タイの寺院は、大きく分けて石造建築と木造建築との二種類があります。
前者の石造建築に代表されるものは、タイ国内に多く残る寺院遺跡ですが、イサーン地区のクメール寺院の石造遺跡には価値あるものが多いようです。


どちらかというと、個人的には、クメール遺跡に代表される石造建築を見て回るのが好きなのですが、最近は、ほんの少しですが、木造建築の寺院にも興味が湧いてきました。

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タイ上座部仏教寺院のナージュアの部分 (バンコク:ラーチャナプラ寺院)

タイ国内全土に点在する上座部仏教の寺院は、金ピカに飾りたてられた木造建築が圧倒的に多いのですが、今日は、タイ仏教寺院建築の特徴とされる 『 ナー・ジュア 』หน้าจั่ว の特徴的な装飾について触れて見たいと思います。

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タイ上座部仏教寺院のナージュアの部分  (バンコク:中華街の娼婦寺)
最頂部:チョー・ファー、 稜線部:ナーガ蛇王の胴体、稜線部の突起物:大雅(鳥)の尻尾


タイの仏教寺院は、幾層にも積み上げられた急勾配の屋根の形状で知られていますが、その屋根の両端の『 人文字形 』に拡がる部分を 『 ナー・ジュア 』 と言います。

タイ上座部仏教寺院の屋根の突端部分には、『 チョー・ファー 』ช่อฟ้า と呼ばれる神聖な棟飾りが乗せられています。日本建築だと魔除けを意味する『 鬼瓦 』が乗っている箇所ですが、『 チョー・ファー 』は単なる魔除けではなく、極めて神聖なものとして崇められています。

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バンコク中華街の娼婦寺の窓枠飾りのチョー・ファー

新築寺院の落成式では、『 ヨック・チョー・ファー 』 ยกช่อฟ้า、つまり、チョー・ファーの上棟儀式を、王族、高僧、県知事などのお偉方を招聘して仰々しく執り行われることが多いようです。 

最近の 『 ヨック・チョー・ファー儀式 』(上棟式)は、主賓が電動式のボタンを押しさえすれば、チョー・ファーがスル・スルと吊り上がり、寺大工が屋根の頂部に取り付けて終了。その時点から、正式な仏教寺院として認められることになるようです。つまり、チョー・ファーのない寺院は、単なる建築物に過ぎないということですね。


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稜線に長く連なる金ピカは、ナーガ蛇王の胴体を意味します。

最頂部の『 チョー・ファー 』から屋根の下端に連なる金ピカの鱗状の装飾は、お釈迦様が悟りを開かれる時の守護者である『 ナーガ蛇王 』の胴体とされています。 お釈迦様の守護者である『 ナーガ蛇王 』は、屋根の稜線だけではなく、タイの寺院境内の彼方此方に重要な装飾飾りとして取り入れられています。

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礼拝堂の階段の手摺として横たわるナーガ蛇王  タイ北部:プラケーオドーンタオ寺院

屋根の稜線部に連なる『 ナーガ蛇王 』の胴体の上にある突起物は、インド神話の創造上の高貴な水鳥の『 ホン 』(大雁)の尻尾の羽根(ハーン・ホン) をイメージ化したものです。
『 ホン 』(大雁)はブラ・プロム神(大梵天)の乗物としても有名ですので、御存知の方も多いのではないでしょうか。


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屋根の稜線部に見えるホン(大雁)の尻尾

タイの寺院建築に関しては全くの門外漢ですが、せっかくタイに在住しているのですから、漫然と寺院巡りをするのではなく、せめて、初級編以前の基礎編の勉強をしてみたいと思っているのですが・・・僕のレベルにあった本がなかなか見付かりません。

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プラ・プロム神の乗物とされるホン(大雁)

『 チョー・ファー 』 の形は、神や天使が住む天界園に生存する創造上の鳥の頭の形をモチーフにしたものですが、地方によっては、『 チョー・ファー 』ではなく、創造上の水鳥 『 ホン 』  หงส์ (大雁)そのものを、『 ナー・ジュア 』の頂点に取り付けている寺院もあると聞きますが・・・残念ながら、僕はまだ見たことがありません。