毎年11月頃、タイ北部の高原を訪れると、山の斜面を黄色に染める 『 ブア・トーン』(山向日葵)を心行くまで満喫することができます。下の写真は、ラムパーン県メーモのブア・トーン高原を訪れた時の写真です。


ブア・トーン高原とブア・トーンの花 ทุ่งบัวตอง ดอกใม้บัวตอง tung bua toong le dook bua toong

タイの秘境と呼ばれるメーホーンソーン県のドーイ・メーウーコーの斜面に咲き乱れるブア・トーンの眺めも天下一品と聞いていますが・・・未だ訪れたことがありません。

同じく11月頃、タイ中部のロッブリの地では、黄金色の大輪を太陽に向けて咲き誇る向日葵の花軍団(下写真)を眺めることができます。道路沿いの畑や、汽車の鉄路沿いに広がる向日葵の世界は、まるで黄金の絨毯を見るが如きと称えても、誉め過ぎではないように思います。


ロッブリーの向日葵の花 ดอกทานตะวันที่ลพบุร dook thaan tawan thii lopburii

いつもの如く、枕言葉が長くなってしまいました。

先日、数人のタイ人家族御一行と、ラーマ九世公園で遊ぶ機会がありました。広大な公園の中心に、大きな池が配置され、その周りを広大な芝地が取り巻いています。そして、芝地の回りには、熱帯性の木々、艶やかな花木、そして、深緑が眩しい観葉植物等がふんだんに植え込まれています。


ラーマ九世公園内の光景

ところで、皆さん、高原や野原に遊びに出かけた時、突然!尿意や便意を催して困った事がありませんか?自然環境に恵まれた場所は、押し並べて、用足しの設備が乏しいと相場が決まっています。ラーマ九世公園にもトイレ設備はあるのでしょうが、なにせ広すぎて勝手が分かりません。


ラーマ九世公園内の芝地で歓談する人々

芝地に座って、御菓子を頬張ったり、ビールやジュースを飲んで歓談していると、タイ人女性が騒ぎ始めました。どうも、小母さんの一人が尿意を催したらしいのです。しかし、生憎と近くにトイレらしき建物は見当たりません。

友人 『 貴女はいつもそうなのだから、本当に困っちゃうよ 』
本人 『 だから、私は来たくなかったのよ!』
友人 『 あの花畑の中で用足しするしかないわ 』
本人 『 アー、嫌だよ・・・』
友人 『 馬鹿!贅沢なこと言ってんじゃ無いよ!』
本人 『 アー、泣きたいよ・・・』
友人 『 走って花畑の向こうに行きな!』

小母さんは、年甲斐もなく、恥ずかしそうに小走りして、ブーゲンビリアの花とストレリチアの花が咲き並ぶ向こう側に姿を隠しました。


ストレリチアの花と咲き誇るブーゲンビリアの花

ブーゲンビリアとストレリチアの花の間に、なにやら標識らしきものが立っています。よく見ると、『 花摘み禁止 』(下の写真)の標識でした。


花摘み禁止を告げる標識  

花摘み禁止 』の標識に気付いた小母さんが、素っ頓狂な声を張りあげました。
『 アラマー!其処は、花摘みしては駄目なんだ 』 
โอฮอ ที่น้อนดเด็ดดอกใม้ไม่ได่เลย オーホー!ティー・ノーン・デッ・ドークマイ・マイ・ダイ.・ルーイ

それを聞いた女性達は、腹を抱えて笑い倒けながら、花畑の向こうで用足しをしている小母さんを茶化し始めました。 
花摘み禁止だよ!』 ห้ามเด็ดดอกใม้นะ ハーム・デッ・ドークマイ・ナ!

実は、『 花を摘む 』というタイ語は、“女性が野原で用を足す”ことを意味するタイ語のスラングなのです。因みに、“男性が野原で用を足す”ことを、日本では、『 雉(きじ)を撃つ 』 と言いますが、タイでは、『 兎を撃つ 』(注)と表現します。
(注)『兎を撃つ』 ยิงกระต่าย ying krataai

暫くして、花畑の向こうから、すっきりした表情で戻って来た小母さんに、仲間の小母さんが剽軽な声で告げました。
其処は、花摘みしては駄目なんだってよ 』 
ที่น้อนเด็ดดอกใม้ไม่ได่เลย ティー・ノーン・デッ・ドークマイ・マイ・ダイ・ルーイ

すると、用足しを済ました小母さんが、おどけた仕草をしながら言いました。
アラ!大変、大変!もう花を摘んじゃった後だよ、恥ずかしい! 』 
ต้ายตาย ฉนเด็ดดอกใม้แล้ว อายมากนะ taai taai chan det dookmai leeo aai maak na

漫才のような出来事を目の当たりにしながら、教科書では先ず得られないタイ語のスラングを覚えることもあるのです。このような現場で覚えた言葉は、覚える気がなくとも、覚えてしまうから不思議です。

タイの御婦人が、『 お花を摘みに行くわ 』 という事は、“ トイレに行く ”という意味ですから、紳士諸君は、『 エッツ? どんな花を摘みに行くの? 』なんて野暮な質問はしないで下さいね。

それでは、良い一日をお過ごし下さい。