数日前のBLOGで、浜万年青(はまおもと)の写真を一枚だけUPしたのですが、手違いで消してしまいました。今回、もう一度トライしますが、前回と異なる切り口で、浜万年青を単独で採り上げてみたいと思います。

この花の和名は、浜万年青(はまおもと)、或いは、浜木綿(はまゆう)ですが、個人的には、浜万年青(はまおもと)の名前の方が何となく気に入っています。日本の沖縄から関東以西の本州にかけて咲く彼岸花科の種類ですが、一年を通して咲く常緑多年草であることから、万年青(おもと)の名が付いたようです。


浜万年青(はまおもと)の緑色の蕾(つぼみ)

関東以西の日本の彼方此方に咲いている浜万年青(はまおもと)ですので、てっきり、日本の植物だと思い込んでいたのですが・・・間違っていました。浜万年青(はまおもと)、或いは、浜木綿(はまゆう)の “ ”の字は、花の種子が、熱帯モンスーン気候の国から黒潮の流れに乗って日本の海浜に流れ着いたことに由来するのだとか。

渥美半島で南の国から漂着した椰子の実を拾ったという柳田国男(民俗学者)の体験談をもとに、島崎藤村が作詞した“ 名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ ”(作曲:大中寅二)という有名な唱歌(童謡?)がありますね。若しも、これが大きな椰子の実ではなく、浜万年青の小さな種子だったら・・・どのようなイメージの曲になったのでしょうか? 


緑色の蕾(つぼみ)が大きくなるにつれ、次第に先端が割れ始めます。

何度も書きましたが、日本在住時代に花に興味のなかった僕は、花の日本語名を殆ど知らない人間になっていました。タイに移り住んでから次第に花に気持ちが向くようになるのですが、日本語の花の資料の乏しいタイにあって、花の日本名を調べることは、チョット大袈裟ですが、並大抵のことではありません。

僕がとった方法といえば、先ずは、タイ語の花の呼び名を耳で捉え、それから、タイ語の正確な綴りを書いてもらい、その後、タイタイ辞書で英語名を調べ、最後に、英和辞書で日本語名を知るという、実にもって遠回りな方法を余儀なくされていたのです。

しかし、浜万年青(はまおもと)に関しては・・・それとは全く逆の過程を歩むことになりました。日本名は分かるのですが、タイ語名を知るのに随分と長い時間を要してしまったのです。

多くのタイ人に、『 この花のタイ語の名前は? 』 と訊ねるのですが、反応は 『 ??? 』 ばかりでした。花を愛する人が多いタイ国、種々の花が百花繚乱のタイ国ですが、必ずしもタイ人が花の名前に詳しいわけではありません。寧ろ、花の名前に無頓着な人が多いと言っても過言ではないと思います。


やがて、緑色の蕾の中から、白くて細長い蕾が出てきます。

タイ語の花名を諦めかけていた時・・・何気なく日タイ辞典(故 冨田竹ニ郎著)の付録の “ 動植物名彙 1997年 ” を捲っていると、“ 植物タイ名-和名索引 ” の項目名が目に入りました。今までこのような付録があることに全く気付いていなかった僕ですが、迂闊を通り越して、将に愚の骨頂、灯台下暗しとはこのことです。

和名は、冒頭に述べた如く、ハマオモト、又は、ハマユウ。タイ語名は、プラップ・プルン พลับพลึง、学名は CRINUM ASIA TICUMT、ヒガンバナ科、ハマオモト属、ハマユウ種とありました。散形に咲いた六弁の白花が海岸の砂地に自生し、日没前後になると芳香を発するとあります。


開花した浜万年青(はまおもと)の可憐な白花

浜万年青が開花した姿は、まるで、神主さんが “ 御祓い ” をする時に捧げ持つ御祓い棒(?)に取り付けられた白い木綿(こうぞう)の “ ぬさ ”(幣)に似ていますね。

浜万年青(はまおもと)の名前は、一年を通して咲く常緑多年草に由来していますが、浜木綿(はまゆう)の名前は、六弁の白花を散形花序につける姿が、御祓いに用いる“ 白い木綿の幣 ” (ぬさ)に似ていることに由来するのだとか。

花言葉をみると、“ 汚れがない ”とありました。浜木綿の白花が、神主さんが御祓いをする “ 白い幣 ” (ぬさ)に似ていることから生まれ出でた言葉なのでしょうか?

別の花言葉を見ると、“ どこか遠くへ ” とありました。浜万年青の種子が、“ 名も知らぬ 遠き島へ 流れ付く小さな種子 ” から生まれ出でた言葉なのかも知れませんね。