金冬心の字 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  金冬心の字

 

 金農(1687-1763)、号は冬心先生。冬心に関しては、この前の記事で解説しています。

 冬心は書家で、濃墨枯筆間に飛白を入れた独特の隷書「漆書」を創出したといわれます。

 今まで存在していない字体を作り出したのです。

 それは大変な仕事です。後から考えると何でもないように見えますが、それは新しい世界を一人で生み出すということであり、新しい美の基準を創り上げるわけですから、そのあとの時代を変えていく力を持つのです。

 

 このように今まで存在していなかったものを、自力で生み出していくという点に、今の私は大きな関心を持っています。自分がそれを行っている最中だからです。私は今、フランスの印象派の画家たちについての小説を書いているのですが、ルノワールやモネたちは、それぞれ苦労しながら、新しい時代を切り拓く美の世界を造りあげていきました。

 

 金冬心は固定することはなく、その字はどんどん変遷していったようです。

 

 しかし、下の例を見ても、実に現代的で、愉しい字ですね。現代作家が生み出したデザイン的字体だと言っても、通用すると思います。

 従来の考えの枠にとらわれない人であったことがわかります。

 

 流行に押し流されず、心に自由を有している人を、私は尊敬します。

 

   

   

 

皆様のご健康をお祈りいたします。

 そして皆様に、すばらしい幸運や喜びがやってきますように。

   いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。