西洋人が好むことによって商品価値が上がったタイの植物といえば、『 ダーラー 』 ดาหลา と呼ばれる生姜科に属する花だろうと思います。『 ダーラー 』とは、『 大きく花開いて繁茂する花 』を意味するタイ語です。

此の植物の和名は、不勉強の所為もあって、今のところ分かりません。、生姜の仲間といえば、黄色で辛味のある地下茎の塊を思い浮かべてしまいますが、この花は、想像に反して、地上にピンク色の蕾を出し、やがて真っ赤な花弁を開きます。太い茎の上に咲く大きな花弁は、アマリリスの花に似ていなくもありません。ひょっとすると、此の部分は、本当の花ではなく、苞花かもしれませんが・・・これまた不勉強でよく分かりません。

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ダーラーの蕾

西暦1971年、最初に『 ダーラーの花 』をバンコクの花市場に売り込んだのは、
バンコク隣県のノンタブリの園芸農家だったそうです。 しかし、その時の市場の反応は、
『 食べられない生姜の花なんて売れないヨ! 』とけんもほろほろだったとか。


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開花の準備を始めたダーラーの蕾

どうしても諦めきれない園芸農家は、飛び込みで大型ホテルに花を持ち込んで売り込んだのですが、やはり今まで見たことのない花に関心を示すホテルマンなどいる筈もなく、玄関払いの毎日だったとか。

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開花段階に入ったダーラー

しかし、園芸家の努力の甲斐あって、あるホテルがその花の色の美しさに目を留め、試みにロビーの装飾用として購入したところ、これが意外や意外! 外国人のホテル客から絶賛を浴びたというのです。 目新しい花、見るからに南国らしい花、独特の色合いの花が外国人の琴線に響いたのでしょう。

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開花したダーラー

西暦1976年(昭和51年)以降、この園芸農家は、ダーラーの本格販売を開始。
タイ市場の小売価格は一本 =10バーツ、 外国人相手の価格は一本 = 20~30バーツ。売れ行きは頗る好調だったようです。


最近は、街の一般的な花屋の店先でも、ダーラーの花をよく見かけるようになりました。
オレンジと赤をミックスしたような華美な色合いは、遠くからでも際立って見えるドレスを着込んだ女優のような趣があります。 聞いた話ですが、装飾花としてだけではなく、野菜として、ダーラーの花弁を湯掻いて食すこともあるようです。


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真っ盛りを過ぎたダーラー

最近、『 ダーラー 』以外に脚光を浴びているショウガ科の花として、『 キン・デーン 』 ขิงแดง
があります。キン=生姜、デーン=赤 、つまり、『 赤い生姜 』ですね。価格は一本5バーツ、大きい花は10バーツ。ダーラーより少しばかり廉価です。


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開花したキン・デーン

ダーラーとキン・デーンの品質の良い花を育てるコツは、湿気のある土壌で地下茎を育み、黒い色の寒冷紗で強い太陽を弱めて繁茂するのことが肝心のようです。

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開花したキン・デーン

どちらの花も、雨季に地下茎を増やし、出荷の最盛期である乾季の12月に照準を合わせていました。したがって、暑季(4月)になると出荷量が激減していたのですが、最近は一年を通して供給できる生産技術が確立し、キンデーンもダーラーも、一年を通じて流通できる花として、その存在感を高めているようです。