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平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 




眼福とはこのことを言うのだろう
か。歌舞伎史上最大だった京都・
南座の27日午後のお練りから一晩
過ぎても、まだその余韻が続く。
花形、若手役者ら69人が勢ぞろい
して祇園を練り歩く光景は圧巻の
絵巻模様だった。歌舞伎の楽しみ
を知って、もう15年以上過ぎたが
、東西のどの役者も笑顔がはじけ
、見る側の祝祭気分をこれほど高
めてくれたのは初めてで、どの役
者にも声をかけたくなった。古い
世代からバトンタッチされた役者
らが、南座新開場を機に、一門の
枠を超えて躍動してくれる予感が
高まった。








待ち遠しかった新開場である。こ
の劇場には様々思い出がある。関
西で初めて歌舞伎を見たのが玉三
郎と獅童の舞踊公演だった。その
時玉三郎が踊った鷺娘の美しさに
見ほれて、しばらく声も出なかっ
た。仁左衛門の「封印切り」や「
じいさんばあさん」での硬軟の役
柄を使い分ける見事さ。亡き勘三
郎の襲名披露公演での「義経千本
桜川連館」の躍動感。勘九郎の襲
名公演で、父の訃報を聞かされた
直後の涙の口上……。どれも鮮明
に場面がよみがえる。




お練りには重鎮の菊五郎、白鸚、
吉右衛門、仁左衛門、梅玉・魁春
兄弟は出なかったが、この日のあ
いさつの舞台では元気な顔を見せ
た。午後2時半からお練り開始の
合図があり、時蔵を先頭に玄関階
段を降り始めた。軒下に陣取って
いたのだが、いきなり人気役者ら
続いたのに目を奪われた。海老蔵
、猿之助、幸四郎、愛之助ら。一
番ひいきの菊之助が目の前を横切
った時は、思わず「音羽屋」と声
をかけていた。松緑、中車、弥十
郎らが手招きして、続いたのは中
村屋の勘九郎・七之助兄弟。二人
が幼い奈緒也、長三郎兄弟の手を
引く。勘三郎もきっとどこかで喜
んでいる気にさせる健気さだ。




沿道から一番歓声が上ったのは、
海老蔵だが、まだ中学生ながら身
長172センチもあるといい、高
貴な気品さえ放つ染五郎には女性
ファンから絶叫ともいえる歓声と
ため息が漏れた。同世代の団子や
鷹之資らと恥じらいながら、談笑
していたが時折、きりっとした顔
になった時は「勧進帳」の義経の
ようにも映る。正月の襲名披露で
は声変わりもあってか、悔いが残
ったという。南座で演じる義経に
は万を辞している、と毎日新聞の
インタビューで答えていた。期待
が高まる。




上の世代は、役者同士の確執や嫉
妬が色々聞こえた。「共演NG」
も伝わってきたが、今回のお練り
では、40歳台以下の役者らが、家
系や名乗る屋号を超え、無邪気や
表情で談笑し合う風景を見せてく
れた。例えば、海老蔵と猿之助、
幸四郎と中村屋兄弟、菊之助と愛
之助ら……。お互いの実力を十分
知ったうえでの交流を深めたいと
いう胸中が読み取れようでもあっ
た。





海老蔵はよほどうれしかったのか
、どの役者にも声をかけてカメラ
で自撮りしていた。すぐにブログ
にアップ、菊之助らのサイトにも
瞬時に送信された。梅枝と共に女
形でめきめき実力を上げている右
近は南座屋上で菊之助とうれしそ
うに自撮りした写真をアップして
、喜んでいた。



ちょうど、毎年国立劇場で正月公
演をする菊五郎率いる音羽屋一門
は来年正月に「姫路城音菊礎石」
を披露することが発表された。姫
路城が舞台になる珍しい復活通し
狂言で、今から楽しみである。




花形役者と次世代の若手が中心に
なったのお練りは、終始フレッシ
ュな息吹きに包まれ、沿道のファ
ンから「今度は芝居を見たい」と
いう声があちこちで聞こえてきた
。彼らの成長を見られるということ
は、それだけこちらが年を重ねる
ことになるが、それは残りの生涯を

通した楽しみになりそうだ。


  【2018・10・28】



(写真は新装なった南座、顔見世
のまねき板、口上の絵、幸四郎、

お練りのスタート、染五郎、京都
高島屋ロビーの勧進帳の幸四郎弁
慶の人形=一部は毎日新聞やファ
ンのツイッターなどから転載)


また安倍政権支援の候補が惨敗し
た。約8万票の大差で勝った玉城
デニー知事が推す那覇市長選候補
の現職、城間幹子氏が今回も3万
7千票差をつけた。菅義偉官房長
官が全面支援した候補の相次ぐ大
敗や君津、川西市長選挙での与党
候補の落選は、安倍晋三首相の下
での来年の統一地方選と参院選に
向け、有権者の大きな潮流の変化
を感じさせる。そんな形勢不利の
状況をみてか、安倍首相は臨時国
会審議の出席を極力回避する戦術
を画策している。新聞・テレビは
ほとんどそれを報じない。国会審
議の形骸化は進行する専制政治の
表れである。


新聞各紙の1面トップやテレビの
情報番組は連日、サウジアラビア
記者殺害疑惑を大きく報じている
。大上段に「ジャーナリズムの受
難」と大見出しを掲げ、他国の専
制政治を欧米メディアと一緒にな
って批判していることに強い違和
感を覚える。本来の政権監視機能
を果たせていない日本のメディア
はこれまで、特定秘密保護法、共
謀罪法案など自国の政権による言
論封圧を明確に批判できなかった
。そんなことを忘れたかのように
国内メディアが中東の専制国家の
言論弾圧を指弾する資格などある
のか。


もっと目を向けるべきは国内政治
ではないか。与党候補の惨敗続き
にもかかわらず、辺野古沖埋め立
て認可の取り消しについて、政府
は本来、個人が行使すべき行政不
服審査を国交省に申し立てた。国
が国に訴えるという、理解し難い
申し立てで、露骨な沖縄の民意無
視である。国交省がお手盛り判断
を下すのは、初めから見えている
。「辺野古移設」強行のための姑
息な手段としか言いようがない。


当然、野党が国会で追及すべきで
ある。他にも、まったく説明も出
来ず逃げ回っている片山さつき地
方創生相の「口利き謝礼」受け取
りなど、問いたださなければなら
ないテーマが山積している。


それなのに、与党は首相の国会員
会審議出席を極力減らす提案を押
し切ろうとしている。来月は事実
上、移民解禁につながる出入国管
理法改正案の審議があるが、首相
の外交日程を理由に拒否する姿勢
だ。都合が悪くなると、不必要な
外遊を繰り返すのが、常道になっ
ている。これまで、約70カ国を回
り、法外な援助金をばらまいてき
たが外交成果は見えない。国会の
審議も経ず、まるで自分の財布か
ら出すかのように、ばらまいた総
額は5兆円にものぼるとされる。


約6年間、一度も隣国の中国、韓
国も訪問できていない。日中国交
回復以後、そんな政権はなく結局
、中韓包囲網の構築は失敗に終わ
っている。またプーチン露大統領
と22回も首脳会談を行いながら、
北方領土領土返還交渉の成果はゼ
ロである。野党は外交を理由にし
た首相の委員会審議欠席を見逃し
てはならない。


メディアの政治テーマ回避の画一
報道が、大きな政権支援になって
いることを、心ある読者や視聴者
は見抜いている。議会制民主主義
で成り立っているこの国で、国会
審議の成り行きやその詳細を報じ
ることのできないのなら、戦前の
「翼賛報道」に戻ったと同じであ
る。


    【2018・10・23】



金の動きがすべてである。どんな
に疑惑を受けた当事者が「事実誤
認で誤解を与える」と言い繕って
も、潔白を示す物証がなければ説
得性はない。片山さつき・地方創
生相が国税庁への口利きの謝礼と
して、100万円を受け取った、
と週刊誌で報じられた。税務調査
を受けた企業経営者は片山氏の私
設秘書の税理士に青色申告の取り
消しを免れるための着手金支払い
を明言している。片山氏側は受け
取り後、どう処理したか説明でき
ていない。安倍政権下では甘利明
元経財相による大臣室での「UR
への口利き謝礼金」受け取りが発
覚して以来、汚職まがいの政治風
景が日常化している。その原因は
「あっせん利得罪」が一度も適用
されず、政治責任もまったく問わ
れていないないからだ。


薄ら笑いを浮かべながらの、不遜
な片山氏の記者会見だった。「可
及的速やかに(週刊誌を)名誉棄
損で訴える検討をする」。こう言
い放った片山氏だが、記事のどこ
が間違っているのか、何も触れな
かった。終始「事件になるはずが
ない」というおごった顔が随所に
見え隠れした。



元夫の舛添要一氏が古谷経衡氏と
の対談で片山氏の最近の行動につ
いて興味深い分析をしている。


「稲田朋美は異例の出世を遂げま
した。彼女は安倍総理の寵愛を受
けた。片山は上に媚びるのが苦手
のタイプです。焦るわけです。稲
田が安倍さんに重用されるのは右
派だからだ。それなら右に行けば
、出世できるのではないか……。
結果在特会(在日特権を許さない
市民の会)のデモに参加してしま
う」(サピオ1、2月号)


その後、元夫の見立て通り、右寄
り発言を繰り返して狙い通り、安
倍首相に認められ、ついに初入閣
をはたした。この間も高慢な行動
や差別発言がやまなかった。西日
本豪雨時の「赤坂自民亭」と写真
投稿や国会の委員会への度重なる
遅刻。何より見逃せないのは困窮
する生活保護世帯への攻撃である
。お笑いタレントの家族までその
対象にして、まるで受給世帯を詐
欺師のように敵視、安倍首相支持
者らのいわゆる「ネトウヨ」らか
ら大きな喝采を浴びた。


最近では、テレビ朝日の「朝まで
生テレビ」の加計学園についての
討論中、四国を「離れ小島」と言
い放った。すぐに青木理氏に問い
ただされたが、ぬけぬけと「言っ
てない」と否定したのである。口
が滑ったと謝っていたら、収まっ
ていたかも知れないが、見ていた
視聴者をも恐れない傲慢な性格を
改めて見せつけ、その価値観が分
かった。「四国など小さな小島で
しかない」という日常的思考の持
ち主だからこそ、自然と出たフレ
ーズなのだろう。自分の出身地を
まるごと否定されたようで、怒り
が募って仕方ない。


事実なら、議員辞職に相当するぐ
らいの今回の口利き疑惑を、軽微
なダメージにしか思っていないか
もしれない。なぜなら、立件必至
とされた「甘利疑惑」が不起訴に
なっているからである。



捜査現場の「甘利氏立件」判断を
阻んだ「功労者」とされる当時の
黒川弘務・法務省官房長は、長く
安倍政権の覚えめでたく、今や事
務次官にまで昇任した。財務省の
森友学園交渉文書改ざんについて
も、首相官邸から「巻かれて」不
起訴処分を主導したとされる。そ
れどころか、論功行賞によって検
事総長起用も取り沙汰されている
のである。それが実現すれば、完
全に司法を政権に従属させる「安
倍独裁」が完成する。今後の「片
山疑惑」の展開は、その進行度を
読み取る目盛りにもなりそうだ。


   【2018・10・19】





「あなたは人生の最後にどんな景
色を見て死にたいですか」。もう
20年前になるだろうか、信州・八
ヶ岳の山荘での俳優、柳生博さん
のインタビュー中、柳生さんから
ふと自分に問いかけられた言葉で
ある。柳生さんは、四季の変化に
富むカラマツ林に魅せられ、数十
年かけて自分の木こり仕事だけで
山荘の敷地を切り拓いた。今は八
ヶ岳で最も人気のあるレストラン
「八ヶ岳倶楽部」として人の列が
絶えないが、当初は人生の最後を
当地で迎えたいという思いだけだ
った、と打ち明けてくれた。女優
、樹木希林さんが死の直前に出演
した映画「日日是好日」(13日か
ら)を見て、がんと向き合いなが
ら、見事な人生の閉じた方を教え
てくれた樹木さんと柳生さんの言
葉が重なった。「最後の時、どん
な景色みたいだろうか」。まだ自
問するが、その答えは見つからな
い。



映画は都会の茶道教室に通う初心
者の二人の女性とその老齢の先生
との25年間の交わりが描かれてい
る。座り方、歩き方に始まり、ふ
くさのさばき方やお点前の仕方な
ど戸惑うばかりの二人に、先生が
所作と心構えを気持ちを込めて教
える。「形から入るのよ。分から
なくても続ければ、そこに心が入
ってくるのよ」。先生の言葉は味
わい深く、何事にも通じる。思わ
ず、新聞社に入った時、見よう見
まねで先輩たちの仕事を懸命に習
った時が頭に浮かんだ。若い二人
には、それぞれ人生の悩みや岐路
があるが、先生は深くその中に入
らず、さりげなく包み込む。



金沢在任時、当地のおいしい和菓
子が食べたいという不純な動機で
住まいのある町の公民館の茶道教
室に通ったことがある。離任まで
の1年足らずの間で、腕前は上が
らなかったが、お茶会にはすすん
で出たい気持ちが持てるようにな
った。その時の先生も、樹木さん
が演じた人物と似た80歳過ぎの表
千家の女性だった。映画のように
私生活にはあまり入らず、おいし
くお菓子を食べる自分の顔にいつ
も微笑みを返してくれた。最後は
お別れのお茶会まで開いてくれた


その時、「淡交」という言葉を知
った。淡々と人と交わるという意
味である。好悪の感情を表に出し
過ぎる性格を自戒する日々だが、
年を重ねてきたら「淡交」の精神
がよく分かり、その気持ちで人と
付き合いたいと切に願うようにな
った。



茶道の良さは、四季の変化を体で
感じられることだ。映画はそれを
見事に表現、庭や掛け軸をクロー
ズアップし静謐なシーンが続くが
、それが何と贅沢で心地よい空間
かと思わせる。



亡くなる前の一カ月の間、親類の
茶室を借りきって、お茶を習った
という樹木さん所作は素晴らしく
、役作りに打ち込むため振り絞っ
た気力に舌を巻く。少し先に死が
待っていたなどみじんも見せなか
った場面ばかりであった。主演は
黒木華さんも25年間にわたる女性
の成長を上手に演じた。共演の多
部未華子さんと共に、きっと樹木
さんが命をかけて演じた女優魂を
引き継いでくれるだろう。



観終わった誰をも、「残された自
分の人生を豊かに味わいながら、
大切に生きたい」と思わせる秀作
である。樹木さんにとって茶室の
外の四季の変化が最後の景色にな
ったのではないだろうか。


   【2018・10・14】


(写真は映画のポスターから)


メディアをなめ切った態度で記者
会見に出ることは最初から分かっ
ていたはずだ。それなのに、あり
きたりの質問ばかりで、時間ばか
りが過ぎた印象だ。加計孝太郎・
加計学園理事長の7日の記者会見
で、中身のない釈明を許したのは
、メディア自身の責任だ。このブ
ログで何度も書いたが、追及すべ
きは首相と親しい人物が理事長を
している私学の新獣医学部が教育
体制の不十分なまま血税を吸い取
っている補助金詐欺の構図である
。その視点なき質問をいくら並べ
ても、物証や証言がなければ、加
計氏にとって痛くも痒くもなく、
このまま逃げ切りを許すだけだ。


追及している市民団体も残念なが
ら分裂して一枚岩になれないが、
このうちの「同学部問題を考える
を発表した図書費水増し請求は補
助金詐取の核心の一つを衝いてい
る。黒川共同代表によると、学園
が文部科学省に提出した資料費に
は、図書費として9928万円と
記載されているが、独自推計では
3417万円に過ぎなかったとい
う。


それを裏付けるように、オープン
キャンパスや学生の家族が図書室
で撮って公表した写真は、書架が
ガラガラで並んでいた本もブック
オフで買ったような専門性のない
ものばかりだった。学園が指定し
た本の中には、あの廃刊になった
「新潮45」に「痴漢の触る権利も
社会は保障すべき」と寄稿した小
川榮太郎氏の「安倍首相礼賛本」
も含まれていた。



図書室を上回る巨額の詐取は建築
の専門家から指摘されている細菌
除菌施設(BSL)の未設置と新
設棟の建設坪単価の過大見積もり
が中心だ。一年以上前から、市民
団体や国会審議で追及されている
のに、今も納得させる説明ができ
ないままだ。7日の記者会見も、
物証や証言に基づく質問が繰り出
されるべきだった。それなのに、
集中した質問は渡辺良人事務局長
が愛媛県に虚偽説明をしたのを認
識していたか聞くことだった。加
計氏が「よく存じ上げていない」
と予想された答えばかりだった。
それ以上突っ込めないのは、記者
が手持ちの材料を持たない怠慢の
表れである。



ようやく、会見の最後に「愛媛県
文書を読んだのか」と問いただし
、加計氏から「読んでいない」と
いう答えを引き出した。県や市に
、二度目の会見で釈明したという
経過を伝えるためだけの目的だっ
たはずなのに、自身が安倍首相と
会っていたと記載された県の文書
も読んでいない傲慢さが露わにな
った瞬間だった。そこまで、聞か
れるとは思っていなかったのか、
加計氏の目は宙を泳ぎ、中身のな
い冗舌さばかりが鼻についた岡山
理科大事務局長に助けを求めた。
加計側はこの会見で幕を引くつも
りが、さらなる釈明を求められる
醜態をさらけだした。それぞれ記
者としての自負があるなら、追及
材料を揃えて次回の会見を迫るべ
きだろう。ジャーナリズムの「権
力監視の責務」は行動によってし
か果たせない。



会見では柳瀬唯夫・前首相秘書官
と学園との関わりのきっかけを問
われ、「学園の職員が柳瀬氏と知
り合いだった」と嘘が丸わかりの
説明しかできなかった。安倍政権
が、森友・加計疑惑を終わったよ
うに逃げ切りを図っても、有権者
は許していない。各社の世論調査
では「結末に納得していない」と
答えた人がどれも7割以上にのぼ
る。先週末の毎日新聞世論調査の
結果は衝撃的でさえある。「改造
内閣に期待している」と応えたの
が、一けた台の8%にとどまって
いた。「期待できない」は4倍以
上の37%だった。政治報道史上、
改造内閣がこれほど支持されない
のが数字で表れたのは、例がない
という。「総裁選の石破氏善戦」
「沖縄知事選の大敗」と既に「終
わりの始まり」の兆候が顕著に
なってきた。



  【2018・10・10】


なりふりかまわずフェイク(偽情
報)を流した結末が実に8万票の
大差である。沖縄知事選で玉城デ
ニー氏が圧勝した結果に、政権与
党の中枢は皆青ざめているのはず
だ。ネット上では見るに堪えない
罵詈雑言、差別投稿があふれ、例
をみない汚い選挙が繰り広げられ
た。来たるべき来年の参議院選挙
で同じ轍を踏まないためにも、度
を超したネガキャンペーンの規制
が必要だ。犯罪にも等しかった今
回の投稿者とデマを拡散した者を
特定し指弾すべきではないか。


政治上のヘイト投稿は、SNSが
先に発達した米国でも規制の動き
が急だ。ツイッター社はヘイト投
稿対策を強化、「集団に対する人
間性の否定」という項目を禁止事
項に加えるという。人種、民族、
国籍、性的指向、性別、職業、政
治理念など共通の特性があるさま
ざまな集団に対し、その人間性を
否定するような攻撃を禁止。日本
では「在日朝鮮人」と名指した攻
撃は規制対象になる。違反投稿は
削除やアカウント停止などの措置
がとられるという。


「表現の自由」を侵害してはなら
ないが、誰が見ても明らかなヘイ
ト投稿は罰せられるされるべきで
ある。投稿の違法性を公平に審査
する機関を早急に設置すべきであ
る。



それにしても、沖縄知事選での政
権与党支持者とみられる投稿はひ
どかった。玉城氏が所属していた
自由党の小沢一郎代表について「
辺野古近くに豪華別荘を建築」「
玉城氏が辺野古基地建設落札業者
から献金をもらった」「プロ野球
の日本ハムがキャンプ地から撤退
」……。いずれも公知の事実を歪
曲して拡散したり、まったく根拠
のないデマ投稿が目立った。


一度広まったデマは、なかなか削
除したり拡散を阻止することがで
きず、有権者の判断を迷わしかね
ない。毎日新聞のメディア欄では
地元紙の「琉球新報」と「沖縄タ
イムス」が選挙期間中、不定期で
「ファクトチェック」(ニュース
の事実確認)をしたと伝えていた
。中には、安室奈美恵さんが特定
候補を支援しているという投稿が
あり、「琉球新報」が陣営に確か
めると、その事実はなく「偽情報
」と判定した記事を掲載したとい
う。第三者的に紹介するだけでな
く、本来全国紙やテレビのキー局
もやっておくべき責務で、逆に怠
慢を浮かび上がらせた。



有権者がネット上のヘイト投稿に
左右される以前に、候補者の公約
の真偽を見極める見識を持たなけ
ればならない。今回、政権支持の
佐喜真淳候補が「日米地位協定見
直し」「携帯電話料金の4割引き
下げ」を掲げたが、いずれも知事
権限でできることではなく、その
公約自体がフェイクであった。既
存メディアももっとジャーナリズ
ム機能を発揮して検証すべきだっ
た。並列的にプロフィールや公約
を紹介するだけでは真の選挙報道
といえない。過度に「中立報道」
を意識していてばかりでは、有権
者に意味のある情報を伝えること
にならない。


それにしても、政権与党が支持し
た候補の惨敗は想像以上に安倍政
権を毛嫌う有権者が多いことを示
し、野党はこの結果をどう参院選
につなげていくか、正念場でもあ
る。何より、早く臨時国会を開か
せ、民意に背いた辺野古基地建設
を断念させる結果が出る国会戦術
が求められる。そして公職選挙法
違反や名誉棄損罪の厳格な適用を
司法当局に問いただしていかなけ
ればならない。


   【2018・10・4】


「日本はすごい量の防衛装備品を
買うことになった」。国連総会後
のトランプ米国大統領が記者会見
で述べた言葉が今回の日米貿易交
渉を象徴している。安倍晋三首相
は、この後の首脳会談後に「双方
の違いを尊重しながらウィンウィ
ン(共栄)の経済関係を作り上げ
ていくことができた」と自賛した
が、事実上二国間の自由貿易協定
(FTA)を約束させられ、得る
ものが何もなく失うことばかりの
「売国交渉」であった。いくら「
TAG」(物品貿易協定)という
聞きなれない用語で糊塗しても、
米国メディアが既に実体は「FT
A」と報じている通り、目くらま
しの合意に過ぎない。


「TAG」は日米相互にモノの関
税の撤廃・引き下げを行う協定だ
が、今までほとんど使われたこと
もなく、新聞社の用語辞典に一行
も掲載されていない。経済産業省
の担当職員も「初めて聞いた」と
現地で驚いたという。誰が考えた
のか国内向けに「妥協していない
」というポーズを見せるため、急
きょ引っ張り出した言葉に過ぎな
い。


こんな誰も聞いたことがない用語
を使うのは、安倍首相はこれまで
ずっと米国とのFTA交渉を行わ
ないと表明していたため、今回の
対応に説明がつかなくなるからだ
。首脳会談前、トランプタワーに
呼び出され、二時間も密談した時
、自動車関税引き上げの先延ばし
と引き換えに、事実上のFTAを
飲まされたとみるのが、納得がい
く。側近スタッフがずる賢く忖度
したことが透けて見える。



安倍首相が「TAG」を「投資や
サービスなどのルールを含まない
FTAとは異なる」といくら強弁
しても、農産品や工業品の関税引
き下げや農水産物の市場開放を認
めているではないか。「不都合な
事実」を隠す政治手法はまったく
変わってない。TTP合意と同じ
ように農業団体などがさらに壊滅
的な打撃を必至である。ひいては
39%あるとされる食糧自給率が20
%以下におかしくはない。


何より問題なのは、国会も3カ月
以上も開かず、国内での議論のな
いまま国益を損なうことを約束さ
せられていることだ。トランプ大
統領が国内の支持者向けに強硬姿
勢で関税アップを要求している中
国やカナダは対抗措置を取りなが
ら、なお一歩も引かない交渉を続
けている。日本の産業界が最も恐
れる自動車の関税アップ(25%)
も米国は一枚岩ではない。日本の
部品輸入が不可欠になっている米
国の自動車メーカーも大打撃を受
けることになり、反対しているこ
とに目を向けようとしない。



記者会見で勝ちを誇るトランプ大
統領の前で、眉毛を八の字にして
口をゆがめ困惑の表情を浮かべた
安倍首相をみて情けなくなった経
済人も多いのではないか。胆力も
なければ、皮肉で言い返す機転も
ない。新聞各紙が1、2、3面と
大きく報じた紙面に「押し切られ
合意」「苦肉の物品協定」などの
見出しが並ぶのは、当然である。



交渉事はいったん引いたら、相手
は、かさにかかってさらなる攻勢
に出てくる。先送りした自動車の
高関税発動を阻止するためにも、
中国が対抗カードとして検討して
いるという「米国債売却」など米
国の弱点を衝く、したたかな知恵
が必要だ。野党は懸念を表明する
だけでなく、安倍政権にこれ以上
の「売国交渉」をさせないための
具体的政策を突きつけなければな
らない。


   【2018・9・28】





秋の彼岸の日を前に、今季まだ食
していないアユを急に味わいたく
なった。どうせ出かけるなら、ま
だ乗ってないローカル線で旅情を
感じたいと、、神戸からJR線を
乗り継いで、養老電鉄(岐阜県大
垣市)に乗車した。揖斐川沿いに
向かう約45分間の車窓からは稲穂
の波が続き、豊穣な秋の景色に見
入った。釣り人が竿を何度も上げ
ながら「落ちアユ」を狙う。それ
を見ながら「やな(簗)」と呼ば
れる食事処で口に入れた塩焼をし
たアユは香ばしい。川床を涼風が
流れビールでほてった体を冷やし
てくれ、暑かった夏の終わりをよ
うやく体感できた。







JR神戸線の新快速と米原発の特
別快速を乗り継いで、大垣駅まで
約3時間。途中、最近はまってい
るミステリー作家、柚月裕子の「
検事の本懐」(大藪春彦賞受賞作
)を読み上げる。この女流作家の
がなぜ検事の心理に深く入り込み
、組織内部の葛藤を描けるのか、
圧倒させられ通しだった。あの横
山秀夫と作風が似ているが、描写
する世界はさらなる広がりがある
。いつか直木賞を手にする力量を
感じさせた。





乗換駅の大垣駅前では、老舗の菓
子店に人の列ができていた。名物
の「水まんじゅう」を人たちで、
その光景は大垣の風物詩でもある
という。養老電鉄は揖斐と桑名に
向かう2線があり、構内ではゆっ
たりと乗り換え客を待つ赤い車両
が3両つらなり、腰を下ろすと、
ゆったりと出発。途中、田園地帯
を走る車窓から、初めての駅の呼
び方まで新鮮に感じる。「神戸」
が「こうべ」ではなく「ごうど」
と読む。確かにそうも読める。地
名一つでも知らないことばかりで
ある。あっという間に終点揖斐駅
に到着。養老線は来年で開業10
0年といい、大正時代の木造駅舎
も風雪に耐えて、味わい深い。古
き良き時代の人々の出会いと別離
の光景が目に浮かんでくるようだ
った。




さて「やな」である。百円のコミ
ュニティーバスで揖斐川沿いにつ
いた。堤防の駐車場には名古屋、
滋賀、飛騨など各地のナンバーが
連ねる。聞けば、年間9000円
の入漁料を払う釣り人が多いとい
う。こちらは釣りもせず、楽して
夏の川床で味わったアユは6匹。
甘露煮、フライ、味噌がけ、ぞう
すい……と、どれも味わい深かっ
た。満腹になり、しばらく動けな
かったほどだ。





揖斐川では子供が仕掛けたやなに
かかるアユをすくっていた。のど
かなその光景を、この夏、暴風雨

が決壊させた各地の川の映像と重
ねていた。治水こそ防災の根幹か
もしれない。最後にそんな思いが
した小旅行だった




(写真は揖斐川のアユ釣り、大垣駅

前の菓子店、養老電鉄の車両、や

な料理の店の看板、やなで遊ぶ子

供、揖斐駅、アユ料理、揖斐川の

順)


      【2018・9・23】




ロシアの大統領報道官からも、安
倍晋三首相の「フェイク(虚偽)
」発言が暴露されてしまった。外
交を理由に、自民党総裁選から逃
げ回っていた安倍晋三首相が自身
への批判に事実と異なる反論や防
戦を繰り返している。最も看過で
きないのは最大のアキレス腱であ
る「森友・加計疑獄」について、
「昨年の総選挙で既に国民の審判
を受けた」と言い始めたことだ。
財務省の文書改ざんが明るみにな
ったのは今年2月だったのに、選
挙で「みそぎ」を済ませたかのよ
うに公言。首相の「反省」はいつ
も形ばかりだ。このまま3選がな
ると、異論に耳を貸さない政治の
専制化がますます加速しそうだ。


安倍さんがまた「丁寧に」と言う
てはる
  (12日朝日川柳・佐藤隆治)


多くの有権者の思いを代弁するこ
の句に思わずうなずいた。こんな
皮肉も届かないのか、その後の15
日、東京都内で開かれた街頭演説
会で、首相は「私は至らない人間
だ」と殊勝な表情になり、「謙虚
に丁寧に政権運営にあたって参る
決意だ」と続けた。加計孝太郎氏
の証人喚問など事実を解明を阻ん
できた経過に、世論調査で75%の
有権者が納得していない。首相が
その現実を無視していることが改
めて浮かび上がっている。



プーチンロシア大統領が領土交渉
を棚上げにした平和条約締結を提
案した時、まったく反論できなか
った失態に首相は会談前後に話し
ていると釈明していた。ところが
、ぺスコフ大統領報道官は「首相
本人は態度表明をしなかった」と
国営テレビで明解に否定した。情
報をクロスさせ、映像をみれば、
どちらが嘘をついているか、明ら
だ。


収まることのない首相への不信ぶ
りは、14日の日本記者倶楽部の討
論会でも、その根深さを見せつけ
た。いつもなら安倍政権寄りの言
説をテレビでまき散らす橋下五郎
・読売新聞特別編集委員までが「
最大の問題は不支持の一番大きな
理由が『総理大臣が信頼できない
』ということだ。一体なぜこうい
うことになっているのか」と疑問
を投げかけた。


味方と思った記者に問われ、あか
らさまに顔をこわばらせた首相。
しかし、ここでも「謙虚に丁寧に
」を口にしてかわそうとした。と
ころが、毎日新聞の今度は倉重篤
郎氏に、自身や昭恵夫人関与して
いたら、「辞任する」と答弁して
いたのを変えたのか詰め寄られた
。首相は「贈収賄事件でない。し
かし、道義的責任を負わないとい
けない。その意味においてこの問
題を含めて、昨年総選挙を行った
」と釈明した。当初の国会答弁で
は「贈収賄」などの枠をはめなか
った。答弁を変えたのは明白で、
語るに落ちた答えだった


そして先の選挙では、疑獄解明な
ど一切口にせず「国難突破選挙」
と北朝鮮危機をあおったのを忘れ
たような物言いである。こんな嘘
を今も繰り返す政治姿勢こそ、石
破茂元幹事長が、衝くべき論点で
あるはずだ。「正直、公正」をア
ピールするだけでは、及び腰と受
け取られても仕方ない。あまり反
政権ぶりを見せたくないのだろう
が、負ける覚悟で旗幟を鮮明にし
たほうが、選挙後の展望が開ける
はずだ。どちらが得策か、最終盤
でもスピーチを再考したら、少し
でも支持は広がるだろう。


3選を果たしても人間性が信頼で
きないと、多くの有権者が考える
ならば、首相の信望は低下し続け
、任期をまっとうできなくなる可
能性もある。「独断と専制」が進
行する「アベ政治」の流れを絶つ
には何が必要か。反対勢力はその
ことを意識し、当面の政治決戦に
なる来夏の参議院選挙の戦略と戦
術を立て直す時期である。


   【2018・9・18】


「ウラジミール」、呼ぶのやめて
も足蹴にされ


親し気に「ウラジミール」と呼ん
でプーチン・ロシア大統領と親密
さをアピールしていた安倍晋三首
相がまた外交で失態を演じた。プ
ーチン大統領が各国首脳がそろっ
た舞台で、北方領土交渉の事実上
の棚上げを唐突に示唆し「年内に
日ロ平和条約締結を」と演説した
。前日の日ロ首脳会談では一言も
触れなかった提案で、安倍首相は
ハトが豆鉄砲を食らったような困
惑した表情に変わった。22回も会
談を繰り返しながら、1ミリ程も

成果がなく臍を噛む「安倍外交」
。思わず冒頭の句を口ずさんだ。


お互いファーストネームで呼び合
うと親密な関係と誇示していた安
倍首相は今回、プーチン大統領か
ら外交慣例であり得ないような、
礼を欠く応対をされた。ウラジオ
ストクの10日夜の首脳会談は、理
由も告げられず2時間半も待たさ
れていたのだ。相手が重要視する
人物であれば、こんな応対はけっ
してしない。さすがに今回ばかり
は「ウラジミール」と呼びかける
のをやめたが、プーチン大統領は
ずっと前から「シンゾー」とは呼
んでいなかった。それでもずっと
「ウラジミール」を口にして、擦
り寄ってぶりいた。どんな相手で
も最大限自国の利益を得るためし
たたかに交渉をしてきたプーチン
大統領に、赤子の手をひねるよう
に翻弄される首相の姿に「もう会
うのはやめて」と言いたくなる。


対照的に翌日のプーチン大統領と
習近平中国国家主席の会談は、親
し気な雰囲気で始まり、米国相手
に協調路線をとることを確認、北
朝鮮非核化でも協力し合うことを
申し合わせた。外交とはパワーゲ
ームということを十分知り尽くし
ている。したたかで計算高くみえ
るのは、自国の利益を最優先にし
ているからだ。安倍首相の外交は
国内向けに「やっている」感をア
ピールするばかりで、獲得した中
身がなく、空虚さばかりが伝わっ
てくる。


ポツダム宣言を呼んだことがない
と公言した首相がどれだけ歴史、
的経緯を理解しているか疑わしい
。ヤルタ会談でスターリンソ連首
相はチャーチル英首相やルーズベ
ルト米大統領らから、対日参戦を
条件に千島列島の島々の領有を認
めさせ、密約を結んでいた。ロシ
アは旧ソ連が血を流して獲得した
領土を易々と手放すはずもない。
安倍政権を陰に陽に揺さぶってく
るのは、当然で、打つ手を熟慮し
て臨まなければ得られるものは期
待できない。22回も会って、各国
首脳が揃った満座の中で恥をかか
されたのは、その証左である。



物乞いをするように卑屈な外交を
続けるから、強い態度で出られた
ら、用意がないからそれを上回る
カードを切れない。先の日米首脳
会談でもトランプ大統領から「真
珠湾を忘れていないぞ」と恫喝さ
れた。ここでも「ドナルド」と呼
んですり寄っても、「シンゾー」
とはもう呼んではもらえず、次回
の貿易交渉では強硬姿勢を見せつ
けられそうと、経済界に強い懸念
が広がっている。6年近く隣国に
は訪問もできない。こんな戦術、
戦略なき「安倍外交」は自民党総
裁選の争点になってもおかしくな
い。石破茂氏は外交成果を問いた
だすべきではないのか。


為政者の外交が国の興亡をもたら
すことを説いた古い中国の言葉が
ある。


一国は一人を以って興り、一人を
以って滅ぶ(蘇老泉「管仲論」)


   【2018・9・13】