タイ国立S大学に通学する時は、自家用車による通学ではなく、できるだけ高架電車(BTS)を利用するように心掛けています。

健康のためもありますが、大学構内で駐車場を探す手間と時間は、花のパリをも遥かに凌駕する酷さなのです。そんな訳で、電車と歩きで通学するように努めているのですが、切実な問題があります。

今は雨季なので陽射しはそんなに強くはないのですが、それでも午後の気温は30℃を下ることはありません。それに加えて、交通警察官の白マスクを黒灰色に染める空気汚染です。街中を歩くにはそれ相応の忍耐力が必要になります。

そんな酷い所に住んでいないで、東京に戻って来なさい 』なんて叱声が届きそうですが、それでも僕にとっては 『 住めば都 』なのです。

最近、最寄りの電車駅から自宅までの新たな道筋を見つけることに成功しました。この道筋を使えば、30℃の熱さも、排ガス地獄からも逃れることが出来るのです。

高架電車のチットロム駅を降りると、階下のスクムウイット道路に下ることなく、そのまま自然風の吹き抜ける階上の遊歩道を歩いて冷房の効いた超高級デパートに入ります。若し用足しをしたければ、豪華トイレを利用することだって出来るし、喫茶店に立ち寄りたければ雰囲気の良いも店もあります。

エスカレーターで降りると、棟続きの五つ星ホテルの中に通じる連絡通路があり、泊まり客のような顔をして、豪華で涼しい廊下を進むことが出来ます。


    
左:大理石で敷き詰められた超豪華な通路    右:ポッロミーニ作の遠近法の間を彷彿とさせる壁画

ポッロミーニ作の『 遠近法の間 』を真似た壁画のあるエラワンホテル内の通路は、大理石で敷き詰められているからだと思うのですが、冷房効果がとても高くて快適そのものです。

    
左:鯉も泳ぐ五つ星ホテル内の中庭        右:生バンド演奏中の高級ブランド店内のレストラン

エラワン・ホテルから近い超高級大型ブランド店の石段を登ってウエルカム・ドアを押すと、生バンドが奏でる音楽が流れて来ます。暫しの間、麗しの音楽に耳を傾けてから、裏口へ抜ける通路から外に出て50mも歩くと、我がコンドミニアムに到着という按配になります。

熱射病、日射病、気管支炎の全てを防止する効果があるばかりでなく、少しばかりリッチな気分も味わえる『 お気に入りの道筋 』を見つけてからは、大学に行くために自家用車を利用する気持ちは失せてしまいました。

最近は、僕の顔を覚えた警備員が、ニッコリと笑って大型のガラスドアを丁重に開けながら、『 サワディー・クラップ・ポム サバーイ・ディー・マイ 』 ( 今日は、ご機嫌いかがですか?) と声をかけてくれるようになりました。

正門から入って、裏門に抜ける 『 姑息な通路 』ではありますが、僕にはとても快適な通学路なのです。