本日の花は、先月初め頃にバンコク郊外の公園で撮影したものですが、既に公園内デヴューを果たした花木ではなく、公園の片隅にある育成場で公園への移植を待ち侘びている高さ50cmに満たない常緑低木です。

 

チョット見には、そんじょそこらにざらにある弱々しい雑草の類に見えたのですが、足を止めてじっくりと眺めれば、それぞれの花柄の先っぽに、直径1cm程度の赤系の雄蕊を取り囲む白色の花弁が鈴なりに咲いています。そして、3mmにも満たない可憐な蕾までもが自分の存在を主張している様子を見て、あまりにの可愛さに思わず微笑んでしまいました。


最初は背高の雑草の類にしか見えなかった花木

公園デビューを果たすと、プラスチック板に学名、科名、タイ語の俗称名を記した名札がぶら下げられるのですが、公園に移植される前の育成場の花木は、画用紙の切れ端にボールペンで走り書きした名札が巻きつけられているだけです。 

しかも、その殆どは風雨で飛ばされて無くなるか、どうにか残っていても、風雨で字が滲んでしまって判読できないものが少なくありません。


 


この花木の名札も既に無かったのですが、直下の地面に半分埋まった状態の紙切れを発見! 掘り出して見るとタイ語で
ワーン・トラニー・サーン ว่านธรณีสาร  』 と書いてあるのが読み取れました! 本当に此の花木の名札かどうかは分かりませんが、自宅に戻ってチェックする時の有力情報の一つになります。 


 


実は、先月の中頃、バンコクの本屋で
 ワーン ว่าน  』  と云う題名の花の写真集を手に取った時、掲載されている花木の全てが未知の花ばかりだったので衝動買いをしたのですが、その内にゆっくりと読もうと思ってその儘になっていたことを思い出しました。 ひょっとしたら、その写真集の中に、此の花が含まれている可能性が無きにしもあらずです!! 
(下写真)

 

 

 衝動買いしていた 『 ワーン ว่าน 』 の写真集

接頭語
に 『 ワーン ว่าน 』 が付加されたタイの花木名は、泰方薬の小型植物群・・・345121700種あるようです・・・を意味するようですが、果たして全112頁の写真集の中に、此の花木が掲載されているのかどうか? 胸が高鳴ります!

ワーン
 ว่าน 』 の接頭語が付いた泰方薬に用いる植物は、その葉や茎などから溶媒抽出される物質が皮膚老化抑制剤としての有効性が高いことから、化粧品、医薬品、医薬部外品として配合されることがあるようなのです。

 

 


大昔のタイでは、『 ワーン ว่าน  』 の名前が付いた植物は、不死身、不老長寿、金持ちになる、消身の術が使えるようになる、水難、火難、剣難から逃れられる等の効用があるとするとんでもない大迷信があったようですが、皮膚の老化抑制の効能の観点から見れば、それほど荒唐無稽な迷信でもなかったのかも・・・ですね。



 大昔の大迷信の話はさて置き、自宅に戻ってから タイ語の花木写真集 『 ワーン』 を開き、ワーン・トラニー・サーン ว่านธรณีสาร  』 の正体を確認する楽しい作業が始まりました。


 


写真集 『 ワーン 』 の目次を開くと、花名の頭が
ワーン ว่าน 』 で始まるタイ語の花名が
111項目並んでいます。 はやる気持ちを抑えて花名の目次を読み進むと、42番目の項目に『
ワーン・トラニー・サーン ว่านธรณีสาร  』 を発見!!  早速該当頁を捲ると、公園の育成場で見たと全く同じ花貌の写真が目に飛び込んで来ました!!  (下写真)


直径1cmにも満たない花弁と3mm程度の小さい蕾

公園の名札は、親切な人(?)が落ちていた名札を拾って勝手に取り付けてしまうこともあったりして、必ずしも正しいとは限らないのですが、今回は間違いなかったようです。

 

次に、植物分類学上の区分名のチェックです。 分類学上の区分名は団体の系統によって異なることも多いので、可能な限り複数資料でチェックすることにしています。

 

学名:  Phyllanthus Pulcher Wall.ex Mul.Arg. 

科名:  Phyllanthus Phyllanthaceae (Euphobiaceae)・・・トウダイグサ科
属名:  Phyllanthus

英語名: Tropical Leaf Flower

別名:   Phyllanthus pulcher

タイ語名: ワーン・トラニー・サーン ว่านธรณีสาร

性状:  常緑小低木
原産地: タイ、マレーシア、ジャワ一帯


 ニセアカシアの葉っぱに似た感じがする互生葉

ところが、またしても、和名がさっぱり分かりません。 『フィラントゥス・プルケール 』 の片仮名を日本名としている資料は幾つかありましたが、これは、ラテン語と思われる学名を部分的に片仮名表示したに過ぎません。 『 トロピカル・リーフ・フラワー』 とする資料もありますが、これまた英語名の片仮名読みなので、純粋な和名とは言い難いですね。


 

若い葉でしょうか? 江戸時代の小判のように見えました。

タイ日大辞典を見ると『 オオミカンソウ 』 の記述があったので喜んで調べたのですが、その裏は取れませんでした。 ネット検索では 『 ハナハノキ 』 (花葉の木) の名前もありましたが、これも花木の通販会社の商品名のような気がしないでもありません。

 

どうも、最近は日本名(和名)探しが上手く行かないケースが多いような気がしてなりません。寄る年波で僕の根気が落ちてしまったのか? それとも、現在の日本の花木の世界が外来語の転用を好むようになったのでしょうか? 

 

自分の気力低下を認めるのは口惜しい気もしますが、できることならば、後者でないことを祈りたい気持ちでいっぱいです。