花の かおりが漂ひぬ 静けさ石庭 やまとのあはれさ
  
京都・竜安寺境内の鏡容池畔のサクラ   Photo:Sony Tablet
  
京都御所に残っていた山サクラ   Photo:Sony Tablet
  
  京都御所周辺のソメイヨシノの多くは、既に散り落ちてしまい、緑葉を伴った山サクラが彼方此方に咲いていました。
 
京都御所・近衛邸跡に咲いていた糸桜    Photo:Sony Tablet
 
 御所が燃え落ちた時、近衛邸に滞在された孝明天皇が詠まれたのでしょうか?
 『昔より 名にはきけども 今日みれば むべめかれせぬ 糸さくらかな 孝明天皇
 
桜の散った京都御所・蛤御門    Photo:Sony Tablet
 
  長州出身の僕は、蛤御門の名前を目にすると、蛤御門の変(
禁門の変)で薩摩軍に破れて戦死した久坂玄瑞や来島又兵衛の辞世の句を懐ってしまいます。
 
  『時鳥 血になく声は有明の 月より他に知る人ぞなき』  久坂玄瑞
  『この首を とるかとらるか 今朝の春』  来島又兵衛
 
真言宗総本山・東寺のヨシノサクラ    Photo:Sony Tablet
 
  東寺では夜桜の鑑賞になったのですが、おおいに満足することが出来ました。機会があれば、昼光の下で映える東寺の桜も眺めてみたいものです。
 

真言宗総本山・東寺の八重紅枝垂桜    Photo:Sony Tablet
 
  弘法大師の『不二のおしえ』から『不二桜』と命名された樹齢120年の八重紅枝垂桜は見事でした。 『不二のおしえ』とは、『対立して二元的に見える事柄も、絶対的な立場から見ると、対立のない一つのものである』と言う教えの仏法の教えのようですが、『二つと無い枝垂桜』と言うことを意味する命名なのでしょうか?
 
  翌朝は、戦跡旅行を共にする金沢の友人K氏と京都駅で合流し、京都の円山公園を抜けて霊山歴史博物館の維新展を見学。それから、大阪の歴史博物館の難波宮展を見学後、夕方の新幹線で宿泊地の広島・宇品に向かう事になります。