「現在進行形の悪」なぜ止めぬ | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


「事件は現場で起きている」。愛
媛県今治市の加計学園新獣医学部
建設現場では今も工事の槌音が止
まらず、そんな使い古された刑事
ドラマのような台詞が浮かぶ。「
現在進行形の悪」を止められない
もどかしさが一段と募る。安倍政
権はまだ加計学園疑惑から逃げ切
れるとでも思っているのだろうか
。しかし、どんなに不正を糊塗し
ようとしても隠しきれないのが、
この疑獄の広がりと根深さである
。そう言い切れるのは、加計学園
と政権側の策謀があちこちで破た
んし、露呈し続けているからだ。
バイオハザード、補助金水増し、
官邸の隠ぺい工作……。それは枚
挙のいとまがないほどで、加計孝
太郎理事長は依然雲隠れし続けた
ままだ。世間に顔見せできないの
は、抱えきれないほど政界工作を
糾弾されるからである。



それにしても、盆明けに表出した
新獣医学部の設計図のインパクト
は強烈だった。事件記者はいつも
「ブツを追え」と先輩から叩き込
まれるが、この言葉通り、週刊朝
日、サンデー毎日、日刊ゲンダイ
などがいち早く入手し記事化した
この設計図は加計学園疑惑の全貌
を示していたと言っても過言でな
かった。



記事化までは、それぞれ紆余曲折
があった。設計図自体の真偽を疑
い、官邸に配慮したとしか思えな
いNHK上層部の指示もあって、
当初22日の「クローズアップ現代
」での放送を見送った番組スタッ
フは悔やみきれない思いではない
か。スクープ狙いで「ほかに流さ
ないで」と市民グループに迫りな
がら、番組断念の謝罪もしないま
まのディレクターはもうその職に
戻る資格もないはずだ。握りつぶ
した期間は3週間にもなるといい
、今も電話も拒否し続けている裏
切り行為に同情の余地はない。放
送を期待した多くの人をどれだけ
落胆させたことだろう。


それでも、週刊誌以外にTBS、
テレビ朝日はニュース番組で一報
を特集した。情けないことに、民
進党の玉木雄一郎議員らはいまだ
に偽物と疑い「慎重に扱う必要が
あると」と及び腰である。しかし
、初めて表に出てきた加計学園の
広報責任者のM氏は「もうワイン
セラーは関係者の指摘でやめてい
る」と図らずも、設計図が真正の
ものだったことを認めたのである
。追及姿勢に欠けた玉木議員の言
動にも落胆してしまう。この人物
は岡山県警の警察署長で、元暴力
団担当の責任者だった。こわもて
で知られているとされるが、あま
り知恵は回らないようだ。



というのは、この設計図で最も疑
念を強めた建設坪単価150万円
は一期工事では約120万円と釈
明したからだ。大学の医学部や獣
医学部の建築費に詳しい複数の建
築専門家らはせいぜい約80万円程
度と口をそろえている。整合性を
持たすには、二期工事の坪単価を
700万円というありえないも金
額で算出しなければならない。そ
の巨額に上る差に、どんどんつじ
つまが合わなくなっている。市民
グループは加計孝太郎理事長らが
少なくとも、50億円以上の補助金
を市から詐取するのが目的だった
とみる。来月20日ごろには補助金
詐欺事件として刑事告発する予定
だ。一昨日、衆院の会議室で開催
された市民集会で、疑惑を隠ぺい
し続ける政権への怒りで大いに盛
り上がった。



一方で、バイオハザードの危険性
が払しょくされていない。最も権
威がる北海道大学獣医学部の教授
らは、国家戦略特区として規制緩
和した大前提の最先端研究施設の
要件を備えていないと指摘する。
大事な「石破4条件のクリア」も
できていなかったことが明白にな
った。設計図にある研究棟にある
、レベル3とされたウィルス研究
室の遮断性は不十分で、専門家か
ら「このままでは必ずバイオハザ
ードが起きる」と断言するほどだ
。建設用地は今治市の中心地に近
い小高い丘の上に位置し、街中に
に危険なウィルスが拡散してしま
うことを、市民はようやく認識し
始めたようだ。


6日からいよいよ9月今治市議会
が始まり、加計学園への補助金支
出の是非が審議される。菅良二市
長と市議15人はそれぞれ3億円と
1千万円のワイロをもらったとい
う疑惑で市民グループから松山地
検に告発されている。どれだけ公
正な審議と捜査が尽くされるか注
視続けたい。


しかし、拱手傍観ではすまされな
い。特に野党は、森友学園疑惑で
スクラムを組んだ現地調査を早急
に実施する必要がある。建設中の
建物と市民グループが明らかにし
た設計図を詳細に照合するべきだ
ろう。材料や備品をチェックする
だけで、ネット上で不正を明らか
にし始めた加計学園側の内部関係
者による数々の告発もその真偽を
明らかにできる。来月末まで、政
権が臨時国会を開かないなら、現
地に議員団を多数送り込み、市民
グループと一体となった追及を展
開するべきである。総理と親しい
加計孝太郎氏は、もう血税をむさ
ぼり尽くす「平成の大盗人」の名
がふさわしくなってきた。


   【2017・8・31】