バンコクのプラトゥーナーム市場の近くを歩いていると、
バナナを炭火で焼いている屋台の小母さんから声をかけられました。

『 焼きバナナ(注)を買って頂戴よ! 』 (注)クルアイ・ピン กลัวยปิ้้ง 


特に珍しくもないので、通り過ぎようとしたのですが、
ふと見遣った焼網の前端に
黄色と紫色の丸い焼菓子が置いてあるのに気付きました。(下写真)


タイに魅せられてロングステイ
炭火で焼いているバナナの前端に置かれていた二種類の焼菓子
(左)紫さつま芋の焼菓子、(右)タピオカの焼菓子( マン・サムパラン มันสำปะหลัง )


上写真の右側の黄色の焼菓子が、
ココナッツ・ミルクで作るタイ風タコ焼きのようにも見えたのですが、
矯めつ眇めつ眺めると、どうもそうではないようです。

           僕  『 小母さん、これは何という焼菓子なの? 』
           女性 『 マン・サムパラン だよ 』 ( มันสำปะหลัง )
           僕  『 マンはイモですね。サムパランの意味は何ですか 』
           女性 『 意味? 分からないよ 』


小母さんの説明によれば、
この焼菓子の原料は、キャッサバの根茎から製造したタピオカなのだとか。

試食のつもりで、
黄色のマン・サムパランを4個 、紫イモ4個を買うことにしました。
(全部で20バーツ  約57円 )


タイに魅せられてロングステイ
直径4cmのタピオカの黄色の焼菓子 ( 名前はマン・サムパラン  มันสำปะหลัง )

自宅に戻り、タイ日大辞典で “ サムパラン ” の意味を調べると、
“ トウダイグサ科 ”、“ 語源はインドネシア語と思われる ”
とありました。

難解な外国語らしき植物学上の名前が付けられた焼菓子の意味なんて、
タイの小母さんが分からなくても当然ですね。


タイに魅せられてロングステイ

“ マン・サムパラン ” を二等分すると、
その中に “ コーン ” の粒々が混入していました。

キャッサバのタピオカに玉蜀黍の粒を混入して指先で丸め、炭火で焼いた菓子、
つまり “ 芋の澱粉で作った玉蜀黍の粒入り焼菓子 ” ですね。

キャッサバの根茎から製造した澱粉のタピオカは、
料理の “ とろみ ” や “ つなぎ ” としてだけではなく、
このような焼菓子の材料としても用いられるのですね。


タイに魅せられてロングステイ

タイのような熱帯地域では、
キャッサバの茎を畑に挿しさえすれば容易に繁殖すると聞きます。

但し、青酸配糖体なるものが外皮に含まれているらしく、
食材として用いる場合には、
外皮を取り除いて水洗と加熱処理をして無毒化する必要があるのだそうです。

その昔、アジアの何処かの国 ( 比島だったか? ) の小学生が、
青酸の毒抜きをしていないタピオカの菓子を食べて食中毒に罹り、
29人が死亡した事件がありましたね。

青酸配糖体なるものは、甘み品種の外皮に多く含まれているそうですので
調理する人は、くれぐれも気をつけて頂きたいものです。

そう言えば、昨年までは、ガソリンを使用していた僕の車の燃料も、
現在は、キャッサバのタピオカを原料としたエタノール燃料に切り替わっています。


キャッサバの学名 : Manihot esculenta 
トウダイグサ目 、 トウダイグサ科 、 イモノキ属
和名 : 芋の木 、 英名 : キャッサバ Cassava


タイに魅せられてロングステイ
マン・サムパランの食感を引き立てるマトゥーム・ティー

ところで、肝心のマン・サムパランの味は?
一言で表現するならば、“ 食感はあれども、味覚はなし ” でしょうか。
“ もちもち ”、“ プリプリ ”、“ くにゃくにゃ ” した不思議な食感です。

多くの人は、ココナッツ・ミルクやシロップなどのお好みの甘味を付けて、
タピオカの独特の食感を楽しむようです。

( シロップ漬けは、マン・サムパラン・チュアム มันสำปะหลังเชื่อม と呼ばれています )

僕のお好みの甘味料は、ナーム・マトゥーム น้ำมะตูม と呼ばれる
柑橘系の甘い果実 ( ゴールデン・アップル ) を原料としたハーブ・ティーです。
( 上写真の右側 )

甘味のマトゥームで潤いながら、
不思議な食感のマン・サムパランを味わう昼下がり、
まさに至福のひと時です。



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