(チェンラーイのワット プラ ケーオの続きです)










プラケーオ寺院がエメラルド仏の故郷だと思い込んでいた僕に、寺院境内で知り合った男性は、伝説だと断った上で、『この寺院は、エメラルド仏の故郷でも出発点でもなく、単なる中間地点に過ぎない』と話し始めました。






















その伝説とは・・・






紀元前43年頃、インド仏教の高僧だった『ナーガセーナ テーラ』(นาคเสนเถระ)によって製作されたエメラルド仏は、インド東部のマガダ国の首都『Pataliputra』の地に300年余年に渡って安置されていたのだそうです。















後日、バンコクに戻って資料を捲って見ると、インドのマガダ国の首都だった『Pataliputra』の遺跡は、現在の『パトナー』(Patna)のクムラハール(Kumurahar)地区に残っていることが分かりました。










彼の伝説の話は続きます。






やがてマガダ国で内乱が勃発、エメラルド仏の破壊を危惧した高僧の『ナーガ セーナ テーラ』(下写真)は、エメラルド仏をセイロン(スリランカ)へと移します。



























『ナーガ セーナ テーラ師』 (出典:京都府HP)










話の途中ですが・・・






バンコクに戻ってから、彼に書いて貰ったタイ語のスペルを頼りに、『ナーガ セーナ テーラ』(นาคเสนเถระ)について調べて見て驚嘆!なんと『 ナーガ セーナ テーラ』とは、『弥蘭陀王問経 มิลินทปัญหหา』(ミリンダ王の問い)で有名な十六羅漢の中の十二羅漢である『那伽犀那尊者』(上写真)と同一人物だったのです。















『弥蘭陀王問経』(ミリンダ王の問い)とは、『 ナーガ セーナ テーラ師』がインド北部を支配していたギリシャ人のミリンダ王(下写真)を『賢者の論』で折伏して仏教に帰依させた問答集です。


















インド北部を支配していたギリシャ人のミリンダ王










更に、彼の語る伝説と、僕の調べた内容を要約して見ると・・・






セイロンで安穏な日々を過ごしていたエメラルド仏は、ビルマ王の懇請によって、西暦457年にビルマへと海上輸送されるのですが、その船が遭難して漂流、遠くカンボジアの海岸へと流されてしまいます。















当時のカンボジア王朝に於ける仏教の位置づけ低いものでした。それを慮った仏教徒は、仏教を手厚く庇護していたランナータイ王国のチェンラーイに向けて、エメラルド仏を持ち出すことに成功します。








エメラルド仏を引き受けたランナータイ王国は、盗難防止のためにエメラルド仏を漆喰で塗り固め、ワット パー イア(寺院)の仏塔内に安置するのですが・・・1434年(室町時代初期)の落雷によって、突如、その正体が暴かれる事態になることは前回のBLOGで述べました。








『ワット パー イア』(竹林寺院)の名前は、この事件を契機にして、『ワット プラ ケーオ』(聖なるエメラルド仏寺院)という名前に変わることも既に述べた通りです。















今まで知らなかった伝説の話を聞いて、今年は何が何でも、インド東部のパトナーに残るマガダ国の首都の『Pataliputra』の遺跡を訪ねて見たくなりました。












『ワット プラ ケーオ』の境内の片隅で、『沙羅双樹』の花と果実を見つけました。タイ仏教では、お釈迦様はこの樹の下で生誕・入滅されたと信じられていますので、『沙羅双樹』は聖木とされています。




















左:沙羅双樹の花の色・・・ & 右:沙羅双樹の果実










タイ仏教では、聖木の『沙羅双樹』のことを、『サーラ ランカー』(สาละลังกา)、或いは『サーラ インディア』(สาละอินเดีย)と呼びます。前者の『ランカー』はスリランカの略語です。エメラルド仏の伝説も然りですが、聖木のタイ語の名前からしても、タイ仏教がインド仏教やセイロン仏教と切っても切れない関係にあることが分かります。










最後になりましたが、植物の専門家に話しによると、『沙羅双樹』は熱帯樹であるために、日本の気候では育たないようです。従って、日本で『沙羅双樹』と呼ばれている花は、仏教で言う『沙羅双樹』とは全く異なる花のようです。










その昔、日本の僧侶が、『夏椿が沙羅双樹』だと思い込んで広く流布したのが間違いの始まりだったとか・・・平家物語の冒頭に出てくる『沙羅双樹の花の色 盛者必滅の理をあらはす』の花の色は、白色の五枚の花弁を持つ『夏椿』なのだそうです。








今日はこの辺りで閉めたいと思います。