コンドミニアムのプール・サイドで、うつらうつらしていると、同じコンドミニアムに住む顔見知りのタイ人から声をかけられました。

彼女 『 今からクワンイムを買いに行くつもりなの  注:กวนอิม
  僕 『 クワンイム・・・って何なの?
彼女 『 英語だと・・・ミリオン・バンプーかな
  僕 『 バンプー?
彼女 『 そう、ラッキー・バンブー(幸せの竹)とも呼ぶらしいわ
  僕 『 ラッキ・トゥリー(幸せの木)じゃないの?
彼女 『 竹じゃないのに、バンブーと呼ぶのよ
  僕 『 ???
彼女 『 一緒に行きませんか?
  僕 『 場所は何処なの?
彼女 『 すく近く、歩いて行ける所なの


今ひとつ買う物の正体が分からないまま、特に予定もないので、彼女のお誘いに乗ることにしました。会場につくと、タイ語で “ クワンイム กวนอิม )と呼ばれる植物が所狭しと並べられています。僕が想像していた “ 幸せの木 ” とは全く異なる竹のような植物です。


左:茎の先端を曲線状に曲げた形状の富貴竹
右:筒状にネット編みした形状の富貴竹


北京で働いていた頃、これによく似た観葉植物を中国の友人から貰い、一人住まいの殺風景な部屋に飾っていたことを想い出しました。赤いリボンが付けられていたような気がします。中国の通称名は “ 富貴竹 ” だったと思います。

英語名を調べてみると、“ Belgian evergreen ” とありますが、通称名としては、彼女の説明にもあったように、“ ミリオン・バンブー ” (百万年竹)。地域によっては、“ ラッキーバンブー ” (幸せの竹)と呼ばれることもあるようです。日本名は、“ 万年竹 ” と記されていました。 

(注)学名:Drcaena evergreen 、科名:リュウケツジ、属名:ドラカエナ(ドラセナ)
(注)原産地:熱帯アフリカ西部(カメルーン、コンゴ)


中国の通称名の “ 富貴竹 ”、日本通称名の “ 万年竹 ”、英語名の “ 幸せの竹 ”、何れの名前にも “ 縁起の良さ ” が込められた響きが満ちています。


茎を三つ編み風に編み込んだスタイルの富貴竹

中国(北京)に赴任したばかりの僕の部屋に届けられていた “ 富貴竹 ” には、僕の“ 開運長寿厄除け ”、はたまた、“ 億万長者 ” などの祈りが込められていたのかもしれませんが・・・今になって思うと、“ 金運 ” の効果だけは、金輪際なかったと断言できます

彼是と品定めをしていた彼女ですが、ピラミッド状に垂直に組み上げられた富貴竹を買い求めました(125バーツ、375円)。僕が北京時代に部屋で育てたものと同じ形です。葉っぱも根もない茎だけの植物ですが、水栽培をするだけで簡単に “ 芽が出る ” 縁起の良い富貴竹です。


彼女が購入したピラミッド状に組み立てられた富貴竹(茎の切口の赤色は、腐り防止のために張られたパラフィン)

彼女をエスコートするだけのつもりだった僕ですが、様々な形をした “ 富貴竹 ” を見ている内に、自然感に溢れた感じがする斑入りの緑の葉っぱをニ束ばかり、衝動買いしてしまいました。

自宅に戻り、中国(北京)時代に買い求めた鉢カバーの“ 景徳鎮の陶器 ” に無造作に挿し込んでみました。二束ではチョット寂しい感もありますが、富貴竹の生命力は強いので、来月の中頃になれば、茎と葉っぱの緑が居間の一角を潤してくれるに違いありません


僕が衝動買いした自然な感じの斑入りの葉っぱと茎だけの富貴竹

タイ人の彼女に、タイ語の “ クワンイム กวนอิม の語源について訊ねたのですが、“???”と頭を傾げるばかりでした。

故冨田竹ニ郎氏の “ タイ日大辞典 ” によると、“ クワンイムは大乗仏教の観音菩薩 ” とあります。 そう言えば、“ クワンイム ” と “ 観音 ” の発音は似ていますね。タイ語のクワンイムが、中国からの外来語だとすれば、タイ族の彼女が語源を知らなくても頷けるというものです。

だとすれば、“ タイに於ける富貴竹に関わる習慣 ”は、タイで生まれた習慣ではなく、広州、潮州、福建から遥々タイに移住して来た中国系タイ人が、それぞれの生まれ故郷から持ち込んだものが根付いたのかも知れませんね。