僕が小学生の頃、バナナは、高価で贅沢な舶来果物でした。中国山脈のど真ん中に住んでいた我が家では、滅多に食べられる代物(しろもの)ではありませんでした。
麻疹(はしか)から回復して床上げをした時に、今は亡き母親から『 良く頑張ったネ! 』と褒められて、僅か一本のバナナを貰ったことを憶えています。その時の甘い感覚が忘れられず、『 また病気になって、バナナを食べたい! 』と真剣に思いつめたものでした。
青年になって、南洋材(ラワン材)や北洋材の原木の積み取りの仕事をしていた折に、フィリピン(ミンダナオ島)や、マレーシア(ボルネオ島)を何度も訪れたました。その時に、プランテーションでたわわにに実っていたバナナの房やパイナップルを見た時、忽然と幼児体験が蘇り、思わず心の涙を零しそうになったものでした。
今の時代、バナナほどありふれた果物はないかも知れません。日本で売っているバナナは、熟すと外皮が黄色に変色する『 香りバナナ 』(グルアイ・ホーム กลัวยหอม )と呼ばれる品種です。

日本で最も普及している『 香りバナナ 』 タイの普及バナナ『グルアイ・ナム・ワー』
一方、タイでポピュラーなバナナは、外皮が角ばった『 グルアイ・ナムワー กลัวยน้ำว้า 』と呼ばれる品種です。タイ人は、このバナナを、焼きバナナ、油揚げバナナ、煮バナナなどに加工して食べるのが一般的です。
バナナの木は、通常は12ケ月~15ケ月で実が熟成すると枯れてしまいますが、再び根元から新芽が出て肉穂花序(ปลี)が付き、やがてバナナのの房(หวี)が段々状になって枝(เครือ)を形成します。必要に応じて、種子で繁殖させたり、切った茎を挿し木して増やしたりします。
バナナの肉穂花序(蕾) 熟成したバナナ
バナナは、食用以外にも、実に汎用性に富んでいます。バナナの葉(バイ・トーン ใบตอง )は、包装や容器として利用されます。、茎の表皮(ガープ กาบ )は、紐や紙としても転用されています。
タイのお寺の庭で、バナナの肉穂花序である『 蕾 』(プリー ปลี )をじっくりと見る機会がありました。肉穂花序(蕾)は、料理をあしらう添え物として重宝されています。例えば、タイ料理のパッタイの妻として、縦に切り揃えた蕾が添えられているのを御覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
バナナの『 茎 』を、女性の足の美しさに譬えることがありますが、バナナの『 肉穂花序 』を女性の脹脛( プリー・ノーン ปลีน่อง )に喩えたり、タイ上座仏教の仏塔の尖頭部( プリー・ヨート ปลียอด )に譬えることもあります。

バナナの肉穂花序(蕾) タイ上座仏教の仏塔の尖頭部
タイの大学でタイ文化を齧った時、バナナに関するタイ語の慣用句(サムヌアン・タイ สำนวนไทย )を教わりました。タイ人のバナナに対するイメージは、『 ありふれて安っぽい 』とか、
『 容易で簡単 』ということに通じるようです。バナナ( kluai กลัวย )に関連したタイの慣用句を列挙してみましょう。
① 『 二束三文 』 thuuk pen kluai-nam-waa ถูกเป็นกลัวยน้ำว้า
② 『 ありふれたもの 』 pen kluai -nam-waa เป็นกลัวยน้ำว้า
③ 『 おちゃのこさいさい 』 kluai kluai กลัวย ๆ
④ 『 バナナを剥いて口に入れるよりも簡単 』 kwaa pook kluai khao paak sia iik
กว่าปอกกลัวยเข้าปากเสียอีก
タイ人から見たバナナの位置づけは、随分と厳しいものがありますね。上記の慣用句の内、①と②は、日本で人気の高い『 香りバナナ 』 klua- nam-waa の価値の低さを揶揄しているのですが、③と④は、外皮を剥けば直ぐに食べられるバナナを easy として捉えた評価だと思います。
長距離運転をするときの僕は、運転をしながら腹拵えするには、バナナが最高の食べ物だと思っています。まさに、タイ語で言うところの kluai kluai กลัวย ๆ ( おちゃのこさいさい ) と言ったところです。
バナナが大好物の家象や野象は、外皮付きのバナナを、鼻先でくるると巻いてから、口の中に放り込んで丸呑みします。外皮を剥いて食べる人間よりも、もっと『 おちゃのこさいさい 』
kluai kluai กลัวย ๆ ですね。
麻疹(はしか)から回復して床上げをした時に、今は亡き母親から『 良く頑張ったネ! 』と褒められて、僅か一本のバナナを貰ったことを憶えています。その時の甘い感覚が忘れられず、『 また病気になって、バナナを食べたい! 』と真剣に思いつめたものでした。
青年になって、南洋材(ラワン材)や北洋材の原木の積み取りの仕事をしていた折に、フィリピン(ミンダナオ島)や、マレーシア(ボルネオ島)を何度も訪れたました。その時に、プランテーションでたわわにに実っていたバナナの房やパイナップルを見た時、忽然と幼児体験が蘇り、思わず心の涙を零しそうになったものでした。
今の時代、バナナほどありふれた果物はないかも知れません。日本で売っているバナナは、熟すと外皮が黄色に変色する『 香りバナナ 』(グルアイ・ホーム กลัวยหอม )と呼ばれる品種です。


日本で最も普及している『 香りバナナ 』 タイの普及バナナ『グルアイ・ナム・ワー』
一方、タイでポピュラーなバナナは、外皮が角ばった『 グルアイ・ナムワー กลัวยน้ำว้า 』と呼ばれる品種です。タイ人は、このバナナを、焼きバナナ、油揚げバナナ、煮バナナなどに加工して食べるのが一般的です。
バナナの木は、通常は12ケ月~15ケ月で実が熟成すると枯れてしまいますが、再び根元から新芽が出て肉穂花序(ปลี)が付き、やがてバナナのの房(หวี)が段々状になって枝(เครือ)を形成します。必要に応じて、種子で繁殖させたり、切った茎を挿し木して増やしたりします。


バナナの肉穂花序(蕾) 熟成したバナナ
バナナは、食用以外にも、実に汎用性に富んでいます。バナナの葉(バイ・トーン ใบตอง )は、包装や容器として利用されます。、茎の表皮(ガープ กาบ )は、紐や紙としても転用されています。
タイのお寺の庭で、バナナの肉穂花序である『 蕾 』(プリー ปลี )をじっくりと見る機会がありました。肉穂花序(蕾)は、料理をあしらう添え物として重宝されています。例えば、タイ料理のパッタイの妻として、縦に切り揃えた蕾が添えられているのを御覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
バナナの『 茎 』を、女性の足の美しさに譬えることがありますが、バナナの『 肉穂花序 』を女性の脹脛( プリー・ノーン ปลีน่อง )に喩えたり、タイ上座仏教の仏塔の尖頭部( プリー・ヨート ปลียอด )に譬えることもあります。


バナナの肉穂花序(蕾) タイ上座仏教の仏塔の尖頭部
タイの大学でタイ文化を齧った時、バナナに関するタイ語の慣用句(サムヌアン・タイ สำนวนไทย )を教わりました。タイ人のバナナに対するイメージは、『 ありふれて安っぽい 』とか、
『 容易で簡単 』ということに通じるようです。バナナ( kluai กลัวย )に関連したタイの慣用句を列挙してみましょう。
① 『 二束三文 』 thuuk pen kluai-nam-waa ถูกเป็นกลัวยน้ำว้า
② 『 ありふれたもの 』 pen kluai -nam-waa เป็นกลัวยน้ำว้า
③ 『 おちゃのこさいさい 』 kluai kluai กลัวย ๆ
④ 『 バナナを剥いて口に入れるよりも簡単 』 kwaa pook kluai khao paak sia iik
กว่าปอกกลัวยเข้าปากเสียอีก
タイ人から見たバナナの位置づけは、随分と厳しいものがありますね。上記の慣用句の内、①と②は、日本で人気の高い『 香りバナナ 』 klua- nam-waa の価値の低さを揶揄しているのですが、③と④は、外皮を剥けば直ぐに食べられるバナナを easy として捉えた評価だと思います。
長距離運転をするときの僕は、運転をしながら腹拵えするには、バナナが最高の食べ物だと思っています。まさに、タイ語で言うところの kluai kluai กลัวย ๆ ( おちゃのこさいさい ) と言ったところです。
バナナが大好物の家象や野象は、外皮付きのバナナを、鼻先でくるると巻いてから、口の中に放り込んで丸呑みします。外皮を剥いて食べる人間よりも、もっと『 おちゃのこさいさい 』
kluai kluai กลัวย ๆ ですね。