《素焼きの村》
御土産用のバッグを購入した『バーン タワーイ』の店で聞き込んだのですが、この村からチョット離れてはいるけれど、車ならたいした距離ではない所に、『ハーン ゲーオ村』と呼ばれる素焼き村があるとのこと。
手元の地図に記載されていないのですが、北チェンマイ大学の近くだというので、それを目処に車を走らせると・・・『ハーンゲーオ村 หารแก้ว』の歓迎門(下左写真)を容易に見つけることができました。
左:ハーンゲーオ村の歓迎門
右:工房の前に積み重ねられた素焼きの植木鉢
タイの庶民生活に密着した『素焼き土器』は、タイ全土の彼方此方で生産されており、特にチェンマイが名産地という訳ではありません。僕が訪れた範囲内でも、バンコク近隣のモン族の多く住む『ゴ クレット』も素焼きで有名な島ですし、東北のウボン ラーチャタニーにも約200軒余りの素焼き工房の集落がありました。
しかし、『ハーンゲーオ村』は、そのような集落ではなく、数軒の工房がひっそりと軒を並べる静かな工房の集落です。
店先に積み重ねられた焼き物は100%素焼き製品です。植木鉢や庭園用の噴水を扱う工房の隣には、寺院や公園で見かけたことのある『童児の素焼き』が、『こんにちは!』と合掌(ワイ ไหว้)しています。
左:素焼きの噴水セット
右:にこやかに合掌する童児の素焼き
先ほど訪れた手工芸品村の『バーン タワーイ』もそうでしたが、『ハーン ゲーオ村』にも、観光客の姿はありませんでした。それどころか、店番をしている人の姿もなく、素焼きの大豚、仔豚、仔犬、童児だけが店先で明るい笑顔を振りまいています。
見れば見るほど質素で素朴な素焼きですが、どんな高価な陶磁器にも負けない、庶民的な屈託のなさが漂っています。こちらの気分まで明るくなるような気がします。
それにしても。人様は何処に居るのでしょうか?乾季の涼風が通り過ぎる奥の部屋で昼寝でもしているのでしょうか?
明るい笑顔の大豚、仔豚、仔犬、童児
人気のない『ハーン ゲーオ村』を後にして、チェンマイ市内へ戻るべく車を走らせていると、チェンマーイ-ハンドーン通りの交差点の向こうに、異様に大きい素焼きの壺(下写真)を見つけました。
素焼き村のランドマーク
何だろうと思いつつ、車を寄せると、『ムー バーン クルアン パン ディン パオ ムアン グン』と書かれたタイ語の看板があります。
『陶器を作っているグン町の集落』(หมู่บ้านปั้นดินเผาเมืองกุง)と言う意味ですが、この村も僕の地図には載っていません。今回は、チェンマイの観光ガイドブックを持ち合わせていないので、このような場合には栃麺棒を食ってしまいます。
展示室兼事務所
大きな壺の側のゲートを通って村内に入ると、左側に展示室を兼ねた事務所(上写真)がありました。ガラス戸を開けて声を掛けたのですが・・・何の反応もありません。
村内を縦貫する小道(下左写真)へ車を乗り入れたのですが・・・やはり人影が見当たりません。先ほどの『ハーンゲーオ村』もそうでしたが、どこの店も開店休業状態なのです。
これは一体どうしたことなのでしょうか?理由を知りたくても、問うべき人が居ないのですから御手上げです。
左:集落内を縦貫する小道
右:庭園用の素焼きの飾り壺
店によって作る素焼きの種類も異なりますが、スープ鍋(モーゲン)、土鍋(モーディン)、水壺(モーナ-ム)、蒸し鍋(モートゥン)、花瓶(ジェーガン)のような庶民の生活用品があるかと思えば、庭園用の飾り壺などの大物の素焼き製品も見られます。
飾り壺と土瓶
正門口から裏門口まで、人間が歩くよりも遅い速度で車を転がしたにも拘わらず、僅か5分足らずで裏門(下写真)に出てしまいました。それでも、人様はおろか、タイ名物の放し飼いの犬様の姿さえも見かけません。
ハーン ゲーオ村の裏門
このような閑古鳥状態がいつもの状態であれば倒産間違いなしですが、どう考えても、そんな危機が迫っている集落のようには見えません。
寧ろ、『乾季の陽 ひねもす のたり のたりかな』の如く、随分とのんびりとした雰囲気なのです。
きっと、同業者の寄り合いがあったのか、或いは、欧州のサッカー試合がTVで放映されていたのか、はたまた、僕が訪れた年末の平日が、一年間で最も閑な農閑期ならぬ商閑期だったのか?
いずれにしても、集落の小道を突き抜けただけの呆気ない訪問で終わってしまいました。