バンコクのプラ・カノン地区のオンヌット通りソイ7の最深部に、幽霊物語の『 メー・ナーク 』で有名な寺院があります。 アユッタヤー王朝時代の後期(江戸時代後期)、この寺院を建立したマハー・ブット僧侶の名前を採って『 ワット・マハー・ブット 』と命名されています。

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ワット・マハー・ブット仏教寺院の本堂と鐘楼  

『 幽霊物語 』なんて全く興味の無い僕ですが、タイの大学でタイ語を勉強している時に、幽霊物語のDVDを半強制的に見せられたことがあります。

大学の狙いは、僕たちのタイ語の聴解力を高めることにあったのでしょうが、映画の筋書きが余りにも単純なので、タイ語の聴解力の低かった僕でも、そこそこに理解できたのを憶えています。

僕の記憶によれば、映画の粗筋は次ぎのようなものでした。
隣国ビルマとの戦争に明け暮れていたアユタヤー時代後期、結婚したばかりの初々しい若夫婦がプラ・カノン村に住んでいました。


やがて、若者は軍隊に徴集されることになり、愛する妻をプラ・カノン村に残して戦場に赴くことになるのですが、その時、新妻のお腹には、二人の間の愛の結晶が宿っていました。

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奉納されていたメーナークの肖像画とお腹の中で亡くなった胎児の塑像

夫が戦争から戻るのを首を長くして待ち侘びていた身重の妻ですが、結局、酷い難産のために、身ごもった子と共に亡くなってしまいます。しかし、夫への未練心が断ち切れない地下の妻は、幽霊となって留守宅に残り、夫の帰宅を待ち続けます。

戦争から無事生還した夫は、妻が幽霊だとは知らずに、幸せな夫婦生活を再会します。やがて、夫を諫めようとする村民が次々と怪死する事件が勃発。

一連の事件が幽霊となった妻の仕業だと知った高僧のソムデット・トーが、彷徨える妻の魂を鎮め、壺の中に封じ込めてしまいます・・・というのが映画の粗筋だったと思います。


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彷徨えるメー・ナークの魂を鎮めたソムデット・トー僧侶  (ワット・マハー・ブット寺院)

メー・ナークの彷徨える魂を鎮めたとされるソムデット・トー僧侶の話から、 『 ワット・マハー・ブット寺院 』は、『 願い事を叶えてくれる寺 』として、タイ国民から崇められ、現在も参拝客が絶えません。

更に、ソムデット・トー僧侶が、ゴ・クレットの『 ワット・パイロム 』で修業をしていたことから、多くの参拝客が集まると聞いています。


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メー・ナークに願い事を祈る参拝客  (ワット・マハー・ブット寺院)  

『 ワット・マハー・ブット 』の境内の奥まった場所に、メー・ナークのために建てられた小さな祠があります。メー・ナークと胎児に、タイ・ドレスや幼児服を献上したり、彼女の塑像に金箔を張ったりする信者でとても賑わっています。

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メー・ナークに金箔を貼り、何がしかの御布施をする参拝客

メー・ナークの塑像の前には、透明の棺桶のような箱があり、その中には胎児のミイラのような塑像が眠っています。棺桶の中には、現金、人形、玩具、幼児服、などが納められ、棺桶の外には、一人寂しく眠る胎児の仲間を誘うかのように手招きをする『 デック・クアック 』の子供人形が所狭しと並んでいました。

単なる幽霊物語なのか? 実話なのか? 僕には分かりようもありませんが、いずれにしても、タイ人のお爺さん、お婆さん、小父さん、小母さん、若い男女の恋人同士、高校生、中学生、小学生、中には幼稚園生までもが、不幸な女性に祈りを捧げるために列を成しているのです。 この 『 信仰 Power 』 は何処から湧いてくるのでしょうか?

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僕をジロリト睨んだメー・ナークの塑像

日本では四谷怪談の 『 お岩さん 』 の話がありますが、国民的人気度においては 『 メー・ナーク 』の方に軍配があがりそうですね。