前回ブログを書いたのが4月4日でしたので、昨日で一ヶ月も更新無しの状態が続いてしまいました。数人の友人から、『どうしたの?』、『病気になったの?』、『腰痛?』、『旅行中?』などのメールを頂戴しましたが・・・病気でもなく、旅行でもなく、頗る元気に、すっとバンコクで生活していました。

実は、2月と3月に各一回、依頼されていたプレゼンを終えてホットしていたところ、4月になって突然、日独伊三国同盟に関するプレゼンを依頼されてしまい、その下調べと発表用のパワーポイント作りに追われてブログを書く余裕がありませんでした。そのプレゼンも4月30日に成功裏(?)に終了して一安心。不義理をしていた友人との酒食の復活をしたりして、漸くブログを再開する気力が蘇って来た今日此の頃であります。



チェンマイ・ドイステープの碧天に映えるブーゲンビリアの赤苞葉と白花

プレゼンを終了した翌日、友人のA氏に誘われてブーゲンビリアの咲く食堂で会食した折に、僕が数年前にブログに書いていたという『ブーゲンビリアの本当の花』の話題になりました。ブーゲンビリアの花は、『彩り豊かな苞葉の中にポツンと咲いている可憐な白花なり』という内容の記事だったように思いますが・・・A氏の記憶の良さに驚いてしまいます。

と言うことで、久しぶりの更新となる本日は、18世紀に発見されたブーゲンビリアの花に纏わる珍事について書くことにしたいと思います。



白い苞葉に包まれたブーゲンビリアの白花。 苞葉の色に関係なく花弁はいつも白色です。

ブーゲンビリアの花を18世紀に発見採集した御仁は、世界一周のフランス探検艦隊(艦長・ブーゲンビリア氏)がブラジルに立ち寄った時、同艦の船医であり植物採集家でもあったフィリベール・コメルソン氏であったこと。

そして、発見者のコメルソン船医は、ブーゲンビリアの新種登録申請にあたって、尊敬するブーゲンビリア艦長の名前を花名として命名したこと・・・そんな事までも・・・A氏は僕の過去ログを覚えていました。ブログを書いた僕としては嬉しい限りですが、それにしても、A氏はブーゲンビリアの花が余程お好きなのでしょうね。



ブーゲンビリア艦長(左)              コメルソン船医(右)

A氏の記憶は、それに留まらず、書いた僕も覚えていない事までも憶えているのに吃驚。

①18世紀当時、自然の風力だけに頼って長期航海する艦隊や商船の乗組員は、野菜不足で壊血病に罹る水兵が多く、船医の仕事は多忙を極めていた事。特に行く先々の島や大陸で薬品の元となる薬草採集を行う作業は大変だったこと。


②そのために、世界一周艦隊の船医として乗り組むことになったコメルソン氏は、植物知識のあるジャンヌ・バレ氏(Jeanne Barre)を自分の補佐役として雇った・・・という事までも覚えていて、懐かしそうに語るのです。

そこで、徐々に記憶が戻って来た僕が、『世界一周探検艦隊が南太平洋のタヒチ島に寄港した時、コメルソン氏の助手・ジャンヌ・バレ氏を巡って、三文週刊誌が大いに喜びそうな性別に関する珍事が勃発した事も覚えていますよね?』とA氏に相槌を求めると、それまでニコニコしながら饒舌に語っていたA氏が眼の色を少し変えて、『そんな話はブログに書いていなかった』と言い張ります。

投稿したと思っている僕と、僕のブログを漏らさずに読んでいると嬉しい事を言ってくれる友人の間で思わぬ論争になったのですが・・・読んでいないと言い張る彼の剣幕に負けて、僕の思い違いということになってしまいました。その上、その事件の顛末を5月のブログに投稿する約束までさせられてしまったのです。まさに、本日、その約束を果たしているところですが、まさかこんな顛末になるとは思いもよりませんでした。

当時のタヒチ島は、命懸けで来島する白人とのビジネスを良好に運ぶために、島の酋長が若い女性を白人船員に提供する風習があったようです。当然のことながら、コメルソン氏の助手のジャンヌ・バレ氏にも、若い女性が送り込まれました。ところが、ジャンヌ・バーレ氏は、差し向けられたタヒチの若い女性を頑なに拒絶して追い返してしまいます。


コメルソン医師の助手ジャンヌ・バレ氏(Jeanne Barre)。 腕に採集した植物を抱えています。

激怒した酋親がジャンヌ・バレ氏に凄い剣幕で詰め寄ったところ、困窮したジャンヌ・バレ氏が、『実は、私は男性ではなく、女性なのです』と白状したことから、むさ苦しい男所帯の艦隊は、上を下への大騒ぎとなります。

生きて戻れる保証もない果てしなき長期航海で、しかも、大部屋という荒んだ生活環境の中で、誰一人として、ジャンヌ・バレ氏を女性だと気付かなかったと言うのですから、まさに、驚き、桃の木、山椒の木! とても信じられるような話ではありません。 


フランス探検艦隊のFrigate艦 La Boudeuse号
■排水量:550頓 ■全長:40m ■全幅:10.5m ■乗員:214名(士官8名)■船材質:木船


ジャンヌ・バレ女史はどのような出で立ちで艦内生活をしていたのでしょうか?興味に駆られて、駄目もとでネット検索すると・・・なんと! 男装した彼女のイラスト(下図)がヒットしました。ジャンヌ・バレー氏と大部屋生活を共にした同僚船員の話もありました。  

そういえば、奴が水浴びする姿を一度も見たことが無かったな!

狭い艦内に214名もの乗組員が身体を寄せ合って生活する中で、ジャンヌ・バレ氏は、汲々としながら、長い航海の日々を送ったに違いありません。


紫色の苞葉に包まれたブーゲンビリアの可憐な白花

植物採集を行うジャンヌ・バレ女史のイラスト画を見ると、頭部がとても小さく、背の高い細身の優しい風体に見えます。事の顛末を知って見直せば、タイでよく見かける男装した女性の『トムボーイ』のように見えなくもありません。

此の時代の新種植物の登録記録簿には、ジャンヌ・バレ女史が航海中に発見採集した植物名が多数記録されていることから、彼女は研究熱心で才能のある女性博物研究家だったとする意見もあるようですが・・・・当時のフランス雀の間では、『ジャンヌ・バレ女史はコメルソン氏の愛人に違いない』とする噂でもちきりだったようです。

しかし、上司のコメルソン船医は、『全く気付きませんでした』 と言葉少なく語るだけで、それ以上何の弁解も反論しなかったそうです。


女人騒動を起こしてタヒチ島を出港した探検艦隊が、インド洋モーリシャス島に寄港した時、コメルソン船医は、フランス艦隊とジャンヌ・バレ女史に突然別れを告げて下船。島に残ってしまいます。

その後のコメルソン氏は、インド洋の小島を転々としながら、大好きな植物研究に精魂を傾け、新種植物の学名登録のために一時帰国したこともあったかもしれませんが、その後の人生をインド洋の孤島で過ごして生涯を終えたそうです。


赤色の苞葉に包まれたブーゲンビリアの可憐な白花


1769年、Bougainville氏のフランス艦隊は、仏国として初の世界一周航海に成功して、母国フランスの海軍基地・ブルターニュ・サン・マロー港に凱旋帰港しています。フランス国民から歓呼の声で迎えられた事を報ずる当時の新聞記録も残っていました。

ジャンヌ・バレ女史のその後についての短い文章を見つけました。
ジャンヌ・バレ女史は、コメルソン船医がインド洋のモーリシャス島で下船した後も、世界一周艦隊のLa Boudeuse号に乗船して仏国に戻っていました。

彼女は、この時をもって、『世界一周の快挙を成し遂げた初めての女性』 として歴史に名前を刻まれることになったのですが・・・彼女のその後の動静は、杳として知れず、今になっても何一つ掴めないようです。


後日になって偶々目にした記事に、ジャンヌ・バレ氏が女性であることが判明したのは、彼女自身による告白ではなく、船医のコメルソン氏の医学的診断の公表結果であったとする説がありました。しかし、今となっては、それも臆説の一つに過ぎず、真実を確認する手立ては何も残されていません。

世界一周を終えた Bougainville氏は、後になって『世界周航記』(1771年)を著しています。 その著書の中で、彼は、『タヒチ島民は高貴な野蛮人』と記し、毎日飽きること無く怠惰な文明生活に浸る欧州人を揶揄しているのですが・・・その記事に触発されて、未だ見ぬ南の島の生活に飛び込んで行った人々もいたようです。

画家のゴーギャンが、南太平洋島に旅立ったのは有名な話ですね。ひょっとして、彼も『世界周航記』の影響を受けた一人ではないかと想像を逞しくしてチョット調べてみたところ、ゴーギャンは、Bougainville氏よりも百年以上も後の時代の人でした。

(注)ゴーギャンがタヒチに渡ったのは、1991年と1895年の二回。


本日の記事は、A氏との約束を果たすために書いたのですが、A氏の言われる通り、ジャンヌ・バレ女史に関する記事をアメブロに書いたというのは僕の間違いでした。実際は、現在工事中の僕のホームページに投稿していたのを、僕がアメブロに投稿したと勘違いしていたのですね。

という事で、ホームページ内のジャンヌ・バレ女史に関する記事をブログ用に改稿して転載させて戴きました。部分的には、ブログに投稿した記事と重複するところもあると思います。

■ご参考 ブーゲンビリアの植物分類名
学  名: Bougainvillea Spectabilis
科  名: オシロイバナ科  Nyctaginaceae          
属  名: ブーゲンビリア属 Bougainvillea         
性  状: 非耐寒性、ツル性低木
原産地:  中央アメリカ、南アメリカ
英  名: Bougainvillea
日本名:  ブーゲンビリア、イカダカズラ(筏 葛)、九重葛
タイ系タイ人= Fuan Faa  意訳:天空に向いて咲き誇る繁栄の花
中国系タイ人= Trut Jiin  意味:中国正月の春節        
花 言 葉= 情熱、魅力、貴方は魅力に満ちている。