バンコクのシリキット・コンベンション・センターに隣接するベンジャギティ公園(156,000坪)は、中心に配置された大きな池(120,000坪)と、その周囲を取り巻く遊歩道によって構成されています。


公園内の光景

前回BLOGの“ 初めて見た本当の火炎木 ”は、東側の遊歩道で発見したのですが、もう少し進んで北側の境界を示す生垣辺りを散策すると、タイでは地味な花の部類に属するハイビスカスが植栽されている地域があります。


公園の生垣に咲くハイビスカス

ハイビスカスは、東インド、南中国を含む東南アジアで多く見かける花ですが、日本在住時代に旅行した沖縄の鄙びた石垣で見かけたこともあります。しかし、なんと言っても、ハワイの歓迎レイや、フラダンスを踊る乙女の亜麻色の髪の毛を飾るハイビスカスが、この花の南国イメージを決定的にしているように思います。

ハイビスカスの名前の由来は、エジプトの美を司る女神( hibis )に似ている( isko )というギリシャ語が語源らしく、ハイビシスコ(hibisisko)と呼ばれていた時代もあるようです。


八重のハイビスカス

花の植物学的名前としては、学名、科名、属名とありますが、この花の学名は、“ ハイビスカス ”、科名は“ アオイ ”、属名は“ フヨウ ”とありました。


八重のハイビスカスと普通のハイビスカス

庶民の間で呼ばれる花の名前は、一般的に難しそうな学名で呼ばれることは滅多に無く、覚え易い“ 俗称 ”が広く行き渡るものですが、なんと!! ハイビスカスの花名は“ 学名 ”そのものだったのですね。


葉に斑の入ったハイビスカス(左)

タイの人々は、ドーク・チャバー ดอกชบา (チャバーの花)と呼びますが、“ チャバー ”そのものに取り立てた意味合いはなく、単なる固有名詞に過ぎないようです。言い換えれば、タイの人は、手折れば直ぐに萎びてしまい、生け花としては使えないハイビスカスに、余り重きを置いていなかったのかも知れません。


丸みをおびた花弁のハイビスカス(右)

然らば、“ ハイビスカスの和名は何? ”と思って検索すると、これまた意外や意外!? “ 仏桑華 ”とありました。 南国の花・ハイビスカスのイメージとは、余りにも懸け離れた抹香臭い名前に、思わず拍子抜けしてしまいました。

中国の古書の 『 山海経(海外東経) 』 に次のような一節があるそうです。

日出ずる所の東海にあるという神木を扶桑といい、その木のある所を扶桑国という

扶桑 』 は仏桑華の別称といいますから、山海経が説く 『 神木の扶桑 』 はハイビスカス”のことのようです!? だとするならば、『 扶桑国 』 は、大和ではなく、琉球のことかも知れませんね!?



どんな本だったか忘れてしまいましたが、沖縄のハイビスカスに関する古い話を読んだことがあります。

沖縄南部では、桑の葉に似た葉を持つハイビスカスのことを 『 後生花 』 と呼び、亡くなった人の 後生の幸福を願って墓地の一角に植える風習があったというのです

『 仏桑華 』(ハイビスカス)の由来は、中国の古書の 『 扶桑国の神木 』から来たものなのか? それとも、琉球民話の 『 後生花 』 に由るものなのか? あれこれと想像するばかりで、ハイビスカスの和名の 『 仏桑華 』 の由来は、結局、何一つ分かりませんでした。

ハイビスカスの種類は、雑種を含めれば数千種類に及ぶと聞きますが、バンコクのベンジャギティ公園で見かけたのは僅かに10種類でした。

僕が子供の頃、何処かで見て強い印象を受けた憶えのある、“ 裂けて反り返った花弁が下を向いて咲く ” 風鈴仏桑華 』(ハイビスカス) の姿を探し求めましたが・・・何処にも見当たりませんでした。

ハイビスカスの花の咲く生垣の前で、カメラのレンズを花弁に接近させて手撮りする僕を見つめていたタイの子供が言いました。


ชบาหนูสวย แต่รูปจูบไม่หอม
チャバーヌー スアイ、テー ル-プ チ゛ュープ マイ ホーム  
小さいハイビスカスの花は綺麗、だけど、接吻するくらいに鼻をくっつけても、ちっとも匂わないね

どうやら、タイの子供たちにとっても、ハイビスカスの花は余り価値の高い花ではないようです。