334 職場の新体制 | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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健太は出勤するようになっても、なるべく

早く帰宅するようにした。

 

この年の1月には、大村課長達が受け持って

いたプロジェクトも完了して、富岡建設は

また、昔の大所帯になっていた。

 

しかし、富岡社長は以前のままの体制では、

健太がせっかく育てた若者たちの芽が

つぶされてしまうと考えて、社内の体制を

変えた。

 

言ってみれば、大村課長を中心とする

旧体制組と、健太や黒木を中心とする

新体制組だった。

 

そして、プロジェクトに参加していた社長の

息子の悟は、新体制組に組み入れた。

 

新体制組の若者たちには、どんどん新しい

システムを導入させて、伸び伸びと仕事を

して欲しい。

 

富岡社長の親心だった。

 

そんな訳で、4月に戻った健太は、大村課長

と同等の佐藤課長に昇進した。が、部下の数

は大村課長の方がダントツに多いし、自分の

部下はベテランばかりが揃っているので、

大村課長から特に不満は出なかった。

 

健太は、権限移譲をして仕事を覚えてもらう

という名目のもとに、係長になった黒木に

ほとんど仕事の采配を任せた。

 

父親の病気療養も一段落した黒木に、健太は

そっとみどりの事を耳打ちする。

 

「佐藤先輩、しばらくは残業しないで、

早く帰ってあげてください」

 

心優しい黒木の言葉に甘えて、健太は定時に

なるとさっさと帰宅した。

 

そんな健太に途中で気が付いた富岡社長は、

ある日健太を呼び止める。健太は仕方なく、

みどりの事を報告した。すると、社長は

ニヤニヤしながら健太に言った。

 

「健太、やっとお前にも春が巡って来たな」

 

4月は特に何もなく平和に過ぎていった。

 

月の半ばから、みどりは少しずつ起きている

時間が長くなって、最後の週には、職場復帰

に備えて1日中起きて過ごす。

 

渡辺さんが話し相手に来てくれて、二人で

洗濯や掃除をする日もあった。

 

5月に入って、連休のはざまの日、みどりは

久しぶりに職場に出かけた。

復帰後の打合せをするためだった。

 

年度の変わり目の一番忙しい時期に、

約2か月の休暇を取ったみどりだったが、

休暇の前にすべての段取りをしてあったので、

特に問題なく復帰できそうだった。

 

しばらくは、利用者の担当を持たずに、居宅

介護支援事業所の所長としての事務と、母体

の医療法人との連絡事務をすることになった。

 

明後日から職場復帰すると言う日、楓と哲也、

高橋さんと渡辺さんが健太の家に来て、

職場復帰のお祝い会を開いてくれた。

 

みどりは主治医からお許しが出たからと、

久しぶりのビールを美味しそうに飲んだ。

 

みどりが職場復帰してからも、健太は定時で

帰る。夕飯の支度は健太の仕事だった。この

1カ月で随分料理のレパートリーも増えた。

 

「退職したら、居酒屋ができるね」

 

みどりとそんな会話をしながら、5月も

過ぎていく。

 

連休の間に面会に行った君江も、健太や

みどりの事がわからなくなっているとは

言っても、車椅子にのせて庭に出れば、

楽しそうに微笑んでいた。

 

みどりとの二人暮らし、母親の穏やかな表情、

哲也と幸せそうな姉の楓、このままの暮らし

が永遠であって欲しいと、健太は思っていた。

 

ところが、5月の最後の週に、君江に異変が

起こった。

 

健太!  何があったの?

 

TO BE CONTINUED・・