暗闇に覆われたサンティ・キリー(平和の丘陵)の上空に満月が浮かび、現国王の母君に捧げられた仏塔と寺院をほんのりと照らし始めました。

月明かりに浮かぶ王太后の寺院と仏塔
薄暗くなった坂道を山麓へと車を走らせていると、徒歩で登ってくるバック・パッカー風の白人の男女二人連れに車を停められました。
白人 『 山頂まで、あと何キロ位あるの? 』
僕 『 車道だと500メートル位かな 』
白人 『 山頂に観光客は残っているの? 』
僕 『 もう誰もいないよ 』
彼らは、19時から夜間照明で浮かび上がる仏塔と寺院を見に行くのだそうです。それにしても、真っ暗な山道を徒歩で登るなんて、臆病者の僕にはとても真似できることではありません。彼らの蛮勇に脱帽です。
サンティ・キリー ( 平和の丘陵 ) の尾根上に延びる長細い町の出口に、なにやらチカ チカ光っている物が見えます。こんな山奥にカラオケ? と思って近づくと・・・なんと!デジタル方式の温度計でした。
『 18時17分 華氏64度 』 エッツ? タイは摂氏の筈なのに?と思っていると・・・摂氏18度の表示に変わりました。欧米人の観光客にも配慮したデジタル式温度計ですが、日本の観光地でも同じようなサービスをしているのでしょうか?

標高1,200mに備えられた華氏と摂氏を交互に表示する温度計
18℃は、日本人にとっては快適な気温ですが、タイの人々は 『 寒い! 』 と感じるに違いありません。タイ人の殆どは、温水シャワーではなく、冷水シャワーを使っています。従って、彼らが季節を意識する感覚基準は、冷水を 『 気持ち良い! 』 と感じる時は 『 暑季 』。『 冷たい! 』 と感じる時は 『 寒季 』 になります。
とっぷりと暮れた山道のクネクネ道を、右へ左へと只管に下って行きます。街路灯が殆どないために、道路の中央線や縁線を示す白線も視認できません。自分の車が照らすヘッド・ライトだけを頼りに、神経を集中して車を走らせます。先ほどの観光バスの運転手君が下山を急いでいた理由が頷けます。
暗闇の1234号線を抜け出ると、タイ最北端に通じる国道一号線です。ここから南方向に26kmも走ればチェンラーイの中心街に至ります。
時刻は20時少し前、先ずはホテルに戻ってシャワーとも思ったのですが・・・今日の無計画な旅行を終えた安堵感からか、急に腹の虫が目を覚ましてしまいました。ホテルに向かう道の途中にあった食堂に飛び込みました。

食堂の入り口と中庭
写真で見ると門構えのある立派なレストラン風に見えるかも知れませんが、中に入ると軽量鉄骨にスレート屋根を葺いた気さくな感じの簡易食堂でした。
二名のウエイターは、外国人の僕達を見て・・・『 お前が行けよ、俺、英語分からない 』・・・などと言って譲り合っています。すると、業を煮やした女性主人が、僕達のテーブルにやって来て・・・それでも外国人の僕達を意識し過ぎたのか、滅多に聞かないような丁重なタイ語で話かけてきました。
女性 『 ラップ・プラターン・アーハン・アライ・カ 』 “ 何をお召し上がりになりますか? ”
僕 『 ミー・アーハンデット・アライ・バーン・クラップ 』 “ 御奨めの食事はどんなものがありますか?
女性 『 ミー・ラーイ・ヤーン・カ 』 “ いろいろと有りますよ 』
女性 『 テー・ワー・アロイ・ティースット・クー・ソムタム・トート・ナ・カ 』“ でも、一番美味しいのは、揚げソム・タムで御座います ”
女性 『 イーク・ネナーム・パット・パック・ヘット・ホーム ・・・ 』
“ その外のお奨めとしては・・・ 』
バンコクでもそうですが、タイ女性のハキハキした振る舞いに比べて、タイ男子のなんとも頼りないこと! タイ北端の街でも同じでした。
彼女のお勧めの四品目に、焼き飯 ( カーオ・パット )を追加注文。ビールは・・・飲みたいのですが、まだホテルまでの夜間運転が控えているので我慢!!
待つこと数分、ウエイターが食事をテーブルに運んで来ました。暖かい湯気の香りが食欲を誘います。

テーブル上に揃った五品のタイ料理(左)とソム タム・トート(右)
女性主人の一番の御勧めは 『 ソム タム トート 』( 上右写真 ) ですが、緑マラコー( パパイヤ ) を薄く線のように削って揚げたものに、写真後方のソム タムのナム・チムをかけて食べます。揚げたマラコーのカリカリ音が食欲を盛りあげます。兎にも角にも、滅茶苦茶に美味しかった!
タイ北部で栽培されたトマトをふんだんに使用した 『 トム ヤム クン 』 ( 下写真 ) も絶品でした。タイ国内を旅行する時は、東西南北、何処に行っても、必ず、トム・ヤム・クンを食することにしていますが、このお店の 『 トム・ヤム・クン 』 は、酸味、辛味、秘伝のスパイス味、エノキ茸、袋茸、舞茸、そして、トマト味を加えたコッテリ味の断トツに美味しいスープでした。正直に言いますと、御代わりをしてしまいました。

絶品だったトム・ヤム・クンとパット・パック・ヘット・ホーム
新鮮な椎茸をふんだんに使った 『 パット・パック・ヘット・ホーム 』 ( 上写真 ) も忘れられない味でした。バンコクだと野菜の中に椎茸がある感じですが、この店の味は、正に、『 椎茸 』 の味です。
料理の味の悪さをパクチー ( コリアンダ ) を振りかけて目先を誤魔化すことを、『 パクチー・ローイ・ナー 』 と言いますが、この店の料理は、パクチーがタイの真性の味を倍化してくれました。

ヤム ウン セン
店先まで見送ってくれた女性主人と女性調理人に、心からの感謝を述べてお別れをしました。
標高1,500mのサンティ・キリー ( 平和の丘陵 ) で美味しいオゾンを胸一杯に吸い込み、チェンライ市内で絶品の味を堪能した素晴らしき一日となりました。
次回は、エメラルド仏が最初に発見された寺院、ワット・プラゲーオを訪れた時のことを書こうと思います。


月明かりに浮かぶ王太后の寺院と仏塔
薄暗くなった坂道を山麓へと車を走らせていると、徒歩で登ってくるバック・パッカー風の白人の男女二人連れに車を停められました。
白人 『 山頂まで、あと何キロ位あるの? 』
僕 『 車道だと500メートル位かな 』
白人 『 山頂に観光客は残っているの? 』
僕 『 もう誰もいないよ 』
彼らは、19時から夜間照明で浮かび上がる仏塔と寺院を見に行くのだそうです。それにしても、真っ暗な山道を徒歩で登るなんて、臆病者の僕にはとても真似できることではありません。彼らの蛮勇に脱帽です。
サンティ・キリー ( 平和の丘陵 ) の尾根上に延びる長細い町の出口に、なにやらチカ チカ光っている物が見えます。こんな山奥にカラオケ? と思って近づくと・・・なんと!デジタル方式の温度計でした。
『 18時17分 華氏64度 』 エッツ? タイは摂氏の筈なのに?と思っていると・・・摂氏18度の表示に変わりました。欧米人の観光客にも配慮したデジタル式温度計ですが、日本の観光地でも同じようなサービスをしているのでしょうか?


標高1,200mに備えられた華氏と摂氏を交互に表示する温度計
18℃は、日本人にとっては快適な気温ですが、タイの人々は 『 寒い! 』 と感じるに違いありません。タイ人の殆どは、温水シャワーではなく、冷水シャワーを使っています。従って、彼らが季節を意識する感覚基準は、冷水を 『 気持ち良い! 』 と感じる時は 『 暑季 』。『 冷たい! 』 と感じる時は 『 寒季 』 になります。
とっぷりと暮れた山道のクネクネ道を、右へ左へと只管に下って行きます。街路灯が殆どないために、道路の中央線や縁線を示す白線も視認できません。自分の車が照らすヘッド・ライトだけを頼りに、神経を集中して車を走らせます。先ほどの観光バスの運転手君が下山を急いでいた理由が頷けます。
暗闇の1234号線を抜け出ると、タイ最北端に通じる国道一号線です。ここから南方向に26kmも走ればチェンラーイの中心街に至ります。
時刻は20時少し前、先ずはホテルに戻ってシャワーとも思ったのですが・・・今日の無計画な旅行を終えた安堵感からか、急に腹の虫が目を覚ましてしまいました。ホテルに向かう道の途中にあった食堂に飛び込みました。


食堂の入り口と中庭
写真で見ると門構えのある立派なレストラン風に見えるかも知れませんが、中に入ると軽量鉄骨にスレート屋根を葺いた気さくな感じの簡易食堂でした。
二名のウエイターは、外国人の僕達を見て・・・『 お前が行けよ、俺、英語分からない 』・・・などと言って譲り合っています。すると、業を煮やした女性主人が、僕達のテーブルにやって来て・・・それでも外国人の僕達を意識し過ぎたのか、滅多に聞かないような丁重なタイ語で話かけてきました。
女性 『 ラップ・プラターン・アーハン・アライ・カ 』 “ 何をお召し上がりになりますか? ”
僕 『 ミー・アーハンデット・アライ・バーン・クラップ 』 “ 御奨めの食事はどんなものがありますか?
女性 『 ミー・ラーイ・ヤーン・カ 』 “ いろいろと有りますよ 』
女性 『 テー・ワー・アロイ・ティースット・クー・ソムタム・トート・ナ・カ 』“ でも、一番美味しいのは、揚げソム・タムで御座います ”
女性 『 イーク・ネナーム・パット・パック・ヘット・ホーム ・・・ 』
“ その外のお奨めとしては・・・ 』
バンコクでもそうですが、タイ女性のハキハキした振る舞いに比べて、タイ男子のなんとも頼りないこと! タイ北端の街でも同じでした。
彼女のお勧めの四品目に、焼き飯 ( カーオ・パット )を追加注文。ビールは・・・飲みたいのですが、まだホテルまでの夜間運転が控えているので我慢!!
待つこと数分、ウエイターが食事をテーブルに運んで来ました。暖かい湯気の香りが食欲を誘います。


テーブル上に揃った五品のタイ料理(左)とソム タム・トート(右)
女性主人の一番の御勧めは 『 ソム タム トート 』( 上右写真 ) ですが、緑マラコー( パパイヤ ) を薄く線のように削って揚げたものに、写真後方のソム タムのナム・チムをかけて食べます。揚げたマラコーのカリカリ音が食欲を盛りあげます。兎にも角にも、滅茶苦茶に美味しかった!
タイ北部で栽培されたトマトをふんだんに使用した 『 トム ヤム クン 』 ( 下写真 ) も絶品でした。タイ国内を旅行する時は、東西南北、何処に行っても、必ず、トム・ヤム・クンを食することにしていますが、このお店の 『 トム・ヤム・クン 』 は、酸味、辛味、秘伝のスパイス味、エノキ茸、袋茸、舞茸、そして、トマト味を加えたコッテリ味の断トツに美味しいスープでした。正直に言いますと、御代わりをしてしまいました。


絶品だったトム・ヤム・クンとパット・パック・ヘット・ホーム
新鮮な椎茸をふんだんに使った 『 パット・パック・ヘット・ホーム 』 ( 上写真 ) も忘れられない味でした。バンコクだと野菜の中に椎茸がある感じですが、この店の味は、正に、『 椎茸 』 の味です。
料理の味の悪さをパクチー ( コリアンダ ) を振りかけて目先を誤魔化すことを、『 パクチー・ローイ・ナー 』 と言いますが、この店の料理は、パクチーがタイの真性の味を倍化してくれました。

ヤム ウン セン
店先まで見送ってくれた女性主人と女性調理人に、心からの感謝を述べてお別れをしました。
標高1,500mのサンティ・キリー ( 平和の丘陵 ) で美味しいオゾンを胸一杯に吸い込み、チェンライ市内で絶品の味を堪能した素晴らしき一日となりました。
次回は、エメラルド仏が最初に発見された寺院、ワット・プラゲーオを訪れた時のことを書こうと思います。