タイ国で『 足るを知る経済 』を最初に提唱されたのは、現国王のラーマ9世(プミポン国王)だろうと思います。
『 足るを知る経済 』 タイ語 เสรษฐกิจพอ่เพียง 読み:sethakid phoo phiang
タイ国の工業化が進むにつれて、タイ国民の80%余りを占める農民層の間で贅沢願望
ฟุ่มเฟือย fum fuai の気運が急速に台頭して拝金主義が蔓延るようになり、『 金が無ければ借金で賄えば良い 』という異様な雰囲気が増長した時に発せられた警鐘でした。日本の所得レベルとは大きく違いますが、日本のバブル経済に似たような空気があったのだと思います。
タイの小学校4年生の国語の教科書に、王様の『 足るを知る経済 』の意味が分かり易い言葉で紹介されていました。
『 贅沢な生活をしない、奢侈な生活をしない、借金を増やさない 』
『 倹約に励む、貯蓄をする、共同体の中で互いに助け合って生きて行く 』
バンコクの隣県・サムットプラカーン県の幼魚池
具体的には、家族に必要な程度を賄うことの出来る、家庭菜園、家庭果樹園、水田、養殖池、灌漑用水路などを家の周りに造る事など、生きて行く為の分限を超えない知恵と考え方が細かく説明されていました。
一言で表現すれば、『 พอ่มีพ่อกินพ่อใช้ 』 読み:phoo mii phoo kin phoo chaai
つまり、『 食べるだけあれば十分、使うだけあれば十分 』ということなのでしょうか。
養殖魚については、日本の昭和天皇平成天皇が皇太子だった時にタイ国王に提案された『 プラー・ニン 』 という魚が紹介されています。『 プラー・ニン 』 は、育て易く、養殖に適した魚 ですが、『ニン』は昭和天皇の御名の一字 『 仁 』 を採って命名されたそうです。
この魚は、今やタイの養殖池には無くてはならない蛋白源の魚になっています。昭和天皇平成天皇の御名前がタイ語の魚名に挿入されていることを、僕は全く知りませんでした。
間違い訂正:
読者の方から間違いの御指摘を受けましたので訂正させて頂きます。
昭和天皇ではなく、平成天皇が皇太子だった1960年代にタイ国王に提案されて魚でした。
お詫びをして訂正させて頂きます。 2018/11/18 10:00
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タイ東部のラヨーン県の海岸で小魚の乾物を作る人々
今年の10月、タイのクデーターで実権を握ったスラユット暫定首相(元枢密顧問官・元陸軍司令官)が、先日の立法議会で施政方針演説を行いました。
その中の経済政策には、『 足るを知る経済 』 が中軸に据えられていました。クーデター以前のタイ社会に充満していた拝金主義、利権主義の考え方を見直さねばならないという強い危機感から生まれた思考だと思われます。
金銭至上主義の味を覚えた国民(農民)に対して、『 足るを知る経済 』を提唱するのは極めて困難な仕事だろうと思いますが、スラユット暫定首相の御奮闘に期待したいと思います。