バンコクの道路交通の渋滞の酷さを知る外国人から、『 バンコクの道路は世界最大の駐車場 』と揶揄され始めてから、もう何年経つのでしょうか?

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慢性化したラーチャダムリ通りの交通渋滞

10分で到達できる距離を1時間以上もかかってしまうこともある交通渋滞の中、自動車から排出される有害なガスや工事現場から舞い上がる粉塵と土ぼこりが、亜熱帯の熱波と相俟って独特の異臭を放ちます。

交通警察官の鼻と口を保護するマスクは斑に黒ずみ、窓を開け放ったエアコン無しの公共バスの乗客は、いつものことながら鼻と口を手で覆いぱなしです。

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公共バスから吐き出される白煙と黒煙

道路としての機能を半ば失ってしまったバンコクの道路問題を解決する切り札として登場したのが高架電車と地下鉄でした。しかし、最初から分かっていたことですが、バンコクの道路は、道路としての機能を殆ど取り戻していません。

何故ならば、バンコク社会は、自家用車の所有層(高所得層)と非所有層(中低所得層)の二極化が顕著だからです。


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バンコクの道路交通問題解決の切り札として登場したBTSでしたが・・・

こんな状態に陥った最大の理由はバンコクの道路特性にあります。バンコクの道路は、本数の少ない『 樹木の幹に当たる幹線道路 』と『 枝木に当たる小路 』によって構成されています。 そして、その小路(ソイ)の多くは、行き止まりの袋小路になっているので、小路から小路、或いは、小路から他の幹線へ抜け出る出ることが出来ないのです。

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スクムウイット通りの袋小路になった小路

朝のラッシュ時には、小路(ソイ)の住居を出発した車両が一斉に幹線道路(タノン)に出て来るのですが、並行して走る隣の幹線道路に抜けることの出来る小路が極めて少ないために、大量の車両が幹線道路と小路の上で数珠繋ぎ状態になってしまうのです。

バンコクの道路を走るには、袋小路の道と、他の小路や幹線に通り抜けるできる道を熟知していないと、直ぐ近くにある目標地点にいつまで経っても到達できないことになってしまいます。


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バンコクの小路番号を示す標識

バンコクの交通渋滞を解決する方策は簡単です。行き止まりの小路(ソイ)を貫通して、幹線道路から幹線道路へ抜けられる小路を増やせば良いのです。何故こんな簡単な事ができないのでしょうか?

実は、小路(ソイ)の歴史を紐解くと、そもそも小路(ソイ)とは、旧貴族などの権力者の大邸宅に通じるアベニューだったと言うのです。  そして、現在も尚、旧アベニューの小路には、王族、旧貴族、政治家、高級公務員、事業家、財産家といった権力者の多くが住居を構えているのです。

自分の所有財産の維持と継続を後生大事に考えている彼らが、バンコクの道路改革のために所有地を手放すなんて事はとても考えられません。 ましてや、その財源確保のために、率先垂範して『 相続税法 』の制定を急ぐなんて事もあり得ないでしょう。特に相続税の導入に賛意を示すことは、自ら率先して『 金のなる木 』を手放すことになるのですから。

残念ながら、彼等の多くが国会議員であり、タイを代表する億万長者であることを考えると、バンコクの道路大改革、そして、その財源確保のための相続税の導入は、殆ど絶望的と言えるかも知れませんね。