340 母の希望通り | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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いきなり姉の楓から母親の葬式の話を

切り出されて、健太は面食らった。

 

「浩介と颯介には、お母さんが危篤状態

なのは連絡しておいた。それから、東京の

華江おばさんにも連絡したわ。

 

お母さん、葬儀は家族だけでひっそりやって

欲しいけど、華江おばさんは、出来たら

呼んで欲しいって言ってたからね」

 

健太は、以前行った温泉旅行の時に、葬儀の

ことも君江に聞いたことを思い出していた。

確かに君江は、大袈裟なのは要らない。家族

だけで良い。華江ちゃんは呼べたら呼んでね、

と言っていた。

 

「健太は考えたくないかもしれないけど、

私はお母さんの意思を実現するために動いて

いるのよ」

 

黙ったままの健太に、楓はピシャリと言った。

 

「姉ちゃん、わかっているよ。ありがとう。

俺って、イザという時に頼りにならないよな」

 

健太は、考えなければいけないことを、

ついつい先送りにしようとする自分自身を、

情けなく思っていたのだ。

 

「姉ちゃん、色々と考えて段取りしてくれて

ありがとう。俺もおふくろの意思を尊重

したいと思っているよ。

 

葬儀は、皆が集まりやすい駅前のT葬儀会館

が良いと思う。

高橋さんの奥様の葬儀の時に行ったけれど、

スタッフの人達の感じがとても良かったから」

 

「やっぱり、私もそう思っていたの。

それでね、健太。T葬儀会館は事前に会員

登録すると、割引がされるそうなの。

喪主は健太になるから、今からスマホで

会員登録してくれる?」

 

こういう時の楓は、本当に頼りがいがある。

あらゆる角度から色んな情報を集めて、

しっかり準備をするタイプなのだ。

 

健太は、楓の指示に従ってスマホで会員登録

を済ませる。

 

「それからね、華江おばさんは是非とも参列

して、最後のお別れをしたいって言ってたの。

 

颯介も、東京から駆け付ける訳だから、葬儀

の日程はね。

通常よりも一日遅らせて欲しいの」

 

君江の両親はもちろん、兄の康平も既に亡く

なっている。

身内と言えば、東京の華江しかいない。

 

2年前の5月に会って以来、華江とは時々

楓が連絡を入れるぐらいだったが、

やはり最期は会わせてあげたい。

 

「もちろん、大丈夫だよ。葬儀会社と相談

する時に、そのように日程を組んでもらえば

良いんだろう」

 

父親の葬儀の時は10歳だった健太は、高橋

さんの奥様の葬儀に参列したぐらいで、葬儀

の段取りも進め方もさっぱりわからない。

 

その点、楓は女性同士のネットワークで、

しっかり情報収集してある様子だった。

 

「姉ちゃん、多分俺、おふくろが亡くなると

気が動転して、色々なことを決められない

かもしれない。だから、姉ちゃんが思う

ように、物事を進めてくれて構わないからな」

 

健太は、責任を放り出すように思われるかも

しれないが、姉に正直な気持ちを伝える。

 

「健太、わかったわ。あなたがお母さんの

介護を一番頑張って来たんだから、気持ちが

整理できないのは当り前よ。

 

私が、万事段取りするから大丈夫。

あなたは、お母さんの側にいてあげれば

良いのよ」

 

姉の優しい言葉に、健太はホッとした。

 

楓も、健太が自分を信頼して任せてくれる

ことが嬉しかった。

 

哲也から、家族の間で葬儀の事で大声で

もめているケースが多いことを、散々

聞かされていたからだ。

 

「姉貴。餃子美味しかった。

俺、おふくろの所に戻るね」

 

健太!  これで安心だね!

 

TO BE CONTINUED・・