スライド・ギターの名手であるライ・クーダーが、キューバで忘れられていたミュージシャンたちを集めてプロデュースした同名のアルバム"ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ"が大ヒットします。それにより、キューバ国外にほとんど知られていなかったミュージシャンにスポットライトが当てられます。キューバのミュージシャンたちの来歴、演奏、収録シーン、キューバの情景を織り交ぜたドキュメンタリー作品です。ライ・クーダーの友人でもあるヴィム・ヴェンダースが監督しています。

 

日本での公開は2000年で、映画公開当時、劇場で観ていますが、最近、本作のその後を描いた「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」を観て、改めて、本作を観てみました。

 

キューバの音楽について特に知識があるワケでもなく観たのですが、そんなこと問題なく、楽しめます。勿論、本作に登場するミュージシャンがたちが背負ってきたもの、彼らを生み出した文化や風習といったものを知っていた方が、より深く味わえるのは確かなのでしょうけれど、そんな知識とは関係なく楽しめるのが音楽の力というものなのでしょう。そして、本作では、恐らく、本作を観る者の多くが初心者であることを想定してということになるのかもしれませんが、彼らの音楽が生み出したキューバの空気感を巧く映し出しています。その辺り、初心者に対しても親切な構成になっています。

 

年齢を重ねても衰えない、というより、積み重ねた経験が魅力として音楽に更なる艶を加えているように思われます。

 

そして、音楽を奏でるということの幸福感、高揚感がミュージシャンたちの表情から伝わってきます。その演奏することの楽しさが本作の最大の魅力かもしれません。

 

人生は苦く、哀しく、厳しいものでもあるけれど、そんな中にも、いえ、そんな中だからこそ、ちょっとした光が喜ばしく感動的だったりもします。ミュージシャンたちの山あり谷ありのこれまでを想像させられながらも、歓びや希望が感じられる作品です。

 

必見の一本だと思います。