346 お通夜の出来事 | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

社会保険労務士・行政書士・認知症ケア准専門士のはまじゅんが、介護や認知症についておしゃべり。介護にかかわるすべての人に笑顔を届けます。

翌日の土曜日はお通夜の日だ。

 

今日は家族葬だから、身内しか来ない。

遠方から来る華江おばさんや颯介の為に、

楓は午前中に買い物に出かける。

 

健太は、みどりが持って来てくれた喪服に

着替えて、みどりと一緒に君江の側で過ごす。

 

昼前に、隣県のF市から浩介夫婦が到着した。

去年の9月に生まれた長女の紫織は、8カ月

を過ぎてお座りが出来るようになっていた。

 

可愛い盛りで、おもちゃを持って座っている

紫織は、フランス人形のように愛らしかった。

 

やがて、両手に荷物をたくさん抱えた楓が

帰って来て、皆で食事をしながら話して

いると、颯介が現れた。

 

しかも、若い女性も一緒だった。

喪服を着て、真珠のネックレスとピアスを

したその女性は、清楚な感じがした。

 

他の人達は、颯介とその女性の事を既に

知っているらしく、いぶかしそうな顔を

している健太の前に二人で来ると、

颯介が少し照れながら紹介した。

 

「健兄ちゃん、僕のフィアンセの

絵里香さんです」

 

「初めまして、河上絵里香と申します。

この度はご愁傷さまでした」

 

絵里香は、健太とみどりに向かって、深々と

頭を下げる。

 

「健兄ちゃん、こんな時に紹介してごめんよ。

本当は僕一人で来るつもりだったんだけど、

絵里香がどうしてもおばあちゃんに会いたい

って言うし、母さんに相談したら、皆に

会える良い機会だから、連れておいでって

言ってくれたから」

 

颯介が、一生懸命説明するのを見て、

健太は微笑ましく思った。

 

「颯介、連れて来てくれて嬉しいよ。

おふくろもさぞ喜ぶと思うよ。絵里香さん、

遠いところをわざわざお越しいただき、

ありがとうございます」

 

颯介は、絵里香にみどりの事は話してある

らしく、二人でみどりにも挨拶した。

 

そこからは、家族で和気あいあいと、紫織

ちゃんの成長した話や、絵里香の実家の話や、

君江との思い出話が始まった。

 

颯介の話では、絵里香は東京の下町の

お菓子問屋の一人娘で、颯介の勤めるお菓子

メーカーM社の総務部にいて、颯介が上京

した時に色々世話をしてくれたことが縁で

付き合い始めたそうだ。

 

颯介は、兄の浩介が、千春と付き合っている

ことを隠していたために、当初楓から猛反対

を受けたことを見ていたので、付き合い始め

から、楓には写真を送って報告をしていた

そうだ。

 

絵里香は一人娘なので、結婚したら婿養子に

入る予定なのだが、今は哲也の妻になって

いる楓は、それもあっさり認めたらしい。

 

「哲也さんのお陰で、母さん、随分優しく

なったんだ」

 

颯介が小声で健太に報告したので、健太は

思わず笑ってしまった。

 

午後4時頃、華江おばさんが到着した。

大学生の孫娘、七海と一緒だった。

 

「おばさん、遠い所をありがとうございます」

 

楓と健太が挨拶すると、華江おばさんは、

にこやかな笑顔で言った。

 

「お姉さんに怒られそうだけど、孫の七海が

私の故郷を見たいって言うもんだから、

一緒に連れてきたのよ。

明日は、海沿いの温泉に泊まる予定なのよ」

 

「華江おばさん、それぐらいお元気なら

嬉しいです。

おふくろもその方が、喜びますよ」

 

楓は、華江に自分の家族を一通り紹介する。

特養の仕事を終えた哲也が、ちょうど

入って来た。楓は華江に前もって、哲也と

結婚したことは話してあるようだった。

 

颯介のフィアンセを紹介すると、華江は

東京に親戚が増えて嬉しいと言った。

 

健太の横にいるみどりに目が行った華江は、

健太に聞く。

 

「そちらの方は?」

 

「おふくろがお世話になっていた

ケアマネジャーの田中みどりさんです」

 

健太はそう紹介した。

みどりが頭を下げると、華江が言った。

 

「君江お姉さんがお世話になったそうで、

ありがとうございます」

 

楓は、華江と七海に今夜泊まってもらう

奥の部屋に案内する。

 

みどりが、全員分のお茶を用意して、

ひとまずお茶菓子で談笑する。

やがて、東福寺から住職が到着し、

午後6時から通夜式が始まった。

 

健太!  いよいよ始まるね!

 

TO BE CONTINUED・・