総事業費2000億円以上にのぼ
る道路整備が政権中枢におもねる
思惑から進んでいた。安倍晋三首
相や麻生太郎財務相の意向を「忖
度」したと発言した塚田一郎副国
土交通相が引責辞任し「事実と間
違った発言をした」と釈明したが
、どう誤ったのか、その理由は語
らない。国有地を不当に払い下げ
たり、獣医学部開設を特別扱いし
た「モリカケ」事件をこのブログ
ではずっと「疑獄」と表現してき
たが、今回露呈したこの下関北九
州道路整備予算化の深奥はもっと
巨額で罪深い。「国家の私物化」
の害毒が想像以上に進んでいたこ
とを改めて見せつけ、慄然とする
。
最も注目しなければならないのは
、この予算化決定が昨年末、吉田
博美自民党参院幹事長が国交副大
臣室を訪ね「総理と副総理の地元
事業なんだよ」と言われた後だっ
たことである。吉田幹事長も会っ
たことは認めている一方で、安倍
首相は当初「本人説明が重要」と
かばって辞任を否定した。その責
任は重大である。いったん利益誘
導の判断をした詳細な場面が分か
ってしまい、隠しきれなくなった
と見るのが事実ではないか。
不正を摘発すべき検察を人事で抑
え、「モリカケ疑獄」をかわしき
ったかに見えた安倍政権はやはり
その本性を隠せなくなった。森友
関連文書改ざんの財務省幹部への
「不起訴」判断も検察審査会で「
不起訴不当」とみなされ、再捜査
は必至だ。今後、民事でも国家賠
償訴訟に発展する可能性が高まっ
ている。そんな時期での今回の副
大臣辞任だったのである。
自民党の吉田幹事長が安倍首相や
麻生財務相のため塚田前国交相の
肩を押して予算化をした疑惑の構
図が判明し、野党やメディアが究
明しなければならない点は数多あ
る。陳情書のトップに名を連ねた
安倍首相自身の関与、もし事前に
説明を受けていたとするなら、そ
の時点でアウトである。まさに直
接政権崩壊につながりかねない大
スキャンダルなのだ。
「疑獄」の意味を改めて調べると
、「はっきりした証拠がつかめな
いので有罪か無罪が疑わしい事件
。金品の提供によって利権を獲得
する贈収賄事件が多い」(ブリタ
ニカ国際大百科事典)とある。構
想から30年以上も国の調査費が見
送られてきたこの「下関北九州道
路」がなぜ急に今年度、国の直轄
事業に引き上げられ調査費4千万
円がついたのか、予算査定の経緯
をさらにつまびらかにしなければ
ならない。吉田幹事長と塚田副大
臣室での面会には国交省の道路局
長が同席していたといい、関係者
の国会での証人喚問も必要だ。「
金品」にかわる人事権の行使と分
与も背景にありそうだ。国家予算か
らの「2000億円の収奪」は「モリカ
ケ」の比ではない位大きい。
政権による「国家の私物化」によ
る損害の被害者は国民一人一人で
あることを改めて思い起こしたい
。戦後初めて100兆円を超えた
この国の予算で突出しているのは
防衛予算の伸びで、半面、実質賃
金は下げ続け、国民の生活水準は
他の先進国に比べ、下落の一途で
ある。それを示す衝撃的な数字が
3日の毎日新聞夕刊で紹介された
。橋本健二早大教授を中心にした
研究グループによれば、日本には
平均個人年収186万円以下の「
アンダークラス」が928万人存
在、貧困化が進行し格差が深刻に
なっているという。アンダークラ
スの人の未婚率は34・1%と高い
。橋本教授は「とりわけ59歳以下
の男性と単身女性の貧困率が深刻
でした」と述べ、放置すれば社会
崩壊につながると指摘する。
政治家が目を向けなければならな
いのは、光が当たらず社会の底辺
で生活する人々である。たった2
キロの道路に2000億円もの巨
額の税金を投入する余裕はこの国
にないはずだ。また噴出した政権
のウミの根元をどう摘出するかが
問われている。
【2019・4・8】