二年坂(ニ寧坂)から一年坂(一寧坂)に入らずに直進すると、維新の道に出ます。その道を東に進めば、坂本竜馬、中岡慎太郎、高杉晋作、木戸孝允などの江戸末期から維新にかけての志士が眠る興味深い霊山地区があるのですが・・・今回の目的は “ 東山の道 ” の散策なので、一年坂(一寧坂)経て “ ねねの道 ” へと向かうことにします。

ねねの道とは、言うまでもありませんが、豊臣秀吉の正妻(北政所)だったねね(高台院湖月尼)が、秀吉の菩提を弔うために開創した高台寺寿聖禅寺院の直ぐ西側にある道路の愛称です。


ねねの道と記された長提灯

ねねの道の風情には、三年坂(産寧坂)、二年坂(ニ寧坂)、一年坂(一寧坂)とは異なった雰囲気があります。北に向けて直線状に伸びる道は、御影石を整然と敷き詰めた平坦な石畳道路が続き、他の道のような石段坂はありません。 更に、三年坂や二年坂の頭上を覆っていた電線の束もなく、一本の電柱も見当たりません。(下写真)

聞くところによると、ねねの道の石畳は、平成10年に電線の地中化を実施した折に、京都市電の軌道に敷き詰められていた石畳み(2,500枚)をリサイクル活用したのだそうです。



京都市電の軌道をリサイクル活用した “ ねねの道 ”

平坦なねねの道の左右には、幾つかの小径が枝分かれしていて、その路地の中には和装小物店、料亭、旅館などが軒を並べています。東側に伸びる石塀小路を覗くと、竹中と記された料亭がありました(下写真)。その奥には、名物の石垣塀が連なり、その先には、クネクネと折り曲がった板塀の小路がある筈です。


石塀小路の入り口。その奥に石塀と板塀小路が連なります。

石塀小路を遣り過ごして北へと進むと、ねねの道の東側に、高台寺の山門に続く “ 台所坂 ” (下写真)と呼ばれる細い石段の参道があります。西側に視線を移すと、ねねが最初に方丈を構えた圓徳院へ通じる “ ねねの小径 ” もあります。

台所坂 ” (下写真)の周囲は、緑に包まれた高台寺公園になっていて、“ 湖月茶屋 ” や “ 高台寺ユバの店 ” などの食事処が点在していると聞きました。



高台寺の山門に続く台所坂

ねねの道の西側にも、手作り作品のギャラリー 、旅館 、休憩処、食事処などが並んでいるのですが、その中に “ グラス・ギャラリー・波ぎ ”、“ 京都クラフト・波ぎ ”(下写真)、“ 波ぎ茶寮 ” 等の“ 波ぎ ” の屋号がついた趣のある建屋が軒を並べていました。

波ぎ茶寮 ” というと、喫茶店のように思えますが、実は、京風の御食事処です。メニューとしては、京風のそば、うどん、おばんざい等ですが、特に、ランチ・メニューの“ かやく御飯 + 鴨せいろそば ”(1,500円 ~)が人気なのだとか。



板塀に囲まれた“ 京都クラフト・波ぎ ” の佇まい

北に向かうねねの道の東側だったと思いますが、“ 京麩・玉岡半兵衛 ” と “ 高台寺・萬治郎 ” の屋号を掲げた京都風の御食事処がありました。石塀小路の老舗のように “ 一見さんお断り ” といったような高飛車な店ではなく、誰でも気軽に昼食をとれる御食事処です。

とは言っても、京都を僅か10時間で回ろうとする弾丸旅行を実施中の僕は、この場所でゆっくりと食事する余裕はないのですが・・・折角なので、店前に示されている菜譜だけでも観賞することにしたいと思います。

先ずは、甘党生麩のランチ料理で有名な “ 高台寺・萬治郎 ” の菜譜(下写真2枚)です。



高台寺・萬治郎のランチ・メニュー二種類 “ 京都麩点心 ” 御一客 1,800円 

タイ・バーツに単純換算すると約600バーツです。外国人向け高級タイ料理の一品の値段といったところですが・・・観光地の京都にしては意外と御安いような・・・どうなのでしょうか?


高台寺・萬治郎の “ 甘党生麩 ”三種類 

萬治郎の甘党生麩シリーズ ”の菜譜(上写真)です。おしるこ生麩 600円、みたらしこ生麩 600円、麩まんじゅう 400円 。これも随分と御安いような気がするのですが・・・

直ぐ近くの御食事処に“ 玉置半兵衛の麩 ”(下写真)がありました。店先に置かれた菜譜を覗き見ると、“ 半兵衛の笹巻麩 一箱( 五個入り )1,000円 ” とありました。 これまた御安いと思うのですが・・・

日本を出てから20年近く経過した浦島太郎の僕ですが、それでも、最近のバンコクの物価高騰を考えると、京都名産の値段がとても安く感じられます。僕の感覚が狂っているのでしょうか・・・



玉置半兵衛の笹巻麩

玉置半兵衛さんが語られたのでしょうか・・・チョット長い一節がありました。横着をしてメモは取らなかったのですが、微かに覚えている数行だけを想いだしてみると、こんな内容だったように思います。


いつも変わら半兵衛の麩づくり
うまい、うまいと、いつも褒められて
いつの間にか過ぎた300年
今でもせっせと麩づくり
半兵衛の麩は、うまいぞ、うまいぞ、変わらんぞ


正午もとっくに過ぎてしまい、僕のお腹もかなりペコペコなのですが、なんせ10時間限定の京都・弾丸旅行の真っ最中です。兎にも角にも、東山の道の散策を終了しないことには、後半の旅程(二条城と南禅寺塔頭の金地院)の目星が付きません。それまでは、何が何でも我慢! 我慢!です。