第二次世界大戦中、プラハで、ナチスの大物だった総司令官、ラインハルト・ハイドリヒが暗殺された事件を基にした作品です。これまでにも同じ事件を題材にした「死刑執行人もまた死す」「ハイドリヒを撃て!『ナチの野獣』暗殺作戦」も観ています。

 

1942年、連合軍は起死回生を狙い、ヒトラーに継ぐナンバーツーの地位にあった、ハイドリヒ占領軍最高司令官の暗殺を計画し、解放軍兵士の中から勇気ある3人をプラハに送り込みます。3人はなんとかレジスタンスと合流し、暗殺の計画を練ります。ハイドリヒがベルリンに出掛けるとの情報を得て狙撃を実行しますがあと一息のところで失敗。次の機会がないことを知り焦った彼らは捨て身で暗殺を強行しますが...。

 

本作で描かれたハイドリヒ暗殺作戦は、正式には"エンスラポイド作戦(Operation Anthropoid)"と称され、第二次世界大戦中、大英帝国政府とチェコスロバキア駐英亡命政府により計画されました。ハイドリヒは、ナチスドイツのベーメン・メーレン保護領(チェコ)の統治者であり、ナチスの秘密警察を束ねる国家保安本部の長官であり、ユダヤ人や他の人種の虐殺に対する「ユダヤ人問題の最終的解決」を行うナチスの主要計画遂行者でした。

 

そして、ハイドリヒ暗殺に対するナチスの復讐の凄まじさ。

 

ハイドリヒ暗殺が成功したことで、ナチスの動きは勢いを弱めたのか、第二次世界大戦全体の戦況に対して、この作戦がどのような影響を与えたのか、その辺りにはあまり触れられておらず、その点で物足りなさはありましたが、それでも、いきなり敵地に放り込まれた3人が、危機を乗り越えながら、時には悩み迷いながら、作戦の成功に向けて努力を重ねた経緯が描かれ、ハラハラドキドキとともに、切なさや哀しさも伝わってきて、心に沁みる作品となっています。

 

ナチスの悪行はもちろん、放置されるべきものではありませんでしたが、しかし、連合軍側もなかなかです。勇気ある兵士で将来のある若者たちを成功率が高いとは思えない作戦のために、ほとんど丸腰で敵地に送り込みのですから。結局、下々の兵士というのは"駒"でしかないのでしょう。戦争に命を賭けることになるのは、大きな権力によって人生を翻弄されるのは、庶民ということになるのでしょう。

 

単に、決死の作戦が成功して万歳ということでなく、そのために払われた犠牲や、その後の展開についても描かれることで、戦争そのものの残酷さが炙り出されています。私たちは、これが実話だということを胸に刻んでおく必要があるのだと思います。