バンコクの我が家の裏手を突き抜けるランスアン通りから高架電車(BTS)のチットロム駅に通じる交差点の一角に、赤い外壁のマーキュリータワービルがあり、そのビルの3階出口近くに『サウーイ เสวย 』という店名のタイ食レストランがあります。

タイ語を勉強された方ならば、御記憶かと思いますが、『サウーイ เสวย 』と云うタイ語は、今も公式な言葉として使用されている多くの王語の一つですね。


マーキュリータワービル内のタのイ食レストラン『サウーイ เสวย 』の店名看板

王語( ラーチャサップ ราชาศัพท์ )の『サウーイ เสวย 』を日本語に翻訳するならば、『おめし上がりになる』、『きこし召される』と云った感じになるのですが、その主語に該当するのは、当然のことですが、王様や王族の方々に限られます。間違っても僕が主語になることは絶対にあってはならない事であり、絶対に許されない間違いということになります。

定年退職してタイに移り住んだ10年以上前に、国立C大学のタイ語集中課程でタイ語の幾つかの王語を教わったことを思い出して、断捨離の一環として捨てることになっている当時の古い大学ノートを紐解いてみました。

先生から教わったのか、或は、辞書から転記したのか、今となっては記憶も定かではありませんが、เสวย の言葉の使い方を、覚えたての下手くそなタイ文字で書き残しているのを見つけました。


◇国王陛下には食事をお召し上がりになる。 พระเจ้าอยู่หัวเสวยพระกระยาหาร
◇お酒をきこし召される。 เสวยน้ำจัณฑ์
◇御在位なさる。 เสวยราชสมบัติ


王語( ラーチャサップ ราชาศัพท์ )とは、タイの王族に語りかける時とか、王族について話をする時に使用する特殊な動詞や名詞のことです。あまりにも数が多いことと、職業によっては使う頻度が今も高いこともあって、タイ語の本屋さんに行けば、王語だけの辞書が販売されているほどです。

『食事をお召し上がりになる』、或は、『お酒をきこし召される』を意味する動詞は、上記したように『 サウーイ เสวย 』ですが、それに付随して使われる名詞も、庶民のタイ人が使用する名詞とは全く違います。

◇(王族がお召し上がりになる)お食事 = ガ(ㇻ)ヤー・サウーイ กระยาเสวย
◇(庶民の食べる)食事 = アーハーン อาหาร


◇(王族がきこし召される)お酒 = ナム・ジャーン น้ำจัณฑ์  
◇(庶民が飲む)酒 = ラオ เหล่า



アユタヤー王朝時代から現王朝の初期にかけては、王朝に使える人々が王語を間違って使うと、厳しく処罰されたようです。現在は、さすがに処罰されることはないようですが、それでも、周囲の人々からは、『教養の無い奴』とか『学の無い奴』と心底から蔑まれることになるのだとか。タイの高級公務員や大企業の幹部も大変ですね。

王語だけではなく、庶民が使うタイ語にも、日本語の丁寧語に似たようなな上品語と呼ばれる言葉が多く存在します。例えば、『お酒を飲む』というタイ語表現を普通語から上品語までの格差を付けて列挙すると次のようになるようです。

◇庶民語:ギン・ラオ กินเหล้า
◇庶民語より少し上品表現:ドゥム・ラオ ดื่มเหล้า
◇上品語:ドゥム・スラー ดื่มสุรา  
◇更なる上品語:セープ・スラー เสพสุรา


僕の場合は、タイ人には珍しく酒好きの女友達が盛んに使っていたこともあって、少し上品表現のドゥム・ラオ ดื่มเหล้า を使うことが圧倒的に多いように思いますが、タイ人の多くは、ギン・ラオ กินเหล้า を日常的な口語表現として使うケースが多いような気がします。

但し、厳しいことで知られる国立C大学のタイ語集中課程で文語使用のレポート作成をする時だけは、指導講師の指摘もあって、いつもドゥム・スラー ดื่มสุรา を使っていたことを覚えています。でも、セープ・スラー เสพสุรา は、今まで一度も使ったことがありませんね。



レストランの『サウーイ เสวย 』が入居(3階)している赤い外壁のマーキュリータワービル。
スカイウオークで高架電車のチットロム駅と繋がっています。


さてさて、タイ語の王語説明は好い加減に留め置いて、レストラン『サウーイ เสวย 』の食事についてですが・・・午後一時半から外出することになっていますので、次回ということにさせて戴きたいと思います。

殊更に勿体をつけるようでまことに申しわけありません。