一体、起用したのは誰かと疑う自
民党人事だった。旧統一教会との
癒着に「報道があったのなら事実
だろう」と他人事のような国会答
弁を繰り返したあげく、経済再生
相を更迭された山際大志郎議員が
わずか4日で自民党のコロナ対策
本部長のポストに就いた。岸田文
雄首相は「総合的に判断したもの
と承知している」と党任せだった
と放言してしまった。責任を回避
したい思いだろうが総裁は誰なの
か、指をさしたくなる。安倍派に
忖度して起用した杉田水脈は自身
の中傷投稿が東京高裁から侮辱行
為と認定され賠償命令を出された
。岸田首相はいつまで任免責任か
ら逃げ続けるのだろうか。
山際コロナ本部長の人事は、政治
的打撃を考えるまともな思考があ
れば、考えられない。党内からも
執行部批判が出ているという。も
ともと甘利明前幹事長の強い推薦
を受けての大臣起用だったが、さ
すがにメディアや野党から強く追
及され始めると誰もが更迭必至と
みていた。それが臨時国会が始ま
っても、首相は決断できなかった
。内閣支持率が急落して、ようや
く世論の反発に気づいた。何とい
う鈍感ぶりか。4日後のコロナ本
部長就任はさらなる「驚天人事」
だった。
「検討使」とやゆされ、大事な政
治決断を常に先延ばしにして、人
事も人任せにしがちな性癖がよく
表れたとも言えるだろうが、その
罪状は深い。
それが際立ったのが、杉田水脈総
務政務官の起用とジャーナリスト
、伊藤詩織さんにたいする中傷投
稿についての高裁の逆転判決だっ
た。ヘイトスピーチや投稿を繰り
返す杉田議員の政務官起用には党
内外から強い批判がわき起こって
いたのである。首相は安倍晋三元
首相の推薦があって起用したと見
られていたが、よりにもよって誹
謗中傷対策の担当省のナンバー3
に抜擢するなど誰にも考えられな
い人事だった。首相は発令理由を
明かせなかった。
その人事がついに破綻する結末を
迎えたのである。杉田総務政務官
は安倍元首相と親しかった山口敬
之元TBS支局長にレイプされた
伊藤さんに「枕営業の失敗」など
と誹謗中傷を繰り返し、その行為
が侮辱行為と認定され東京高裁か
ら55万円の賠償命令が出されたの
である。国会で追及された杉田政
務官は答弁を拒否し続けた。
「笑ってる場合じゃないですよ」
。強い調子でこう迫った立憲の塩
村あやか議員は続けて「政務官、
『レイプされたと虚言を吐き始め
たのです』こうしたものに『いい
ね』を押している間違いないです
ね」とたたみかけた。
杉田議員は「高裁判決を受けてた
だいま検討中」と答弁したが、塩
村議員は「政務官を辞任すべき」
と追及した。係争中とは言え、自
身のネット投稿は高裁も認め、言
い逃れできないはずだ。こんな人
物を政務官に起用した岸田首相は
「山際起用」と同じか、それ以上
の害悪を国政にもたらしている。
なぜなら、総務省が昨年秋以来、
ネット中傷の被害者を敏速に救済
するための制度見直しの担当省庁
であるからだ。
総務省のSNS中傷対策を別の立
憲議員に聞かれた杉田政務官は「
申し訳ありません。存じ上げませ
ん」と平然と答弁した。総務省の
キャンペーン対策を知らないと公
言する政務官。それは職務放棄と
同じだ。ネット中傷を繰り返した
議員がその取り締まり省庁のナン
バー3とはまるでパロディのよう
だ。「泥棒に戸締まりをさせてい
るのと似た行為」と言いたくなる
。中傷対策にストップをかけるの
では見られてもおかしくない。数
々露呈する「岸田政治の醜態」の
中でも特に悪性が高い。
【2022・11・6】