バンコクの日本人男性客御用達の代表的歓楽街と言えば、古いビジネス街として知られるスラウォン通りとスィーロム通りを結ぶ300mあまりの小路にあるタニヤ街だと思います。

当初は日系進出企業の事務所や銀行支店が主体の街だったようですが、次第に日本人客目当ての日本料理屋や居酒屋が増え始め、当然の帰結として、夕飯後のひと時を過ごすナイト・クラブが雨後の筍(たけのこ)のように出現。日本生まれのカラオケの大流行とともに、日本人御用達のカラオケ・クラブの大団地に変貌したという訳です。

タイに魅せられてロングステイ
シーロム通りから見たタニヤの飲み屋街

この世界の競争の激しさは万国共通なのでしょう、店の形態も流行り廃りが激しく、最近の傾向としては、高級ナイト・クラブや小さなカウンター・バーのような店の殆どは、劇的に少なくなり、最新設備を導入したカラオケ・クラブやバーに変身しているようです。

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スラウオン通りから見たタニヤの飲み屋街

一説によりますと、300軒以上のカラオケ・バーに6,000人以上のホステス嬢が働いていると言われていますが、真実の程は良くわかりません。今では、タニヤ街だけではなく、日本人駐在員家族が多く住むスクムビット地域にも、カラオケ・バーの進出が広がりつつあります。

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飲食店の日本語看板が目立つタニヤの飲み屋街

僕の印象ですが、日本人相手のカラオケ・バーには大きく分けて二つのタイプがあるような気がします。つまり、日本人駐在員を相手にする店と日本人観光客を相手にするタイプの店です。 どちらかと言うと、前者の社用族を含む駐在員相手の店は飲み代が高く、後者の日本人観光客相手の店の方がお安くなっているような気がします。しかし、飲み屋でありがちな客と女、客と店のトラブルは、後者の店の方が圧倒的に多いようですね。

先日、僕の友人から聞いた話です。彼は58歳の東京の上場会社の部長さんです。同じ会社の大先輩だった10歳年上の奥さんと、熱烈な恋愛結婚で結ばれたと聞きました。

彼が初めてタイを訪れたのは、3年前の観光ゴルフ・ツアーだったそうです。5日間のツアーだったそうですが、午前中は、毎日のようにゴルフを楽しみ、午後から夕方までは、マッサージと昼寝で過ごし、夕色を済ませた後は、毎夜のように日本人観光客相手のカラオケ・クラブに入り浸ったと楽しそうに話していました。

彼は、やがて、日本語の歌が抜群に上手な若くて可愛いタイ人ホステスと知り合いになり、彼女と片言の会話を楽しみ、一緒に歌って踊り、疲れた身体を揉ん貰ったりしてメロメロになり・・・後はお定まりのコースです。

彼女の口から、月の収入は固定給=6,000バーツ、ドリンクを含む歩合を含めても1ケ月の収入は15,000バーツ≒51,000円だけ。田舎の両親に収入の半分を送金するので、とても生活が苦しい・・・なんて話を、耳に胼胝がができるほど聞かされたそうです。

彼女に夢中になった彼は、その後の2年間、東京の会社が連休の時、バンコク詣でを繰り返したそうです。毎朝、毎昼、毎夕、毎夜、彼女と共に過ごすようになり、彼女の家賃も負担し、本物のルイビトンのバッグも買ってあげたそうです。

そして、ある時、『 普通乗用車が欲しい! 』と彼女からおねだりされたそうです。彼女名義の必要書類を携え、連れ立って日系の自動車ショ-ルームを訪問して一括現金払い。赤い臨時番号(パーイ・デーン)の付いた新車一台をお持ち帰りしたそうです。

1年くらい経った頃だったでしょうか、東京の彼から僕に唐突な電話がありました。 彼女が行方不明になったので調べて欲しいと言うのです。

本当に厭な役回りですが、仕方なくナイトクラブを訪ね、彼女の友達だったというホステスに尋ねると、信じられないほど得意になってベラベラと喋ってくれました。この辺の女性心理は、男の僕には到底理解できませんが・・・それでも本当に助かりました。

日本人の彼から逃げた彼女は、現在プーケットで働いている事が分かりました。自動車の代金は、僕の友人から車一台分の現金をせしめた上に、他の日本人男性2名からも、それぞれ30%程度の頭金をせしめていたこと。そして、購入した新車3台は、既に転売して現金化されていました。

そして、驚いた事に、ホステスが僕に携帯電話を差し出して、『 電話に出てごらん 』と言うのです。電話の向こうから甲高い女性の声が聞こえます。なんと、僕の友人が熱を入れあげていた女性の声ではありませんか!

『 彼に宜しく伝えてね。彼は素敵で優しい ルン(小父さん)だったわ! 』

今晩も、タニヤのクラブでは、凝りもせずに、男と女の間で、ちあきなおみ『 四つのお願い 』 が繰り広げられているのでしょうか!? (大昔の唄ですみません)

『 一つ、優しく愛して、二つ、我が侭言わせて、三つ、マンション買ってネ、四つ、でも其処にはもう来ないでネ 』

一番のお馬鹿さんは、如何考えても日本人の彼ですが、彼のケースは、まだ被害が少なかった部類の話だと思います。

彼女の名義で購入したバンコクのマンションを盗られたと嘆く人もいれば、彼女の名義で地方の敷地を購入して豪邸を建てた後に、両方とも盗られてしまった御仁もいます。

彼等は、異口同音に、土地や邸宅を盗られたと言いたてるのですが・・・彼女の名義になっているのですから、何処にも訴えることが出来ません。 盗られたのではなく、最初から彼女が法的所有権者なのです。

聞けば聞くほど、あほらしくて、何をかいわんやです。