皆さんこんにちは!

 

今回は、『アスリートに発症する疲労骨折 シリーズ① 胸部 』 〜肋骨疲労骨折(第1肋骨以外)〜 についてお伝えします。

野球の投球や、ゴルフでのスイング動作などの体幹を回旋する動きが多いスポーツで見られます。

その中でも、下の図のように肋骨疲労骨折の発生高位に特徴があります。

症状は、必ずしも骨折した部位の痛みが主ではなく、頸部〜背部痛や側胸部痛、肩甲骨周囲痛など様々です。

痛みが少なく、競技を続けられるため本人の自覚がなく来院される場合も多くあります。

 

下の図は、『第5肋骨疲労骨折』を受傷されたゴルフ選手の初診時の痛みの箇所です。

「ゴルフによる肋骨疲労骨折(第1肋骨は除く) 布袋屋 浩ら」より引用・改変

 

野球やゴルフをしているアスリートの頸部から背部にかけての痛みは注意する必要があります。

 

受傷機序(どのように受傷するのか?)は下の図の通りとなります。

「ゴルフによる肋骨疲労骨折(第1肋骨は除く) 布袋屋 浩ら」より引用・改変

 

「高校野球投手の利き腕側に発生した第7肋骨疲労骨折の1例 布袋屋 浩ら」より引用・改変

 

臨床検査は基本的にレントゲン検査を行います。

レントゲンではこのような画像が診られます。

 

下図は、ゴルフ選手に発生した第5肋骨疲労骨折のレントゲン像です。

「ゴルフによる肋骨疲労骨折(第1肋骨は除く) 横山 隆文ら」より引用・改変

 

下図は野球選手に発生した第8肋骨疲労骨折のレントゲン画像です。

「野球によって生じた肋骨疲労骨折の3症例 藤原 明ら」より引用・改変

 

その他にレントゲン撮影で描出できなかった場合、CT撮影やMRI撮影も行う場合があります。

 

下図はゴルフ選手に発生した第5肋骨疲労骨折のCT画像になります。

「スポーツ選手の第1肋骨疲労骨折の治療 森岡 健ら」より引用・改変

 

超音波検査も診断に有用で、当院では超音波検査装置を用いて患部の状態を観察します。

 

発症の原因をいくつか紹介します。

 

1つ目は、筋肉柔軟性の低下です。

冒頭の受傷機序(どのように受傷するのか?)でもお伝えした通り、下位肋骨に付着する、前鋸筋の柔軟性の低下により投球時やゴルフスイングなどの動作の際に牽引力が大きくなります。

 

2つ目は、胸椎回旋可動域の低下です。

体幹の回旋は下の図の通り胸椎の回旋が多く担っています。

 

体幹回旋動作を行う際に胸椎回旋可動域低下があるとその他の椎骨の回旋や前鋸筋などの筋肉に頼った回旋動作になり、肋骨に対する牽引力が大きくなります。

 

 

最後に予後と治療に関してです。

『肋骨疲労骨折』は基本的に予後良好で手術は必要なく保存療法を行います。

2〜3週間で痛みは減少しますが、骨癒合を目的に約1〜2ヶ月程スポーツを中止する必要があります。

この期間に、頸部、肩甲骨周囲筋の柔軟性を改善、投球フォームやゴルフスイングの改良など行い再発予防に努めます。

その後、1ヶ月かけて元のスポーツの強度に戻してから競技に完全復帰となります。

 

当院での治療を紹介します。

 

①徒手療法・運動、姿勢指導・トレーニング

当院では「Joint by Joint Theory」を基に原因と考えられる筋肉や関節に対して治療を行います。

「Joint by Joint Theory」については下記のブログで紹介しています。

 

 

先ほど、発症の原因に「不良姿勢、投球動作」「胸椎回旋可動域低下」と説明しました。

当院では、解剖学、運動学から理にかなった投球フォームを指導しています。

 

「胸椎回旋可動域低下」改善のエクササイズは下記の本ブログでも紹介しました。

 

②超音波骨折治療

当院では、下図のような「オステオトロン」を使用します。

 

③固定療法

症状の強い患者様に関しては、下の図のようにバストバンド固定を行います。

 

発症してしまった理由を突き止め再発しないように予防をすることが大切です。

『肋骨疲労骨折』は予後は良好ですが、早期発見しスポーツを中止しないと偽関節(骨がくっつかない)になります。

野球選手やゴルフを行っている方で頸部から背部にかけて痛みを感じている際は早めの受診をお勧めします。

以上が『アスリートに発症する疲労骨折 シリーズ① 胸部 』 〜肋骨疲労骨折(第1肋骨以外)〜でした!!