ラムパーンから国道11号線を北西へ37km、山深いハーン・チャット郡のアップ・ダウンの激しい国道を北に向けてほぼ登り切った対向車線側に、『 タイ象保護センター 』の大看板がありました。

『 タイ象保護センター 』( 621,800 ㎡ ) は、小学生の頃から象好きで知られているシリントーン王女の誕生日(当時36歳)を祝って1992年に発足したのですが、その前身は、1969年に設立された『 5歳以下の小象訓練センター 』( 24,000 ㎡ )だったそうです。

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タイ象保護センターの大きな看板

『 タイ象保護センター 』の広大な敷地( 621,800 ㎡ )には、若象の訓練所、象使い養成所、象の水浴場、世界唯一の象病院など多くの設備があります。

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タイ象保護センターの入り口で、鼻を高々と上げて嘶く象の塑像


『 若象の訓練所 』は、若象に材木の取り扱い技能を教え込む5年生の職業訓練学校です。授業時間は、乾季の3月から6月を除き、毎朝10時から正午までの2時間。世界からの観光客は、父母の授業参観の如く、若象の訓練風景を見ることができます。

訓練学校で一緒に勉強した若象の同窓生は、互いに相手の顔をしっかり憶えていて、数年後に違う場所で再開すると、直ぐに体躯を擦り寄せて旧交を温めるのだそうです。
賢いですね。


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此の日の象の訓練所はお休み日。お休みをのんびりと過ごす先輩訓練象と後輩訓練象

スコータイ時代からアユッタヤー時代にかけての象の仕事は、大きな体躯と怪力を活かして、もっぱら軍隊の重戦車としての役割でした。しかし、近代に入ってからは、チーク材の伐りだしをする重機械の役割を担うようになります。

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戦争時は、重戦車代わりの戦象としての役割を担いました。

チーク材は、その優れた耐久性と硬さから、欧州では高級家具や内装材として貴重な素材でした。特に、19世紀から20世紀初頭にかけては、インド北部、ビルマ北部、タイ北部地域は、『 ゴールド・ラッシュ 』ならぬ、『 チーク・ラッシュ』に沸きかえったという記録が残っています。

インドとビルマの伐採権を失った英国の木材会社は、隣国のタイ国に進出してチーク材の伐採権を取得。山中から象の力によってチーク材を運び出し、河川を利用して集積地のラムパーンへと運び込みました。この時代の材木産業の隆盛は、象なくしては語れず、まさに象様様の時代だったのです。

現在でも、この時代に建てられたチーク材の建築物がタイの各地に残存しています。バンコクに残るラーマ五世のウィマンメーク宮殿は、世界でも類稀な総チーク材による3層構造の建築物として知られています。

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総チーク材で建てられたラーマ五世のウィマンメーク宮殿(タイ観光局より拝借)

数日前のブログで触れた 『 王様と私 』 のバーン・サオ・ナックを御記憶でしょうか?
王室の英国人家庭教師だったアンナの息子のルイがチーク材商人として住んでいた古民家ですが、116本ものチークの太柱が使用されていて、チーク材で沸きかえった時代の名残を見ることが出来ます。(下写真)


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116本mのチーク丸太を利用して建てられたラムパーンのバーン・サオ・ナック

余談ですが、僕のコンドミニアムの床も全面チーク材ですし、壁面や天井の縁取り等の内装材にもチーク材がふんだんに使われています。チーク材が伐採禁止になった今となっては、なんとも贅沢な内装材となってしまいました。

1989年に森林伐採禁止令がタイ政府によって発布されて以降、象の働き場は一挙に狭まり、全盛時に約10万頭もいた象が、今や5万頭(2万頭は野生象)にまで減少してしまったそうです。

象の訓練所で『 材木積み出し技能 』の教育を受けた卒業生の象は、悲しいかな、その能力を山中で役立てるチャンスは最早なくなってしまいました。 精々、エレファント・ショーで観光客に、その技能の一端を演じて見せたり、背中に観光客を乗せてウオーキングしたり、中には、長い鼻を使って絵描きの真似事をする器用な象もいます。

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アユタヤーで背中に観光客を乗せてウオーキングする象

しかし、同じセンター内に在る象病院に入院している象さん、例えば・・・今でも、山中で切り出された材木を運び出したり、木の根株を引き抜く作業をしている象さんが、戦争が残していった不発弾や地雷を踏んで脚を失ったりしているのを考えると、エレファント・ショーに出演して拍手喝采を受けるタレント稼業の方が幸せなのかもしれませんネ。

次回は、『 タイ象保護センター 』の中に設けられている世界で唯一の 『 象の病院 』 に入院している可哀相な象さんについて触れてみたいと思います。