309 みどりからの決別宣言 | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

社会保険労務士・行政書士・認知症ケア准専門士のはまじゅんが、介護や認知症についておしゃべり。介護にかかわるすべての人に笑顔を届けます。

4月1日母親の君江のグループホーム入所を

無事に終えて、健太と姉の楓は何だか魂の

抜け殻のような状態になった。

 

とりあえず、家に帰りつくと、楓は和室で、

健太は自室のベッドで横になった。

二人とも、昨夜はあまり眠れなかったのだ。

 

夕方6時過ぎに、みどりからのLINEが入った。

 

無事にグループホーム入所が完了したかの

確認だった。

 

健太は、みどりにすぐに報告しなかったこと

を詫びて、君江がすぐになじんでいたことを

返事した。

 

すると、明日の日曜日の午前中に、今後の事

を説明しに健太の家まで来ると言う。

楓もできれば同席して欲しいと言われて、

健太は楓に確認をした。

 

楓は午後早目にF市に帰宅する予定なので、

午前中なら大丈夫ということになった。

 

「健太、夕飯どうしようか」

 

「姉貴、安西のおじさんとこに報告しながら、

お弁当を買ってこよう」

 

スーパー安西の店長の安西のおじさんは、

長年のお付き合いのある地元スーパーの

社長さんだ。

 

君江が認知症になり始めの頃は、楓や渡辺

さんと一緒に買い物に行っていたし、デイ

サービスぽかぽかさんに食材を届けに

行った時には、君江と会話もしてくれた。

 

陰になり日向になり、佐藤家をいつも

見守ってきてくれた存在だった。

 

二人は、早速スーパー安西に出かけると、

おじさんに君江が施設入所したことを

報告した。

 

「そうか、それは良かったな。

健太、お疲れ様だったな。

これからは、自分の人生を考える番だな」

 

安西のおじさんは、健太の背中をドンと

叩きながら言った。

 

翌日の午前10時に、みどりはやって来た。

 

手には、カフェ ル ボワ シャルマンの

ケーキを持っている。

 

「楓先輩、健太、お疲れ様でした。

10時のおやつを持参しました」

 

楓が紅茶を入れて、3人はケーキを頬張る。

みどりは、二人から新しいグループホーム

輝きの様子を色々と聞きだしていた。

 

「輝きさんはすぐに入所者が決まって

しまったから、ケアマネに見学とか

させてもらえなかったからね。

 

パンフレットだけでは、スタッフの雰囲気

とか分からないしね」

 

おやつが済むと、みどりは居住まいを正して、

二人に言った。

 

「佐藤君江様が施設に入所なさったことに

伴い、弥生居宅介護支援事業所との契約は

解除になりました。

今まで、本当にお疲れ様でした。

 

今後は、グループホームの担当者に色々と

ご相談いただくことになります。

 

君江様が、これからもお元気でお過ごしに

なられることをお祈りしております」

 

みどりが最後に頭を下げると、健太が言った。

 

「おいおい、みどり、なんだか他人行儀だな。

もう、みどりとは縁切りってことか」

 

「健太、元々他人でしょう。

まあ、それはさておき、ケアマネの正式名称

は、居宅介護支援専門員なの。居宅、つまり

在宅で介護サービスを利用する人を支援する

仕事なの。

 

だから、施設に入所したらおさらばって訳」

 

「でも、みどりちゃん、私達とみどりちゃん

の仲は、そんな杓子定規な物じゃないわよね」

 

楓も少し心細くなって聞く。

 

「もちろん、友人としてこれからも、

アドバイスすることはできます。

 

でも、今までのように、毎月1回定期的に

モニタリングがある訳ではないですし、

グループホームとの交渉事は、全て家族が

することになります」

 

みどりは、キッパリと言った。

 

「交渉事って、例えばどんな事?」

 

楓が聞くので、みどりは説明する。

 

「健太には、この前おばさんが入院した時に

説明したんだけれど、例えば、おばさんの

容体が急変しました。どうしますか?って

連絡は家族に来ます。

 

その時に、救急搬送お願いしますと言ったら、

施設は救急車を呼んでくれるけれど、その後

の入院などの手続きは、全て家族が病院に

飛んで行ってしないといけません」

 

「という事は、例えば健太が出張とかで遠く

に居て対応できない時は、私に連絡が来る

ってことなのね」

 

楓が言うと、みどりがうなずく。

 

「救急搬送以外にも、施設が提携している

医療機関は大抵内科だけですから、それ以外

の診療科、例えば皮膚科とか整形外科とかを

受診する時は、ご家族でお願いしますって

こともあります」

 

「それじゃあ、グループホームに入ったから

って、全部お任せって訳ではないのね」

 

「そう言う事ですね。

それから、要介護認定はグループホームで

更新手続きをしてもらえますが、要介護3に

なったら家族が特養の入所申し込みをする事

を忘れないでくださいね。

 

グループホームから言われることは

まずないですからね。

 

特養に入ったほうが、介護にかかる費用が

下がりますから、要介護3になったら、すぐ

に複数の特養の申し込みをしてくださいね。

 

と言うようなアドバイスは、ケアマネとして

はもうできません。契約していませんから。

 

でも、友人としてはいつでもできますから、

ご相談くださいね」

 

みどりの最後の言葉を聞いて、健太は少し

安心した。

 

「みどり、脅さないでくれよ。

これからだって、相談しても良いんだろう」

 

健太はそう言いながらも、今までとは立場が

違う事をわきまえなければいけないなと

思った。

 

今までは、何でもみどりに甘えすぎていた。

君江が徘徊した時も、みどりは一緒になって

探してくれたし、24時間お構いなしに

連絡を取っていた。

 

しかし、これからは、みどりは自分の契約

している利用者さんを優先することになる。

 

「しっかりしろ!健太!」 

 

健太は、自分を𠮟咤激励しながらも、

一抹の寂しさを感じていた。

 

健太!  寂しいね!

 

TO BE CONTINUED・・