タイのインラック首相(タクシン元首相の実妹)が、目玉として積極的に進めて来た国庫を使っての農民へのばら撒き政策(コメ担保融資制度)の危うさについて、老爺のブログでも何度も取り上げたことがありますが・・・そのコメ担保融資制度(大きな票田の農民からのコメ買い取り保障制度)が遂に崩壊の危機に瀕しているようです。


現政権を支える巨大票田の農民から突き上げを喰らって爆破崩落しそうなうインラック首相
Stephane Peray (Stephff)  Editorial cartoonist at The Nation

連日のようにバンコク・シャットダウン(バンコク封鎖)のニュースを伝えて来たタイの新聞やネット紙も、此処最近は、約束を反故にしているインラック政権(タクシン派)に対する農民デモの様子を報道するようになっています。


『 信用していたのに騙された! アァッ イーッオック! 』(豚の悲鳴)  POST TODAY

コメ代金の支払いを反故にされているコメ農家は、タクシン元首相の率いるグループの信奉者が多いことから、最初の内は、東北地区のウタラディット県の一部地域だけで騒いでいるレベルだとのベタ記事的な扱いだったのですが、今ではタイの中部地区(シンブリ県、アントン県、スパンブリ県)で頻発。その余波は西部のカンジャナブリ県にまで拡大しています。


約束を反故にした政府に徹底抗戦を挑む意思を示す農民  POST TODAY
ใครรับผืดชอบเงินจำนำข้าว ชาวนา สู้ๆ 
誰がコメ担保融資の責任を取るのか!  農民は戦うぞ!


幹線道路を横に連なってデモ行進する農民グループ  POST TODAY

抗議活動の方法も、最初の頃は通常のデモ行進だけだったようですが、今では反政府派のバンコクシャット・シャットダウンを参考にしたのでしょうか、トラクターやコンバイン車を動員して幹線道路の封鎖を行ったり、トラックの古タイヤを道路上に並べてバリケードを築いたりしています。(上写真)


商務省の鉄扉越しに抗議をする農民グループ  POST TODAY

プラカードには強烈な言葉が書き殴ってあります。
『 稲作農民を騙して食い潰すタクシンの糞バカ野郎 』


反政府派のグループが政府庁舎を占拠した手法に倣ったのでしょうか、被害者の農民グループは、コメ担保融資制度の監督官庁である商務省前の道路封鎖を行うほどまでにエスカレートしています。

コメ担保融資制度とは、農民の票田を当てにして打ち出したインラック政権のばら撒き政策で、政府が市価の約4割高で農民からコメを買い取るという大盤振舞いの制度でした。

インラック政権は、買い取ったコメを中国東北地区の国営企業に輸出するつもりだったようですが、その当てにしていた中国から契約をキャンセルされてしまい、コメ買い取り資金確保の道を断たれてしまったようです。

タイの国庫予算の払底を危惧する国際通貨基金(IMF)も、コメ担保融資制度の打ち切りを進言しているとの新聞報道もあります。

万事休したインラック政権は、タイ国の主要銀行への融資要請も出しているようですが、反政府派を支える富裕層や中間層の市民を顧客に多く持つ銀行は、反タクシン派の市民の預金流出の不安を憂慮して簡単には応じられない側面もあるようです。

更に、コメ担保融資制度をめぐるインラック政権内に不正があるとして、汚職取締委員会が元大臣を含む政治家(15人)を刑事告発。監督者としてのインラク首相の刑事告発の可能性もあるようです。

噂によると、元商務相を含む複数の政治家は、コメ担保融資制度で買い取ったコメの一部を、タイ国内の業者に内々に簿外で販売して不正に着服したとの話も実しやかに伝わっています。


今朝の英タイの英語ネット紙に次のような記事が掲載されていました。

The Suthep Thaugsuban-led anti-government movement appears to be
seeking an alliance with rice farmers as the embattled caretaker
government struggles to find the money owed to the farmers under the
price-pledge scheme.


インラック政権が反政府派のステープ氏のデモ攻撃によって崩壊することは、老爺の私見ですが、まずはないだろうと思うのですが、その決め手を欠くステープ氏が、本来ならば敵陣のメンバーである農民グループに、コメ担保融資制度をめぐる協調を申し入れたのです。

こうなると、コメ担保融資制度を巡る大汚職で国庫予算を払底させた責任を取る形で、インラック首相が引責辞任に追い込まれる可能性が高まってくるような気もしないではありません・・・・