厩舎の初勝利!!! | 調教師日誌 ~仏・シャンティイーより~

調教師日誌 ~仏・シャンティイーより~

2008年渡仏。2017年調教師免許取得。フランス競馬の中心地シャンティイーでの厩舎日常風景。

早いものでもう一昨日の話になるのですが、4月13日シャンティイ競馬場5レース一般戦にて、清水厩舎所属シグロデオロ(牡3歳父クロドーヴィル)が優勝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厩舎にとっては開業から3戦目での嬉しい初勝利。この仔にとっても転厩以前も含めてデビューから7戦目での未勝利脱出。

 

 

そして何より椎名オーナーにとりましては、個人名義馬主として日本・フランス通じての初優勝。改めておめでとうございます。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
上から、左端に映っているこの仔の名前シグロデオロ、騎手アリソン・マサン、調教師清水、馬主椎名。
 
 
ちなみにこの騎手は女性の方。今回はフランスシステム特有の女性ジョッキー減量マイナス1,5kgを有効活用し、且つその女性騎手の中でもしっかり乗れるこのアリソンに騎乗依頼。
 
 
アリソンは減量のとれる通算70勝に到達していないので更にここから1,5kgの重量恩恵が貰えるので計3kg。彼女の実力を考えるとこの差はデカいです。最近メキメキ上手くなっているように思うので、減量とれるのも時間の問題かな、と思っています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
最終的には1番人気に3馬身半差の快勝劇となりました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
前々走、前走と、この仔に関しまして色々と課題が見えてきたのでちょこちょこと修正し、漸く結果を出すことが出来ました。
 
 
日々勉強の毎日ですが、この修正力は調教師に限らずどの職業においても大事なものなのかなと思います。
 
 
人間は失敗をして当たり前、完璧な人間など決して存在してません。その起こった失敗を元にいかに学習し繰り返さないか。シグロデオロ
は自分に身をもって学ばさせてくれました。勝たせてあげられて本当に良かったです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
競走馬の売買の盛んなフランスにおける競走馬&競馬というものは、1頭1頭各瞬間ごとに時価価値が相場よりも激しく変動するもの、当然勝てば上がるし負ければ下がる。値段に直結するレーティングしかり。
 
 
そこで調教師に求められるものとは、自分的には、いかに各馬の価値を高めてあげられるか。また株などと同じように買い時、売り時を見誤らないことも大事になってくると思います。
 
 
安く買って、高く売るのが常識的に考えての最善策。
 
 
大きいところを勝ち引退後種牡馬・繁殖牝馬になったりとすると、その馬たちや子孫の価値はレース賞金とは比較にならない程の値打ちが出てくる可能性もあったりします。そこがこちらの競馬のビジネス的魅力。
 
 
と言いましてもフランスの競馬レース賞金はヨーロッパでもぴか一で高く、日本の大井競馬場並み。これはあまり知られていないので是非ここで強調しておきます。
 
 
とりわけ牝馬の話ですが、日本では例えばフランスG3勝ちというだけでそれなりの価値が出てくるように思います。
 
 
現地在住毎日競馬浸けの自分からしたらそのレースのメンバー構成が額面通りのG3では無く、レベルの低い準オープン程度の5頭立ての3着と中央開催G1前哨戦G3での3着とは全く異なるものも直ぐに分かりはしますが、セリなどで遠国から来訪、実馬実績などを紙面上で見る(実際レース映像を見ることはほとんど無いと思います)限りは判別不可能。
 
 
空き巣狙いという言い方は悪いのですが、競走成績を上げ、少しでも価値を高められるところにレースを使いに行くのも調教師のセンスが問われます。
 
 
実際例として、現役時代に関わったボカイウヴァ(現在はパカパカファームに繋養)という牝馬の話ですが、3歳時シャンティイ競馬場で3歳牝馬限定リステッド勝ち&牝馬限定G3を2着。
 
 
馬体的血統的にも飛び抜けて良いものはないのですが、この実績のみでアメリカ繁殖馬セールで250000ドル、初仔(牡・スクリーンヒーロー)が去年のセレクトセールで3000万円。順調でしたらまだまだ若い牝馬ですし、沢山子供を産めるでしょうね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
シグロデオロ、実はレース後他厩舎に引き抜かれました。
 
 
この仔の購買金額は8400€。昨年2歳時10月時点で10000€でも買い手がつかなかったこの仔を、僅か半年弱で16900€で自厩舎を去ることになったこの仔の評価額を倍増させられ、最低限の仕事をすることが出来たかと思います。
 
 
正直言いますと、いつでも別れは辛いものです。長く一緒にいるにつれて愛着も増えていきます。
 
 
短い期間でしたがたくさんのことを学ばせてくれたシグロデオロには感謝してもしきれませんし、今後の活躍を祈っています。