前回は、観光地としての『黄金のトライアンブル』の話を書くつもりでしたが、キーボードを打つ指が勝手に走って麻薬の話になってしまいました。
本日は、今や観光地として変貌を遂げた『チェンセーン』の話に戻したいと思います。
『黄金の三角地帯』を俯瞰できるタイ側領土の狭いスペースに、南伝仏教の高僧が儀式の時に持つ『パットヨット พัดยศ』(長柄団扇)に似た六本の黄金色の構築物が建っていました。その中間には、仏陀を運ぶ(?)二頭の白像が行儀よく並立しています。
太陽に輝く黄金の『パットヨット』と二頭の白像
『パットヨット』(?)の表面には黄金色の多種多様な神々が彫りこまれていました。
白像に乗ったインド・バラモン教の『プラ・イン』、別名『インドラ神』ですが、日本では『帝釈天』の名で知られていますね。(下写真①)
人気お守りのジャット・カームに刻まれたヴィシュヌ神の化身のラーマ・テープと思いきや・・・よく見ると立膝が右ではなく左でした。(下写真②)
ビルマ風の御化粧をした仏陀もいます。(下写真③) その側には、ヒンドゥー教徒やタイの仏教徒が篤く信仰する白像のプラ・カネート(ガネーシャ神)もいます。(下写真④)
タイ人の象師(モー・タオ หทอเต้า)、芸術家や芸術大学の学生は、プラカネート(ガネーシャ神)を崇高な神として敬っています。因みに、タイ国教育省・芸術局の紋章もプラカネート(ガネーシャ神)だったと記憶しています。(下右写真④)
徳がある人間か否かを確認する大きなコーン ฆ้อง(ドラ)もありました。ドラの表面は、沢山の参拝者に撫でられて、既にペンキが剥がれて地の真鍮が光り輝いています。(下左写真)
ドラ(コーン ฆ้อง)にタイ語で次のように書かれていました。
ループ・コーン・スィアン・ダン トゥー・ワー・ミー・ブン
ลูบฆ้องเสียงดัง ถือว่ามีบุญ
日本語訳:ドラを撫でて音が出れば、徳があると見なされます。
つまり、ドラを撫でて音が出なければ、まだ徳が足りないことになるのですが、撫でるだけで音なんか出る訳がありませんよね。
それを見越して、側らの四つん這いの象の腹下を潜り抜ければ、徳を積むことができるということなのですが、タイ語を読めない西洋人はウロ・ウロしていました。(下写真)
象の腹下を抜けて徳を得る
タイには曜日を表す色、曜日を表す仏陀、曜日を表す寺院(北部)を敬う習慣が有るのは承知していましたが、なんと!曜日を表す大口を開けた獅子があるのには驚きました。
タイ人は、係員の『お賽銭を獅子の口に入れてください!徳を積んでください!』(โยนเหลียญใส่ปากปึ่เซียะ)という呼びかけに応じて、自分の曜日に当たる獅子の口の中に小銭を投じていました。
右上写真では判然としませんが、左端の桃獅子は火曜日(星期二)、中央の黄獅子は月曜日(星期一)、右端の赤獅子は日曜日(星期日)と書いてあります。
その側らでは、高地民族の子供達が、外国人に歌を聞かせたり、写真撮影(20~50バーツ)をさせようとして待ち構えています。
『黄金の三角地帯』を見下ろせる狭いスペースの中に、ありとあらゆるものが渾然一体になっている様子は、チョット大袈裟かも知れませんが、タイ仏教文化の縮図を見る思いがしませんか。
タイ文化を理解するには、一つ一つの宗教を別々に捉えるのではなく、十把一絡げして一つの宗教文化として考える方が早道のような気がしないでもありません。
なんとなれば、『精霊信仰』、『バラモン教』、『ヒンドゥー教』、そして『南伝仏教』が、互いに反目することなく、渾然一体となって共生しているのがタイの仏教なのですから・・・
今日こそは、楽しい観光記事を書こうと思って書き始めたのですが、やはり横道に逸れてしまいましたね・・・本当に申し訳ありません。
次回こそは・・・努力したいと思っています。