1999年に全米で公開され、日本でも2000年に公開されて大ヒット。世界的なヒット作となり社会現象にもなったドキュメンタリー映画、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」から18年。グループによるステージでの活動に終止符を打つと決めた現メンバーによる"アディオス(さよなら)世界ツアー"の様子を記録したヴィム・ヴェンダース製作総指揮の音楽ドキュメンタリー。

 

ヴェンダースと親交のあったギタリスト、ライ・クーダーが、1997年にキューバの老ミュージシャンたちと製作し、世界的ヒットとなったアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を題材にした前作も公開当時に映画館で観ています。

 

18年前の前作で既に高齢だったミュージシャンたちですから、仕方ないのかもしれませんが、前作の後に亡くなったメンバーも少なくありません。

 

日の当たらないところにいて、音楽活動をすることすらままならなかった彼らの存在に光が当てられ、彼らの音楽が世界的に認知されるようになった過程を追った前作とは違い、亡くなったメンバーのことが描かれたり、活動を終える過程を追っていることもあり、前作に比べてしんみりした雰囲気にはなっています。

 

それでも、音楽とともに生きた人々の存在が音声として、映像としてここに遺されていること。その姿を目にし、音楽を耳にできることの幸せがしっかりと感じられますし、その生活の全て、人生の全てから生まれてくるような音楽に心を掴まれ、魂を揺さぶられます。

 

本作の中でも語られているように、キューバの歴史にも、その中にあった彼らの人生や日常についても疎い私たちが、彼らの音楽をどこまでりかいできるのかということについては限界はあるのだと思います。けれど、彼らの音楽には、そんなこととは別のところにある普遍性が確かにあり、予備知識なしで十分に感動できます。それが、音楽の素晴らしさでもあるのでしょう。

 

そして、少なからぬメンバーが亡くなってしまったのは残念ですが、それでも、人生を音楽家として全うできたことは幸せだったはず。好きだとか、仕事だとかいう以上に、音楽は、彼らの人生そのものだったのだと実感させられます。全てをかけて取り組めることに出会えた人生の幸福が伝わってきます。

 

奴隷制度という大きな負の歴史の中からでさえ、こうして素晴らしい音楽が生まれる。そこにも、人間の可能性が感じられます。

 

色々な意味で、音楽の力を感じさせられる映画です。一度は観ておきたい作品だと思います。お勧め。