「愚者の追悼演説」賛辞する空気 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

与野党の議員が一斉に拍手を送り

続けた25日の衆院本会議のシーン

は、かえって嫌悪感ばかりを募ら

せた。立憲民主党の野田佳彦元首

相が亡くなった安倍晋三元首相を

追悼した演説は「名演説だった」

と高い評価をされている。しかし

、歯の浮くような言葉の一つ一つ

に突っ込みたくなった。それはけ

っして生来の天邪鬼のせいのため

ではない。それは、演説者が自ら

の愚行を未だに自覚できずに発し

た言葉だから、空疎に聞こえたの

ではなかったか.


ある禅相が語った言葉を思い出す。

「天下は悪にして亡びず愚にして

亡ぶ」

野田元首相は2012年11月の党

首討論で解散期日を明言した結果

、政権交代を許した。議員定数と

議員歳費の削減を条件にしたが、

安倍元首相はその約束を反故にし

てしまった。いわば、野田元首相

は愚かな判断をして、安倍元首相

にだまされのである。その後の長

期にわたる「安倍政治」がもたら

したのは、この国の政治腐敗と円

安に象徴される経済の衰退である

。取り返しのつかない失敗をした

という後悔もせず、総括ができな

いまま、のこのこと追悼演説の場

に出てしまったのである。演説に

は自らを飾り立てる語句も盛り込

ませた。


「再びこの議場で、あなたと言葉

と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火

花散るような真剣勝負を戦いたか

った。勝ち放しははないでしょう

。安倍さん」

野田元首相に「魂をぶつけるほど

の胆力があったのか」と笑いたく

なる。熟慮もせずに解散を判断、

一方的な独断政治への道を開いた

ではないか。もしかしたら衆院選

で勝てるとでも思ったのだろうか

。勝算もないまま選挙に突っ込ん

だとしたら、無責任極まりない。

議員辞職か引退に相当するぐらい

罪深い。首相在任時、自民右派の

主張に押されたまま、「尖閣国有

化」に踏み切った判断も日中関係

悪化をもたらした。そのまま、実

効支配していたら、緊張関係をも

たらすことはなかった。当初は何

も攻勢をかけられる状況がなかっ

たのに、習近平政権の介入を許す

きっかけをわざわざ作ってしまっ

たのである。

「安倍晋三とはいったい何者であ

ったのか。国に残したものは何だ

ったのか。私はあなたのことを問

い続けたい。あなたが放った強烈

な光もその先に伸びた影も……問

い続けたい」。新聞各紙は野田演

説のこの部分を記事の見出しに取

っていたが、「アベ政治」に何か

光はあったのか、何も思い浮かば

ない。負の遺産ばかりが目立つ。

「アベ政治」を評価する議員は外

交の成果をあげるが、内実はトラ

ンプ前米国大統領やプーチンロシ

ア大統領に媚びばかりをうり、目

に見える成果はあまりに乏しい。

「影」を言わざるをえないほど、

あまりに負の遺産は多い。

再び禅相の言葉になぞらえば、「

二人の愚行」が亡国の道を開いた

のではないか。追悼演説は予期し

ない翼賛的空気をもたらしている

。統一教会問題に対する野党の追

及は手ぬるい。更迭された山際大

志郎前経済再生相以上に教団の広

告塔になった細田博之衆院議長と

安倍元首相の悪性は高い。このま

ま二人の責任を問わないとしたら

、教団の被害者らへの背信行為だ。

そんな中、立憲の泉健太代表と岡

田克也幹事長は維新の馬場伸幸代

表らと初めて会食したという。改

憲などで自民の補完勢力になって

いる維新と共同歩調をとる気配が

強まる。立憲の支持が伸びないの

は、政権監視機能を強めていない

からだ。腰がふらふらして維新に

擦り寄っても、これまでの支持者

から見放されるだけだろう。

    【2022・10・27】