バンコクの郊外にある仏教寺院のワット・マハー・ブットの境内に、黒い肌の子供の人形が飾られていました。 仏教寺院に、何故に黒い肌の人形?と思いつつ眺めていると、母親と女児が『 黒い肌の人形 』 について話しているのが耳に入りました。

タイに魅せられてロングステイ
お母さん、この黒い子供は誰なの?

娘   『 この黒い子供は誰? 』(上写真)
母親 『 この黒い子供はコイ人なのよ 』
娘   『 コイ人って誰なの? 』
母親 『 昔、マレー半島のパッタルンに住んでいた人よ 』
娘   『 フーン? 』
母親 『 この子供はね、法螺貝から生まれたのよ 』
    『 生まれた時は、黒い肌ではなく、目映いくらい白い肌の赤ちゃんだったの 』
    『 だから“金のように目映い法螺貝王子”と呼ばれていたの 』(下写真)


タイに魅せられてロングステイ
自分の生まれた法螺貝(巻貝?)の上に座る赤ちゃん時代の法螺貝王子

娘   『 どうして白い肌の赤ちゃんが黒い肌になってしまったの? 』
母親 『 身分を隠すために、コイ人の縫いぐるみを着ていたのよ 』
娘   『 どうして身分を隠すの? 』
母親 『 王女様が貝殻を生み落としたので、宮殿から追放されたの 』
    『 だから、赤ちゃん王子は、身分を隠すために黒いぬいぐるみを着ていたの 』


タイに魅せられてロングステイ
お互いに好意を抱いていたロッジャナー姫と黒い肌の法螺貝王子

娘   『 黒い赤ちゃん王子と一緒にいる女の人は誰? 』
母親 『 サーモン王 สามล のお姫様のロッジャナー姫よ 』
娘   『 ロッジャナー姫は、黒い赤ちゃん王子と仲が良かったのね 』
母親 『 彼女は、黒い肌の子供が、法螺貝王子だということを見抜いていたのよ 』


タイに魅せられてロングステイ
成長したロッジャナー姫(右)と黒いぬいぐるみを脱いだ法螺貝王子(左)

娘   『 この二人は誰なの? 』(上写真)
母親 『 大きくなったロッジャナー姫と法螺貝王子よ 』
子供 『 どうして黒い人から白い人になったの? 』
母親 『 ロッジャナー姫のために、黒い縫いぐるみを脱いだのネ 』
    『 ホラ、法螺貝王子の右手に、脱いだ黒いぬいぐるみが見えるでしょ 』


 右手に脱いだ黒い縫いぐるみを持つ法螺貝王子 

母親 『 ロッジャナー姫は、周囲の反対を押し切って法螺貝王子と結婚したの 』
娘   『 フーン!? 』
母親 『 めでたし、めでたしネ! 』
娘   『 でも・・・法螺貝王子(巻貝王子)のお母さんはどうなったの? 』
母親 『 最後にはね、両親にも巡りあって幸せに暮らすのよ! 』
娘   『 チョーク・ディー・チ゛ン・チ゛ン 』(本当に良かったネ)
母親 『 人はね、外見だけでは、分からないことが多いのネ 』


以上がそれとなく耳にした『 金の法螺貝物語 』の粗筋です。これはタイに伝わる子供向けの有名な劇詩のようですが、僕は未だに読んだことがありません。寺院からの帰途、自宅近くの本屋に寄って、解説の頁だけを立ち読みしてみました。

それによると、お母さんが話題にしていた劇詩は、現王朝のラーマ二世王(江戸時代末期)が自ら綴った子供向けの劇詩(クローン詩)でした。 マレー半島の南部に住むコイ人(ゴ・パー人 เงาะป่า )は、モン・クメール系の言語を使っていたようです。 

コイ人の身体的特性は、短躯で黒肌、頭髪はちじれ髪、吹き矢で鳥獣を捕らえて生計を立てる狩猟民族だとありました。まさに、法螺貝王子が身の危険を避けるために身に纏っていたぬいぐるみそのものです。 


ロッジャナー姫の『 ロッジャナー รจนา 』は、美しいと言う意味があることを初めて知りました。古都アユタヤー郊外に多くの日本企業が入っている『 ロッジャナー工業団地 』があるのは知っていましたが、此の言葉にそんな意味合いがあったとは・・・勉強になりました。

因みに、金の法螺貝王子(金の巻貝王子?)の正式名は、『 サン・トーン  สังข์ทอง 』です。日本で法螺貝と言えば『 山伏 』を想い出しますが、タイでは、バラモン僧が儀式で吹き鳴らすのが『 法螺貝 』、結婚式の時に聖水を汲んで新郎新婦に注ぐ時に用いるのも『 法螺貝 』です。タイでは『 法螺貝 』を吉兆の具として重要視しているようですね。

今日は、タイの子供向け劇詩物語の『 金の法螺貝王子物語 』を紹介しましたが・・・・・・
子供向けにしては少し難し過ぎるような『 劇詩 』のように思いました。 日本にも子供向けの『 劇詩 』ってありましたっけ?