バンコクを流れるジャオ・プラヤー川の向かい側のサムット・プラカーン県プラプラデーン郡を訪れた時の話です。僕のお気に入りの場所なので拙BLOGに幾度となく登場するバンコクに最も近い田舎です。

長閑な田舎風景の中に、栗のイガイガに似た赤い房状のものがぶら下がる常緑の低木を見つけました。赤い房状のものが、なのか?果実なのか? 兎に角、今まで見たことのない形をした植物でした。(下写真)


タイに魅せられてロングステイタイに魅せられてロングステイ
左側: 赤い房状のものがぶら下がる高さ3m余りの常緑木
右側: 栗のイガイガに似た房は・・・果物なの?

いつもならば、この辺りには、小道に置かれた椅子に腰を下ろして日がな一日談笑している老人が何人もいるのですが、此の日は気温が37℃もあった所為なのでしょうか、誰一人見えません。それどころか、行き交う人もいません。

タイ語の花名を教えて貰うことも叶わず・・・デジタル・カメラで数枚の写真を撮っただけで、近くの水上マーケットで昼食を取ることにしました。食事の注文を済ましてから、やおらデジタル・カメラを取り出し、先ほど撮影したばかりの名前不明の花の写真を覗き込んでいると・・・隣に座っていたタイ人の40代と思しき小母さんが語りかけて来ました。


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左側: タイ語で “ ンゴ ” เงาะ と呼ばれる果実 ( 英語名: ランブータン )
右側: 現場で見つけた奇妙な形をした赤い果実?

女  『 何を撮ったの?  
僕  『 花ですけど、名前が分らないのです
女  『 ドレドレ・・・此れは ンゴ の仲間だね  ンゴ เงาะ = ランブータン  
僕  『 それで、何と言う名前ですか?
女  『 カム・ンゴ だと思うわ   カム・ンゴ = 金色のランブータン คำเงาะ
僕  『 本当ですか? そうとは思えないのですが・・・

先ほど見たばかりの房状の赤い果実が “ ンゴ ” เงาะ ( 英語名:ランブータン )の仲間だと強調されても、“ ンゴ ” を知っている僕としては、俄かには信じられず、失礼ながら生半可な相槌しか打てません。(上写真)

タイに魅せられてロングステイ
柔らかい赤毛に被われた三角形は花ではなく果実。赤い葉脈が浮き上がる葉は心臓形

後日談ですが、花が大好きというタイ人に、僕の撮った写真を見せたところ、“ ンゴ ” เงาะ ( 英語名:ランブータン ) は、ムクロジ科 ( Sapindaceae ) ランブータン属 ( Nephelium)。 
僕が現場で撮影した植物は、ベニノキ科( Bixaceae ) ベニノキ属 ( Bixa ) のトン・カム・セーッツ ตันคำแสด ( 黄金の木 ) なので、両者に植物学上の仲間関係は無いとのことでした。

但し、“ カム・セーッツ ” ( ต้นคำแสด )のことを、地方(人)によっては、プラプラデーンの小母さんのように、“ カム・ンゴ ” ( ตันคำเงาะ 黄金色のランブータン )の俗称で呼ぶこともあるのだそうです。親切に教えてくれたタイ小母さんの話に疑念を挟んだ僕でしたが、本当に申し訳ないことをしてしまいました。


タイに魅せられてロングステイ
枝端に咲く赤い果実の色とは対照的な薄桃色の可憐な花 ( 花弁は円錐花序、花径5~6cmの五弁 )

タイ語名 ( トン・カム・セーッツ ) の正しい綴り ( ต้นคำแสด ) さえ分れば、英語表記の学名、科名、属名を容易に知ることが出来ます。そして、英語ネットを検索すれば、かなりの確立で日本語の花名に辿り着くことが可能となります。

チョッと遠回りな手法で調べた結果、タイ語名の トン・カム・セーッツ ( ต้นคำแสด )の日本語名は、英語名の Lipstick Tree を直訳した “ ベニノキ ” ( 紅の木 ) でした。

タイでは、観賞用というよりは、寧ろ、染色用の植物として、種皮からオレンジ色の食用色素(アナトー)を採集、口紅、バター・チーズ、チョコレートなどの天然着色料として利用されていると聞きました。

ハワイでは、紅の木の常緑性と南国的な紅色の果実を生かして街路樹や公園などの観賞用として利用されているというのですが・・・見過ごしてしまったのでしょうか? 未だハワイで一度も気付いたことがありません。御覧になった方はいらっしゃいますか?


追記:
【 学名 】Bixa orellana 
【 科名 】ベニノキ科 Bixaceae
【 属名 】ベニノキ属 Bixa

【英 名】Achiote , Annatto Tree ,Lipstick Tree
【日本名】紅の木
【タイ語】Kham seet คำแสด
【原産地】熱帯アメリカ、 西インド、南米