死刑執行人もまた死す[完全版] [DVD]/ブライアン・ドンレヴィ
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1942年6月にプラハで起きたラインハルト・ハイドリッヒ暗殺事件をもとに作られた作品ですが、製作当時は、まだ事件の真相は明らかにされておらず、本作のストーリーは、フィクションとして作られたものです。


第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されていたチェコ、プラハでナチスの地区司令官が暗殺されます。犯人であるレジスタンスの医師、フランツは、事件後に偶然出会い、彼を庇ってくれたマーシャが住むアパートに身を隠しますが、ナチスは、その報復として、一般の市民を無差別に人質として連行し...。


徹底的に、ナチス=悪、チェコ=善となっており、チェコ側が相当な覚悟のもと一枚岩になって祖国のために闘う姿が描かれます。監督がナチスドイツを嫌ってアメリカに亡命したフリッツ・ラングで、脚本がやはりナチスから逃げて亡命していた劇作家のブレヒトということもあり、その辺りの描写は徹底していますが、少々、チェコ=善の部分が強すぎた感じがしなくもありませんでした。作中でチェコ人の裏切りも描かれますが、基調は、チェコ人=ナチスに屈せず命を賭けて闘う愛国者。国として苦難の歴史を重ねてきたチェコなので、もちろん、そうした資質は他国の国民に比べて強い面はあるのでしょうけれど、実際は、それなりに裏切り者もいたわけで...。


もっとも、特に、亡命し、遠くから故国を見守るしかない者としては、故国の仲間への期待と応援の気持ちが募るのも当然なのでしょうけれど...。そんな製作者側のチェコへの熱い想いが感じられる作品です。


政治的、社会的背景の強い作品ではありますが、サスペンスタッチのハラハラドキドキの展開には惹き付けられましたし、そうした中で現れてくる人間模様も丁寧に描きこまれています。重くなりがちなテーマを扱いながらも、コミカルな描写も挟み込まれ、しっかりとエンターテイメントとして楽しめる作品に仕上がっているところは見事。


エンド・クレジットにも、製作者の強烈な想いが籠もっていて印象的です。


一見の価値アリです。



実際のラインハルト・ハイドリッヒ暗殺事件の概要は...。


イギリスから送りこまれた愛国チェコ人ゲリラ兵がハインドリッヒを暗殺(「エンスラポイド作戦」)。その後、裏切りから情報が漏れ、実行犯たちは匿われていた教会で最後の抵抗を試みたものの全員が死亡。ヒトラーは、さらに、その事件に対する報復に出ます。「その村の出身にイギリスに行って軍隊に入った者がいる」程度の噂を根拠として、リディツェとレジャーキという無抵抗の村を襲撃し、男性はその場で全員射殺、女性と子どもは強制収容所送りとします。強制収容所に入れられた村人のほとんどは帰ってこなかったとのこと。



死刑執行人もまた死す〈完全版〉@ぴあ映画生活